2 生まれてきたら、親父が探偵だった件!!!
ぼんやりとした意識の中で目を開ける――ここは……プールの中か?
神は言った、「光あれ」と。
すると光があった。
こうして赤子はこの世に生まれ落ち、光を見つめ、最初の産声が空気を切り裂いた。
この日はまことに喜ばしい日であった。近所の人々から「いい人」「優秀な市民」と呼ばれる――隣の老王さんに、娘が誕生したのだ。
老王の職業については、その名前からも察しがつくだろう。そう、隣家にまつわるあれこれを扱う仕事――つまり探偵である。
「やあ、老王! 今日は随分と上機嫌で、歩く姿まで軽やかじゃないか。いつものように深刻そうな顔もせず、慎重すぎる様子もないな?」
声をかけてきたのは、自称「小市民」の劉両手、小さな食堂を営む中年の男だ。老王は彼の常連客であり、彼もまた老王の依頼人である。
「そうさ、娘が今日生まれたんだ。どんな大事だって後回しにするさ! 俺に調査を頼みたい? 今日は絶対に受け付けないぞ。おとなしく家に帰って過ごせ!」
老王は顔いっぱいに喜色を浮かべ、軽口を叩きながら劉両手の尻を軽く叩いた。
「わかったわかった、大喜びだな! じゃあ俺は外をぶらついて、景気を見て、ついでに仕入れでもしてくるよ。後でお祝いを持って伺うからな。」
劉両手は笑って応じた。
「お前は暇すぎてうろついてるだけだろ! さっさと帰れ、じゃないとまた俺に頼み事をする羽目になるぞ!」
老王はからかいながら、足早に次の場所へ向かった――きっと新生児に必要な品を買いに行くつもりなのだろう。
「王おじさん! 俺の猫、見つかった?」
数歩歩いたところで、道端で遊んでいた子どもたちが老王を見つけ、一斉に駆け寄ってきた。
どうやらこの「隣の老王」、隣家の揉め事だけでなく、東の家の猫や西の家の犬が逃げた時も探し出し、街のちょっとした騒ぎ事も仕事の一部にしてしまうらしい。探偵が日々生活のために奔走するのは、よくあることだ。
「心配するな坊主! 明日の朝には、お前ん家の“ご主人様”を無事に届けてやる! 手がかりは握ってる、逃げられるもんか!」
老王は自信満々に答えた。
「本当? 黄お姉ちゃんから聞いたけど、この前頼まれた件、結局できなかったらしいじゃん!」
先頭の子どもがちゃっかり暴露する。
「おいおい! そういうことは言わなくていいんだ!」
老王は顔を赤らめ、その未解決の過去を思い出しながら、慌てて話題を変える。
「大人の話に首を突っ込むな! さあ遊びに行け!」
子どもの群れの後ろで、太っちょの少年が笑いをこらえつつ隣の痩せた少年を肘でつつき、揶揄うように歌い出した。
「探偵ワンさん腕はすごい
手掛かり追ってドタバタ走り
犯人三人五人逃げちゃって
靴底すり減り何足目?
事件解決の秘訣だと?
ただの当てずっぽうおしゃべりさ
真犯人は家でヒマワリの種ぽりぽり
ワンさんは路地で野良猫数え
証拠品ゲットしてポロリと落とし
証言ぜんぶ頭からスッポリ消え
「何件解決したんですか?」
近所の子供は首振って「ドンドンドン〜」
「ははははは……!」
歌い終わった途端、子どもたちは大笑いし始めた。
老王は気にした様子もなく、人混みを抜けていった。
街の中心に着くと、噴水のある白い建物がそびえ立ち、周囲には数本の高い柱と、いくつかの動物の像が鎮座していた。老王は流れ落ちる水を見上げた。
噴水の縁に腰を下ろし、行き交う人々や馬車、雑踏の音を耳で一つ一つ聞き分ける。
「また悪い癖が出ちまったな……この習慣、直さなきゃな。」
老王は立ち上がり、商店街をぶらりと見て回った後、家へ戻った。
その頃、家の中では――
小さな赤子が揺りかごの中でおとなしく横たわっていた。その背後に、ふわりと光が差し、かすかにルーンのような模様が浮かび上がる。
「……俺、転生した?」
生後数か月、ぼんやりとした記憶から始まり、次第に鮮明になる前世の記憶が、この赤子の小さな頭の中にあふれ出す。
「今度こそ、いい場所に生まれ変われますように……」