運命の日
「アスタリオン殿下。こんばんは、今日は街で最近人気のお菓子を買ってきましたよ!」
「システィ、お前そんなに甘いものばっか食べてると太るぞ?」
「いいんですよ!もし太ったとしてもそれは幸せなお肉!!後悔はありません!!」
アスタリオン殿下の元に通ってもう三年。アスタリオン殿下とはだいぶ打ち解けてきた。殿下は私をシスティと呼んでくれることが増え、私のくだけた話し方も許してくれた。前世の記憶が戻ってから、だんだんと令嬢っぽさが薄れてしまったが仕方ない。人前では令嬢の皮をかぶれているのだから良しとしよう。
ちなみに、私の正体はわりとすぐにバレた。私が神聖力を込めた王冠、それを取りに来たのがアスタリオン殿下だったのである。会って一週間もしないうちに、意図せず正体がバレてしまった。それからやけになり、吹っ切れたことで殿下とも仲良くなれたのだから、まぁ結果オーライである。
「それで?今日はなんの話をするんだ?」
「今日はですね、これまた街で話題の占いの本を買ってきたんですよ!これで殿下や私のこと占ってみましょう!!」
「また変なものを……。だいたいお前、聖女なのに占いとか信じるのか?全ては神の思し召し、じゃないのかよ」
「こういうのは、信じる信じないじゃなくて、やるのが楽しいんですよ!!それに、案外当ってることだってあるんですよ〜?」
この三年で原作とは変わったことがいくつかある。一つは国にはっている結界。これを私が強化したことで従来の結界の三倍の強度にすることができた。そしてもう一つはアスタリオン殿下。原作では主人公でありながらそのつらい生い立ちから人間不信となり荒れていたが、今は人当たりも良く、自身の持つ悪魔の色でさえも武器にして味方を少しずつ増やしている。なんというか……たくましくなったようで何よりである。
「ふむふむ……私は、『人の心には敏感だけど、自分の心には鈍感で、人を傷つけてしまうことがあるかも?もうすぐ人生の分かれ道!貴女の心の声に素直になると良いことがあるかも!?』ですって!!何があるのかな〜」
「やっぱりその占い当ってないな、だってお前人に対しても鈍感だろ?」
「そんなことないですよ!一応聖女ですよ!!?人の心には敏感なはずです!!」
「どーだか」
「むーっ、じゃあ殿下のを見てみましょう!えーっと、殿下は……『貴方は心の中で沢山の事を考えている、腹黒タイプ。貴方の人生は人より壁が多いですが、自身の強さで乗り越えて行けることでしょう!!時にはストレートな思いをぶつけることも良いでしょう。』ですって!!」
「まぁ壁は多いがな……なんだ、その目は」
「いや、なんでもないです。なんでもないですけど、やっぱりこの占い当たってますよ!」
(だって殿下、絶対腹黒だし。)
「お前、今失礼なこと考えてるだろ。」
「いえ?殿下は今日も素敵だなと考えていただけですよ?」
そんな話をしていた時だった。コンコンというノックとともに、扉の外から声がかけられた。
「アスタリオン殿下、国王陛下がおよびです。至急、お越しください。」
この三年、殿下が家族と会うことはほとんどなかった。それが夜遅くに呼び出し、何か大事な用があるということだろう。三年、やれることはやった。私はドキドキとはやる鼓動をおさえるように深呼吸した。国王陛下から殿下が呼び出された理由はわからない。だが、私には確信めいた予感がしていた。
原作が、始まったのだ。
システィア「あっ!これ恋愛のことも占えるみたいですよ!!殿下、やってみましょう!!」
アスタリオン「はぁ、やりたきゃやれよ」
システィア「私は『恋愛感情に疎い貴女。貴女のことを好きな人はすぐそばにいるかも?』ですって〜!!なんかすごいですね!!」
アスタリオン「ふーん…その占い、あたってることもあるんだな。(ボソッ)」
システィア「え?何かいいましたか?」
そんなところが残念なシスティアちゃん。もう年頃ですが、協会にいるため恋愛にはあまり触れる機会がなく実感がわかないそうです(笑)
私生活がバタバタしてて更新が遅れていてすみません。




