プロローグ
うちは貧乏だった。
食べる物がないわけじゃないけど、かなり粗末な食事だった。芋でカサ増しをしたご飯に納豆ともやし、それが定番メニューだ。
外食なんてしたことなかったし、コンビニでご飯を買うことも無かった。
周りが羨ましかった。ずっと憧れていた。
友達とご飯を食べに行ったりカフェでお茶したり、外で自由に好きなものを食べることを。
中学生の時に、食べたいものリストを作ったら、すぐにノート一冊分埋まってしまい、勿体ないことをするなと親に怒られたっけ。
自分でお金稼いで、
目一杯好きなものを好きなだけ食べる。
それだけのために、
大人になるまで我慢して生きてきたのだ。
なのに…
高校卒業後すぐ、働きに出た私は、初めての給料日の日に交通事故にあった。
青信号で突っ込んできたのは、大型トラックだが、あの時の私は初めて手にした大金に浮かれまくってて、圧倒的に周囲への注意が足りていなかった。
最後の記憶は自分に向かってくるトラックと、眩し過ぎる強い光。
ああ、こんな半端に終わってしまった私の人生。
せめて最後に美味しいもの食べたかったな…
はぁ、お腹空いた…
え…私死んでまで、空腹なの?
何それ、神様酷過ぎじゃない??
神様のくせに、マジ鬼畜。
ん…でも待って、なんかおかしい…
何か見えるような…
ここは…ベッドの上?
あれ?自分の手が見える…でもなんか小さい?子どもみたいな大きさ…
あ、身体も顔もある…なんだこれ…どうなってるの??
ここは、誰かの部屋??
鏡ないかな…よいしょっと、手足が短くなった気がしてベッドから降りるのがちょっと大変…
確かこの裏に姿見が…
って、あれ?私なんでこの部屋のこと知ってるんだっけ??
あっ…
鏡に映っているこの子私だ…あ、思い出してきた…私今日までこの子として生きてきた。
え、これもしかして異世界転生ってやつ!?
私また生きられるの?
今度こそ美味しいものにありつける?
もしかして、異世界ならではの美味しいものが沢山食べられるんじゃない?
なにそれ、最高じゃん!
神様、愛してる!