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さて、これからどうしましょうか



 「ふぅ、今日も働いたわね。」


 今日は治療を求める人が少なかったため、神聖力に少し余裕がある。朝はバタバタしてしまったが、結果的に良い一日だったのではないだろうか。


 「結局この世界が何なのかはわからないままね。……まぁ、この世界が前世と関わりがあるとも限らないし、思い出して変な争いに巻き込まれるかもしれないし、今日はもう寝てしまいましょう!!」





 チュンチュンと小鳥たちがさえずり、朝の訪れを告げていた。草花についた朝露が陽の光を浴びてキラキラと輝いている。そんな気持ちの良い朝、システィアはというと………。



 ベットの上でうなだれていた。


 「嘘……ここ、小説の中の世界じゃない……。」


 システィアは寝ている間に、この世界のこと、今まで起こっていたこと、そしてこれから起こることを知ってしまったのだ。前世の記憶を通して。


 「ほんとに第二王子がキーパーソンじゃない……。どうしたらいいの……。」


 この国の第二王子、離宮に住んでいると噂の彼だが、彼こそが小説の主人公であったのだ。


 小説は第二王子であるアスタリオンが、悪魔の色と言われる黒い髪と赤い目で生まれた事によって冷遇されて育つというところから始まる。わずか七歳で一人離宮に暮らすことになったが、悪魔の色を持つ彼はいじめられ、家族にも助けを求めることができず、十八歳の時には魔物との戦いの最前線に送り込まれるのである。


 (主人公だからといって、あまりにも可哀想でしょう……。)


 そしてこの小説だが、実は完結していない。前世の私はこの小説が好きだったのだが、ネットの小説だったため未完結で更新が止まっていたのだ。


 (今の第二王子の年齢は十五歳、私の一歳上ね。戦場に送られるまでにはあと三年ある。)


 そもそもなぜ、危険な場所に王族を送ることになったのか、それには理由がある。それは三年の間に魔物が急増するからだ。

 今まで、国の結界によって魔物の被害を免れていたが、数が増えた事により結界が破られてしまう。そのことにより、魔物を討伐する部隊をつくることになるが、魔物が増えた理由を調べるために優秀な魔法師が必要だった。その優秀な魔法師が第二王子だったのである。


 (戦場に行ったところで小説の更新が止まっているから、無事に帰れるかわからないじゃない。主人公だからって無傷でいられる保証はないし。……というか、破られた結界って私が維持してるやつよね!?私も責任あるじゃないのよー!!)


 国の結界は聖女が器具に神聖力を込めることで維持してる。効果は神聖力の量で変わる、というわけではなく、常に一定の強さの結界が貼られているのだ。代々聖女が維持していたわけだが、それが破られるということは今までにないほど大量発生したということだろう。


 (できることなら助けてあげたいけど、私が手を出して良いことなのかしら。)


 小説の通りなら、第二王子はつらい生活を送っているだろうが、それでも彼は耐え抜いているのだ。システィアが介入しなくても彼は生きていける。それならシスティアは魔物の対策を考えるだけでよいのではないか、そんな考えが頭をよぎる。


 「……今考えても仕方ないわね。とりあえず、支度をしてご飯を食べに行きましょう。混乱している時には碌な考えが浮かばないものね。」


 二日連続で前世の記憶を思い出しているわけで、それにくわえて今まで生きてきた世界が誰かに作られた世界だと知った。その衝撃はシスティアが思っている以上に強かったのだろう。


 (ネガティブなことばかり考えていても嫌な気持ちになるだけで現実は変わらないわ。とりあえず一度落ち着いてから何をするか考えましょう。)


 朝食を食べ、掃除をし、神へ祈りを捧げ、病気や怪我の治療、結界の維持と聖女の仕事をこなしていく。


 そしてまた夜。


 「決めたわ…!!私、陰ながら第二王子を幸せにする!!」


 システィアは新たな決意をかためていた。

システィア「モグモグモグモグモグモグモグモグ。」

(悩んでいてもご飯は美味しいのよね。この世界が前世と同じような食事でよかったわ。)


見習い(大量のご飯が聖女様の口に消えていく…。あんな小さい体のどこにあの量が入るのだろうか。)



システィアは十四歳、成長期なので良く食べます!

食べても太りづらい体質ですが、本人は太ったとしても気にしません(笑)

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