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お姫様(王子)を助ける魔法使いになりますわよ



 「そうよ!私がこっそり彼を幸せにしてあげればいいんだわ!!」


 システィアは第二王子に干渉するか悩んでいた。理由は様々だ。システィアが王家と関わることで危険や不安要素は圧倒的に増える。だが、そんなことは些細な問題にすぎなかった。


 (私が第二王子を助けたいって思うことが、私のために第二王子を利用しているような気がして、どうしても気がすすまなかったのよね。)


 そう、異世界転生ものでは転生者がキャラクター達と関わることで幸せに導く一方、キャラクター達は転生者に好意を向けるものがほとんどだ。

 その好意の種類が何であれ、システィアは自分が第二王子を助けるのは、前世の記憶を利用して第二王子を自分に依存させる行為なのではないかと悩んでいた。そして出した結論が“こっそり助ける”なのである。


 (私の役割は童話に出てくるような謎の魔法使い。)


 一度決意をかためたシスティアの行動は早かった。


 「さっそく今夜から行きましょう!」


 システィアは支給された中で目立ちにくい簡素なワンピースに着替えローブを羽織った。




 (王子がいるっていうのに、案外警備が少ないのね……。まぁ、私にとっては好都合だけれど。)


 今いるのは離宮の一室、システィアはもう既に侵入をはたしていた。方法は簡単、魔法で自分の姿を他者から認知されないようにしたのである。


 (今更だけれど、私も貴族だから魔法の勉強はしていたのよね。神聖術も使えて、魔法も少しは使えるのだからこれって十分チートってやつじゃないかしら?)


 歩いて探索していると、部屋の前に護衛らしき者が二人ほど立っていた。きっとそこが第二王子の部屋なのだろう。


 (護衛さん達には申し訳ないけれど、少し眠っていてもらうわよ。)


 システィアがその場で祈ると、護衛達が急に倒れ込んだ。彼らが眠っているだけだということを確認すると、彼女は部屋の中に入っていくのであった。





 (さっきの神聖術で、部屋の中の人も眠らせるようにしたけれど…ちゃんと寝ているわよね…?)


 部屋の中はシンプルではあったが、他の部屋と比べここは特別に質の良いものが置かれている。真ん中にあるベットには、第二王子が寝ているのであろう。


 そっとベットを覗くと、黒髪の少年が眠っていた。


 (この方が、アスタリオン殿下なのよね……。見た感じは健康そうで良かったけれど……。うっ……実際に本人を前にすると勝手に入った罪悪感が……。早くやることをすませて帰りましょう。)


 「……少し、体に触れさせてもらいますね……。」


 システィアはアスタリオンの肩に軽く触れると、彼に向かい神聖力を流した。


 (体に異常は……ないわね……。離宮での暮らしはあまり詳しく書かれていなかったから不安だったのだけれど、毒や暴力の心配はないみたいで良かったわ。)


 システィアは肩に触れていた手を離し、アスタリオンの頬を両手で包み込んだ。


 (神よ、アスタリオン殿下をお守りください。)


 「貴方にとっての世界が、少しでも優しいものになりますように……。」


 システィアが祈ると、優しい光がアスタリオンを包み込むように現れ、そして、体に吸い込まれるように消えていった。


 (終わった、わね。それじゃあ皆が眠っているうちに早く帰ってしまいましょう。)


 そう思い、扉へ向かって歩きだそうとした、その瞬間。


 「お前は誰だ」


 気づいた時には首元にナイフが突き立てられ、システィアは身動きがとれなくなっていた。


 (っ、もしかしなくても、私、やってしまいました……??)




システィア「住居侵入……犯罪……。やっぱりやめるべきかしら、でもこうでもしないと……!!(ボソボソ)」


見習い(聖女様、かれこれ30分は同じ場所を歩いておられる……。大丈夫なのだろうか?)


 勢いで決めましたが、直前になってちょっと悩んでいたシスティアちゃんでした(笑)



〜本文の補足説明〜


 神聖術は神に祈る、魔法は想像することで発動します。どちらも詠唱はいりませんが、口に出すことでイメージがよりはっきりとするため言葉にする人が多いです。無詠唱で複雑な奇跡を起こす事のできる人は上級者とされています。


 ちなみにシスティアは無詠唱で大抵のことはできますが、治癒など、相手がいるものはあえて口に出すようにしています。それがシスティアの誠意です。

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