おかしな侵入者(アスタリオン視点)
この国の王族は代々金の髪と青の瞳を持ってうまれる。色の濃さに差はあれど、王族の血が強いほど特徴が顕著に現れる。そう、この俺を除いて。
俺は生まれつき黒い髪と赤い目を持って生まれてきた。現国王と、そのいとこである王妃から生まれる俺も、本来なら金と青の色を持っているはずだった。そんな中、俺は、悪魔の色と言われる黒と赤を持って生まれた。
何度調べても俺は現国王と王妃の子で間違いはなかった。だが、それを周りは認めない。
王家の色を持たずに生まれた第二王子は悪魔が孕ませた子と言われ、誰からも愛されることがなかった。
そして七歳の時、俺は離宮を与えられそこで人の目から隠されるように暮らしていたのである。王族として最低限の知識を学ばせるために来ていた教師は、毎日寝る暇もないほど大量の課題をおいていき、それができないと俺を叩いた。剣術の教師は、訓練だと言い何度も俺を殴りつけた。出される食事は使用人と同じかそれ以下だった。
そんな生活を続けて一年後がたった頃、ある事件が起きた。俺を殺そうと、寝室に暗殺者が来たのである。この事件には護衛も一枚噛んでいたようで、助けを呼んでも誰も来ることはなかった。
パニックになった俺は魔法を使って侵入者を撃退しようとした。本来なら、生活魔法しか使えない子どもの虚勢、そうなるはずだった。だが、俺は攻撃魔法を発動させてしまったのである。その後の事は良く覚えていないが、部屋はボロボロになり、暗殺者の姿はなくなっていた。
大きい音に駆けつけてきた使用人達が、"悪魔"と怯えて逃げていく姿が妙に頭に残っている。
その後、離宮の人間は全員入れ替わることになった。表向きは第二王子を危険にさらした罰とされているが、実際は俺に怯えて逃げていった者がほとんどである。
それから、七年、魔法の勉強もつみ、今ではだいたいの魔法を無営業時間で発動できる。暗殺者の一件以降、自分の部屋には侵入者用の魔法をいくつかかけるようになった。
ピンッと、見えない糸に何かが引っかかったような感覚があり目を覚ます。良く知っているこれは、魔法が侵入者を感知した反応である。
コンコンコンと、とても小さなノックの音がなった。
とても侵入者の行動とは思えなかったが、この部屋にいる限り俺は魔法で守られている。相手の目的を知るためにしばらく様子を見ることにした。
そっと扉を開く音がすると、誰かが近づいてくる気配がした。
「……少し、体に触れさせてもらいますね……。」
囁くように言った言葉とともに、侵入者の手が俺の肩に触れた。本来なら俺に触れた時点で侵入者を捉えるべきだったのだろう。だが、侵入者のくせに丁寧で、壊れ物を扱うようにそっと触れてくるソイツに、俺は、興味がわいてしまった。
ソイツの手から、温かい何かが流れ込んでくる。それは俺の体を巡って、またソイツの手に戻っていく。何をされているのかわからなかったが、悪いものではないだろう。なぜなら、この部屋では俺に危害を加えれば、それが本人にかえるようになっているからだ。
ふと、手が離れたと思ったら、今度は顔に触れてきた。流石に顔に触られるのは抵抗がある。もう、さっさと捕まえて、目的をはかせようかと思っていると――。
「貴方にとっての世界が、少しでも優しいものになりますように……。」
そう、祈る声が届いてきた。
何が起きているのか、意味がわからなかった。
目を閉じていてもわかる、淡い光が集まってきて、俺の中に入ってくる。
俺は、こんなに温かい力を知らない。
柔らかな声で、優しい手で、俺の幸せを祈ってくれる存在を知らない。
そんな人間、今までで見たこともない。
だから、知りたいと思った。こいつが、なんのために俺に近づいたのか。なんのために祈ったのか。
この祈りが嘘ならばそれでも良い、目的をはかせて牢屋に入れるだけだ。
だが、そうではないのなら――。
俺はその場をさろうとする侵入者の手を取り、ナイフをつきたてる。
「お前は誰だ」
アスタリオン(足音も気配も全く消せていない……。素人だな。どうして侵入できたんだ……?)
システィア 「うゎっ」
アスタリオン(何もないところで躓いている……こいつ、大丈夫か?)




