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【本編完結】食に固執する腹黒令嬢は、愛されても気付かない  作者: いか人参
本編

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結婚パーティー


「ハンナ、これ招待状なんだけど、師匠に送ってもらえる?」


「こちらは…アルトナー家の…まぁ!クリスタ様のご婚約パーティーですね!」


アルトナー公爵家の夜会まで1ヶ月を切り、セレナの分もフランツから招待状を受け取っていた。


ハンナは、婚約パーティーがあれば外堀を埋めたも同然と、招待状を大事そうに抱えながら、自分のことのように喜んでいる。



「これは、結婚パーティーだよ。」


そんな彼女を不思議そうな目で見ながら、クリスタはしれっと答えた。



「は……い…?クリスタ様、ご、ごけっ、ご結婚をなさっていたのですか!?誠におめでとうございます!」


「…言ってなかったっけ?この前フランツと領地に行った日にね。急過ぎてビックリするよね…ははっ」


話しているうちに、あ…そういえば、結婚したことを言ってなかったわ…と思い出したクリスタは、誤魔化すように変な笑い方をした。






夜会当日、クリスタは、真っ青な美しいドレスに身を包んでいた。大きく開いた胸元は黒のレースで縁取られ、大人っぽい印象を与える。


会場となる公爵邸で身支度を終えたクリスタの元に、フランツが迎えに来た。



「本当によく似合っている。息を呑む美しさだ。クリスタ、俺が贈ったドレスを着てくれてありがとう。」


フランツは、自分色に染まるクリスタの姿を見て、目を滲ませていた。

嬉しさのあまり、泣きそうな顔になっている。



「こんなドレスじゃ、沢山食べられない…はぁ…普通のワンピースで良かったのに…このコルセットさえ無ければ…」


対するクリスタの言葉はそっけなく、相変わらず頭の中には食べ物のことしかなかった。今にも泣き出しそうな顔をしている。



「ふふ、相変わらず俺の奥さんは食いしん坊だな。可愛い人。ちゃんとクリスタの分は別で用意するから。パーティー後に一緒に作り立てを食べよう。」


「ほんと!!?宮廷料理人の料理も作ってもらえるの?」


フランツの言葉を聞いた途端、クリスタの瞳に光が戻った。

彼に一歩近寄り、爛々と光り輝く瞳で、期待の眼差しを向けた。

ヒールを履いているクリスタは普段より身長が高く、フランツのすぐ近くにクリスタの顔が迫る。


フランツは、思わずクリスタの唇にキスをしそうになるのをグッと堪え、代わりに彼女の手を握った。



「ああ、もちろん。ちゃんとお願いしてあるよ。」


「なにそれ最高じゃん!!さすがフランツ!私のことを大変よく分かっている!」


「ふふふ、お褒めに預かり光栄です。さぁそろそろ行こうか。」


「うん、早く行って早く終わらせて早くご馳走にありつこう。」


「そうだな。俺も早くクリスタと二人きりになりたい。」


相変わらず合っているようでズレている二人だが、しっかりと手を繋いで、会場となるホールへと向かった。





クリスタ達が会場に姿を現すと、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。

会場にはクリスタの予想を遥かに超える人数の人が集まっていた。



「…すごい人ね。」


クリスタは、隣にいるフランツの耳に口元を寄せて声を掛けた。

拍手と歓声に飲まれ、声が届かないだろうと思ったからだ。


一方フランツは、いきなりのクリスタの接近に心臓が飛び出しそうなほど驚いていた。若干耳が赤い。



「…あ、あぁ。みんな俺たちの事を祝福してくれてるんだ。幸せ者だな。」


「こんなに沢山…なんか申し訳ない気持ちになる…」


クリスタが会場を見渡すと、拍手を送ってくれるデリア達や、なんだかんだ言って嬉しそうな顔をしているエメリヒ、感極まって涙を目に浮かべるセレナの姿が目に入った。

その他にも、顔見知りの同級生達が笑顔を向けてくれていた。



「みんな、クリスタの幸せを願っているんだ。だから君は、自分の幸せに実直に生きれば良い。俺もクリスタのことを幸せにしたい。だから、美味しいものを食べて喜ぶ姿を一番に俺に見せて。」


「そんなことでいいの…?フランツに何も得がないよ。」


「俺は、クリスタが笑顔でいてくれたら、幸せなの。クリスタのこと以外で幸せを感じることはない。それだけは覚えておいて。」


フランツはクリスタのことを力一杯抱きしめた。熱烈な抱擁に、会場から一際大きな歓声が上がった。



「俺を選んでくれてありがとう。クリスタ、一生大切にする。」


フランツはクリスタの肩に顔を埋め、彼女にだけ聞こえるように、ありったけの自分の想いを声に乗せた。



「やっぱりフランツはおかしいわ。」


「おかしくても何でも俺は構わない。どんな形でも、クリスタの側にいられるのなら、俺は幸せだよ。」


フランツは抱擁を解き、正面からクリスタの顔を見つめると、溶けてしまいそうなほど甘い笑顔を向けた。



「と、とにかく…今はパーティー終わりのご馳走のために頑張る。」


「あぁ、そうだな。」


少しだけ照れてるクリスタを愛おしそうな目で見つめて、フランツは彼女の手を取り、拍手に包まれる中、会場内を進んで行った。


今、二人の結婚パーティーが幕を開けた。





これにて完結となります!

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。

今回は短めで軽いものをと思い書いていたら、想像よりも軽くなりました笑


次は糖度高めのものを書きたいなと思っておりますので、また読んでもらえたら嬉しいです。

ありがとうございました!



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