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3 転生後の世界は悪意に満ちていた

 転生してしまった。もちろん、ここは前の世界ではない。


 最初はまだ信じられなかったけど、この世界の私の部屋には、古風な家具がいっぱい。まるで観光地に来たかと思ったけど、細かいところはもっとリアルに違っている。


 転生前の最後の記憶は、多分突然倒れて、心臓が締め付けられた感じだった。疲れすぎたのかもしれない。あの子供はどうなったのか、結局見なかった。


 そして、目を覚ました。


「はい、パパだっこ〜」


 無精ひげの男が突然私を抱き上げた。そのチクチクするヒゲに眉をしかめたけど、その目は意外と優しかった。これが…新しい人生の「父親」?


「ほら、いいもの持ってきたよ!」


 顔を下に向けると、思わず苦笑い。大人用の飴じゃない!琥珀色で、もち米の紙に包まれた硬い飴だった。


 私は魂は成熟した大人だけど、身体は生まれたばかりの赤ちゃんだよ?本当にこれで大丈夫?


「お前、まだこんなに小さいのに、こんなものを…」


 遠くから寝ているような女性の声が聞こえた。多分「母親」だ。優しい口調だった。


 そうして両親の雑談から、少しずつ情報が繋がってきた。


 父は探偵、親切で「いい人」?浮気されても救ってくれる人?思わずクスっと笑った。


 母は主に家にいて家事をしているらしい。ただ、彼女が呪文を唱えた時、変な現象も起きていた。


 つまり、この世界はただの古代風じゃなくて、魔法システムも存在するらしい。


 以前、転生知識を少し勉強したことがあった。もしかして私は天才魔法少女?二歳で覚醒、四歳で風に乗り、八歳で大蛇を斬る。須佐能乎?多分私の方が上かも!考えるだけでワクワク。


 はあ、また妄想してしまった。


 そんな日々を夢見ながら過ごし、この世界の様子を徐々に理解していった。


 三年後。


 私は流暢に話せるようになり、この世界の他の言語も勉強した。母のおかげだ。彼女は何カ国語も話せる。ちなみにここの言語は前世の言語に似ている。


 平凡な日常。朝食を食べて、家の中を探検。


 いつもの書斎へ。狭くはないが整然としている。梁には奇妙なシャンデリア、隅には巻物、本、道具、機械部品、木彫り、変わった陶器が積まれている。


 本棚から「魔法入門」と書かれた古い本を取り出した。


 ぼんやりと理解した。


 この春秋時代は、私が知っていた歴史の春秋ではなく、「古代魔法中国」とも言える平行世界、もしくは西洋幻想も混ざった世界だ。


 ここでは剣と術が共存し、様々な流派の弟子たちが魔法を学び、諸侯は争い、西洋の黒魔術の残党が影に潜んでいる。


 父こと老王は、公式に属さない「自由探偵」である。表向きはゴシップ事件専門だが、実は黒魔術の残党を追っている。


 少女はさらに家の蔵書を読み、魔法と歴史を学んだ。


 その古い魔法書にはこうあった。


「この世界の力は、天空の外から与えられたものであり、古代大地に残った魔素に由来する。

 魂を持つ者は、この魔素を操り、不思議な現象を引き起こす。

 極西の地には魔王が存在し、歴代の勇者は数代の魔王を討ち滅ぼしてきた。」


 やはりこの世界にも魔王はいるようだ。しかし魔王が弱すぎる気がする。魔王も勇者も大量生産されている陰謀かもしれない!


 そういえばNHKのあのアニメを思い出した。全ては陰謀、陰謀が我々を覆っているのだ。


 昼頃、玄関の鈴が鳴った。


 父が帰ってきた。


 私は鈴の音を聞くと慌てて書斎を片付け、庭に出て父を迎えた。


「パパ!」


「おお、我が可愛い娘よ!」老王は私を抱き上げて家に入った。


 老王は食卓で妻と雑談している。


「最近忙しいか?」


「まあまあよ。最近の事件は手強い。容疑者は全く痕跡を残さず、手掛かりが途絶えたわ。」


「また動物の仕業じゃないか?」


「あり得るな。前回も動物の犯行だった。物を盗まれて苦労したぞ、あの小悪党め!」


「璃音、もっと食べて大きくなれよ。」老王は私にたくさん料理をよそってくれた。山盛りだった。


 王璃音、私の名前は文語的で早口だと噛みやすい。王琳でもいいかな…まぁいいや。


 食事を終え、父が皿を洗いに行くのを見て、自分の部屋へ戻った。


 部屋に入ると、時計がジジジと鳴っている。父曰く、外国製の珍しい品で、爆弾と間違えそうな丸い形。国内の達人が原理を真似しているらしい。


 母の言葉を思い出した。魔法ならそう簡単に叶うはずだ。


「魔法は万能だ!」


 そう言いたかったが、まだ自信はなかった。


 いつか私もそんな魔法を使えたらな…あとで母に聞いてみよう。


 床に倒れて、地元の子供向け物語を読んで時間を潰した。ゆったりと時間が過ぎる。


「璃音、事件に出かけるから、おとなしく家で“爆弾”を壊さないでね!」


「わかった、パパ!気をつけて!」


「“動く時計”をバラしただけだ!それが実は盗聴器だったなんて!!くそパパ!心配しすぎだろ!」


 むっとしてリビングのフワフワ絨毯に座り、私の“ソフトキャンディ”を撫でた。


 正確には、母に教わった魔法で呼び出したペット。地獄の生き物だと聞いたけど、イメージとは違ってぷにぷにしたゼリーみたい。甘えて「んふ〜」と鳴き、時々噛んでくる。私の使い魔なのに、私にすり寄ってくる。


 ずるい、かわいい。よだれが出そう、これが幸せ?


 有名な「いい人探偵」の娘に生まれ、なぜか魔力もあるけど、結局“爆弾を壊す時計”を知らずに分解しちゃうバカ少女。


 私はまだ子供だし。


「パパ〜探偵の技術教えてくれるって言ったのに、いつも置いていくのはどうして?大きくなってほしくないの?」


 窓辺に寄りかかり、父が外に出て路地に歩いていくのを見送った。出る前にテーブルにカードを置いていった。


「璃音の探偵入門・第一課:物の見た目を見極める

 ――愛するパパより」


 こんなヒント、小学生の作文の書き出しにも及ばない…と呟き、カードを握りしめた。後ろの“ソフトキャンディ”は「ぐー」と鳴き、床を擦って空腹をアピール。


「おいおい、見た目倒れだな、戻れよ」


 呪文を唱えると、“ソフトキャンディ”は消えた。


 突然思いついて、唱えずに魔法を試したが失敗。


 呪文を唱えないとダメ?声が魔素を呼ぶスイッチ?


 失望して庭に出てうろついていると、背中の符文が光り、“ソフトキャンディ”が現れた。しかし、姿が変で、ケーキサイズから膨らみ、私と同じくらいの少女の姿に!


 目をこすり、信じられなかった。かわいいペットが女の子になった!?


 私の“ソフトキャンディ”。


 天の霊よ、忘れない!QAQ!





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