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【本編完結】食に固執する腹黒令嬢は、愛されても気付かない  作者: いか人参
本編

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29/58

やっちまった


「見て!これ炭塩って言うんだって。真っ黒いけど塩なんだよ。お肉にかけて食べるとすごく美味しいの!こっちはね、パンダンっていう異国の茶葉が練り込まれた焼き菓子。とても綺麗な緑色でしょ?これは、蒸し焼きで作ったパンなんだって。ふわふわでとっても良い香りがするの!あとはね…」


クリスタは、今日の戦利品をテーブルの上にずらりと並べ、嬉しそうに一つずつ説明をしていた。彼女の楽しそうな笑顔に、ハンナも穏やかな笑みを浮かべている。

その隣で、貼り付けたような笑顔をしている人物がいた。



「とても楽しまれたようで何よりでございますわ。それで、肝心の惚れさせる作戦はいかがなさいまして?」


セレナの穏やかだけれどどこか圧のある声が応接室に響いた。



「い…」


セレナの存在を完全に失念していたクリスタ。




やっば…完全に忘れていた…というか、あんなに美味しいものを目の前にして、他のこと考えるとか絶対に無理でしょう!!そんなことしたら飯が不味くなるわ。


食べることに忙しくて、そんな暇なかったしな、、え…これもう仕方なくない??フランツってそもそも女性に興味無さそうだし、元々無理だったと思うんだよね。


うんうん、美味しいものを食べるって目標は割と達成出来てるし、もう一生分の贅沢をしている気するし、あとはもう食べ物に困らないくらいで平々凡々と生きていければ、良い、かな…。あと半年くらいは今の生活を続けられるわけだし、今のうちに食べ溜めすることにしよう!




簡単に楽な方向に流されようとするクリスタの思考に気付いたセレナは、お説教モードに切り替わった。



「クリスタ様、一度婚約解消した令嬢はどうなると思いますか?」


「他の相手を探す…?」


突然の質問に、意味がわからないクリスタは、とりあえず頭に思い浮かんだ答えを口にした。



「ええ、そうですわね。貴族令嬢が働くことなんてしませんものね。しかし、キズモノの令嬢を欲しがる優良物件なんておりませんわ。恐らく、クリスタ様のお父様がお相手をお探しになることでしょう。顔も年齢も性格も気にせず、ただただ家の利益となるようなお相手を。女性をモノとしか見ていない性根腐った貴族も多いと聞きますわ。そんなことろに嫁いだら最後、死なない程度に食べ物を与えられ、鳥籠の中でオモチャのように扱われて一生が終わりますでしょう。」


「ぐえ…」


あまりにも悲惨なセレナの未来予想に、クリスタは呻き声をあげ、気持ち悪さに顔を歪めている。



「ですから、今のお方をきちんと繋ぎ止めておきませんと。クリスタ様の一生がかかってますのよ?」


「わたくしの考えが浅はかでございました…師匠の仰る通り、フランツの正式な婚約者になるべく、誠心誠意尽くす所存でございますわ!」


「ええ、その意気ですわ!」


セレナの言葉にしっかりと焚き付けられたクリスタは、やる気に燃えた。今度こそ、絶対にモノにしてやる、と決意を新たにしたのだった。







だから、どうやって口説けばいいんだ…また肝心なことを師匠に聞くのを忘れた…




翌日、早速行動に移すためにまずは作戦を立てようと、今日は早めに登校し、一人になれる中庭のベンチに腰掛けていた。


目の前に流れる小川を見て集中力を高め、起死回生の一手を考えようと気合いを入れてここにやって来たのだが、全くもって良い案が浮かばない。




褒める作戦はイマイチだったし…まぁあれは、完全に私のミスだけども…でも、これ以上やらかしたら、いくらあの優しいフランツでも、私のこと嫌になるわな。

だからこそ、次は慎重にいかないと…とりあえずデートにでも誘ってみる??いや、断られたら終わるし、もう少し軽めのやつを数多く打って、確実に落としていきたいな…



フランツが懸命に用意した昨日の市場デートは、クリスタの中ではデートの類ではなく、単なる同級生との食べ歩きと認定されていた。




ああもう…変態の手の中で生きるのも絶対に嫌だし、難攻不落の相手を必死に落とすのも面倒だし、それなりに美味しいものを食べてそれなにり幸せに生きていきたいだけなのに…

なんなんだよ、この世界の選択肢の無さは!!!あんなにしんどいと思っていた前世が懐かしく思えて来ちゃう…


…いや、これは神様からもらった大切な二度目の人生。10歳になる前までの自分も、あんな劣悪な環境で必死に生を繋げてくれた。

だからやっぱり諦めるわけにはいかないんだ。


私は私のために、フランツの正式な婚約者に…



「って、だからどうやってフランツのことを口説けば良いんだよ!そんなの知らないよーーー!!」


「え…」


小さな息が漏れたような声が聞こえた。


音に反応したクリスタが焦って後方を見ると、そこにはフランツが立っていた。

彼は、目を見開いて驚愕の表情を浮かべ、クリスタの方を向いたまま微動だにしない。



「は…」


わあああああああああ!!!!またやっちまったよーーーーーー!!!!!私のアホンダラああああああああああああ!!!!!なんでいつも口から思考が漏れ出るんだよおおおおおお!!!



固まる二人の間に、ホームルームの開始を告げるチャイムが鳴り響いた。



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