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1 転生するまで、私は誰にも出会えない呪いをかけられていた!!!

 暮春の北の都市。


 その日、太陽はすでに西へ沈みかけていたが、不思議とまだ暑さが残っていた。地面には熱がこもり、空気は蒸し返している。


 商店街近くの車道に、小さな子供が一人、迷いながら歩いていた。手にはもうすぐ落ちそうな飴玉を握りしめている。どうやら向かいのスーパー、キャンディ専門のチェーン店を見つけたようだ。


 そんな時、黒の夏用スーツに身を包み、黒縁の眼鏡をかけた女性が交差点でその子を見つけた。高いヒールの足音が地面に響き、彼女はゆっくりと子供の方へ歩み寄る。


 ――ああ、ここで説明しておかなければならない。五月のこの夕暮れ、街では奇妙な出来事が起きていたのだ。


 彼女の隣にある会社は無人で、周囲の清掃員も見当たらない。太陽は街を焼くように照らし、他の場所では人々が暑さで息も絶え絶えだが、なぜかこの木陰の道には一人もいない。ベンチに座る人もおらず、まるで時間が止まったかのように静まり返っている。


 この不気味な静けさこそが、むしろ人々の心を落ち着かせ、自然と涼しさを感じさせていたのかもしれない。


 そしてその隣の交差点――子供が目指すその場所は、市内で事故発生率が最も高い場所として知られていた。女性は数分前、子供を見かける前にその木陰の道を通り過ぎていた。


 ――さて、今に戻ろう。迷子の子供と、ちょうど仕事帰りの女性がこれからどんな運命を辿るのか。


「小さなお友達、君のお父さんやお母さんはどこにいるの?」


 女性はゆっくりと膝を曲げて子供に声をかけた。


「……お母さん……お母さん……」


 その言葉は泣き声にかき消され、女性は心配そうに周囲の車を見渡す。自分には何の自信もなかった。見つけられないかもしれない。やはり警察に連れて行くのが最善だろう。


 彼女はあちこち歩き回りながら、通行人や警備員に声をかけ続けた。


 やがて子供は泣くのをやめ、女性のスカートの裾をぎゅっと握りしめて、向かいのキャンディ店を指差した。

「…あめ…」


「飴が欲しいの? わかったわ。お姉さんが連れて行ってあげるね」


 女性は子供の手を取り、交差点で信号を待った。


 信号が青に変わったその瞬間、第二の奇妙な出来事が起きた。ただし、それは女性だけに関わることだった。


 遠くで突然エンジンの轟音が響き、彼女は無意識に体が緊張した。心臓がドクンと一度跳ね、その音はすぐに消えた。


 しばらくして、心臓は戻ったように思えたが、まるで銀の針で刺されたかのような違和感が残った。さらに説明できない動悸も襲い、これは古い病気なのか、PTSDなのか、それとも不安障害やうつ病なのか……わからない。


 彼女の頭の中には様々な疑問が渦巻き、言いようのない恐怖に駆られた。今すぐにでもこの横断歩道を離れたくて仕方がなかった。


 急ぎ足で子供を連れ、ちらりと振り返るが、そこには前に進む人々以外、何もなかった。


「どうしてこんなことに……。こんな感覚は初めてだ。死の幻想ですら、こうじゃない……。ちゃんと休まないと……まだ行ったことのない癒しの施設に行って、思い切りリフレッシュしよう。さあ、大きく息を吸って、ははは……」


 彼女が横断歩道を離れた瞬間――


 子供は女性に押されて地面に倒れ込み、女性もそのまま倒れた。まだ少し温もりの残る体は、彼女にとって一縷の慰めであり、人間らしさの象徴だった。


「心臓が遠心力に絡め取られるみたい。息を止めて、もう何秒も呼吸していない。わからない。」


 激しく鼓動する心臓。


「私は死への道を歩んでいるのかもしれない。そうならいい、一度で終わりにできる。」


 彼女は最後の力を振り絞り、地面に落ちた飴を見つめた。街灯が灯り、その輝きを映し出す。


 女性の最後の心の声。


「責任から逃げているの?彼の母親は見つけた?」


「いいえ……違うの。でも、私はもうすぐ死ぬ。」


「心臓が……私の心臓が去っていく……。」


 彼女は心臓突然死で命を落とした。


 その瞬間、驚いた通行人たちは蒸し暑い空気が濃縮していくのを感じ、奇妙にも女性の上に透明な男の姿が浮かび上がった。


 姿は異様で、頭は小さく、大きなツバのカウボーイハットをかぶっている。ウールのチェックシャツは小さすぎて、まるで空気のように軽く、身長は2メートル近く。細い肩と竹のような足で、不気味なまでに痩せている。


 彼の表情は周囲の人々をからかうかのようで、ただの野次馬のようだった。


 透明な男は普通の人には見えないが、中にはそれを目撃した者もいる。


「これって人類の奇跡の何番目?妖怪かなんか?」


「そんなはずない。」


「一体何なんだよ……。」


 暑さと疲労で倒れそうになった人もいた。幻覚かと思ったのだ。


 次の瞬間、幻影は消え、女性の姿も消えた。時間の流れは元に戻り、まるで何も起きなかったかのように。


 キャンディ店では、一人の心配そうな女性が仕事を終え、周囲を見渡して自分の息子を見つけると、厳しく叱りつけて交差点へ歩いて行った。



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