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命の危機ですわ!!??

 「お前は誰だ」


 (ど、どうしましょう!!ナイフ…!!ナイフですわよ!!答え方を間違えたら、私、()られますの!!??)


 「答えろ、誰の手の者だ」


 (誰の手!?誰の手も何も、自主的に侵入した不審者ですわよ!!?どう答えてもアウトですわ!!)


 「答えないなら……わかっているな……?」


 (きゃーーー!!!!やめてぇええ!!!!何をするの!!??()るってこと!!?つまり()るってことぉおお!!!???)


 頭では色んな考えがよぎっているが、システィアは恐怖で声が出せなかった。自分の命が危険にさらされているという恐怖で、体はカタカタと震え、魔法や神聖術を使うことすらできなかった。

 しばらく沈黙の時間が続くと、システィアは体を引っ張られベットに押し付けられた。


 「ひっ……、ご、ごめんなさぃ……。」


 恐怖で潤んだ瞳はとうとう限界をむかえ、涙が溢れ出した。混乱した頭では何を言えば良いのかもわからなくなり、システィアはただただ泣くことしかできなかった。





 どのくらい時間がたっただろうか。システィアが泣いている間、何者かはシスティアを問い詰めることも、危害を加えることもなかった。その間、少し冷静になったシスティアは嫌なことに気がついてしまった。


 (このベット、殿下が寝ていたはずなのに、私、何にもぶつかっていないわ…。)


 そう、システィアが倒れた時に支えてくれたのは柔らかなクッション達である。


 ということは、つまり、ナイフを向けてきた人物はーー。


 「で……っ、殿、下……。」

 「ほう、やっと落ち着いたか。」


 システィアは恐怖で閉じていた目を開ける。その者はもうナイフを持っていなかったが、目の前に立っている人物は先程までベットで寝ていたはずの、まごうことなき第二王子だった。


 「もっ……っ、申し訳……、あり、まっ、せん…でした……っ。」

 「何がだ?」


 涙が出ないように我慢すると、その分言葉につまって上手く話すことができなかった。


 「私、が……、勝手に…っ、殿下、の……離宮に、侵入、したこと、です……っ」

 「なんのために?」

 「殿下、に……祝福をっ、授けたくて」

 「お前は協会の者なのか?」

 「はい」

 「誰かに命じられたのか?」

 「違い、ます。私が、勝手に、したことです。」


 それだけ聞くと、第二王子は黙ってしまった。

 部屋にはシスティアの嗚咽だけが響いている。


 「お前の、目的はなんだ」

 「しっ、幸せに…なりたいん、です。」

 「お前の幸せと俺になんの関係がある。」

 「それ、は――」


 泣いた頭では良い言い訳が出ることもなく、前世の記憶を正直に話す事もできないシスティアは何も答えることができなかった。


 「殿下、失礼します。」


 扉の外から声が聞こえてくるとともに、突然、寝室の扉が開いた。


 「――っ」

 

 「殿下、何か変わった事はありませんでしたか。」


 入ってきたのは、システィアが眠らせた護衛の一人だった。


 「ああ、何もない。」


 とうとう捕まるのかと身構えるシスティアをよそに、第二王子と護衛は淡々と会話を続けていた。


 (あれ?この人、私に気づいていない……?)


 「そうですか、なら良いです。あ、そうそう、明日セヌヴィス殿下がこの離宮に訪問なさるそうです。朝起きれないとなっても面倒なので、早く寝てくださいね。では、失礼します。」


 護衛の男はそういうとさっさと部屋から出ていってしまった。


 (やっぱり、どういうことですの?私は今、魔法も神聖術も使っていないわ。この場でこんなことができるのは殿下だけ。でも、どうして……。私を隠してなんの得になるというの……?)


 「これが、俺の現状だ。」


 「え?」


 「侵入してくる時に見ただろう。この離宮には護衛はおろか、使用人すらも数える程度しかいない。俺は家族から離宮に追いやられ、この城で働いている者も俺を軽視している。お前はなんだ。なんのためにここに来た。俺を、殺しにきたのか。」

システィア(護衛の方に見えないなら、殿下が話をしているうちに……)


ガシッ!


システィア「ひっ」


実は護衛の人が入ってきた時にまぎれて逃げようとしていたシスティアちゃん。ですが、察しの良い第二王子に手を掴まれてできなかったようです。(笑)


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