おかしな侵入者2(アスタリオン視点)
「んんっ、美味しい!!これすっごい美味しいですよ、殿下!!」
「そうか、よかったな」
「はい!!甘さも控え目なので、今度は殿下の分も買ってきますね!!」
幸せそうにケーキを頬張るこいつは、この国の聖女システィア。三年前に俺の部屋に来た侵入者だ。
俺はこいつと魔法契約を交わした。最初は俺の味方を作るためだった。だが、こいつと会ううちに、自分でも知りたくなかった感情が芽生えていることに気がついた。
「いや、いい。これをもらう。」
「はい?」
ケーキをすくったシスティの手をとり、一口味わう。
「ん、甘いけど美味いな。」
「!!そうなんですよ!!このフルーツと一緒に食べると酸味も合わさってさらに美味しいんですよ!!はい、殿下!!あー……」
「はぁ……、……ん。」
こういうやつである。なんなんだ、少しは恥じらったりしないのか?こいつは。
「こっちも食ってみるか?」
「え?いいんですか??」
「ああ、ほら。」
「ありがとうございます!あ〜むっ!!」
意趣返しのつもりで俺が差し出したケーキも、ためらいなく食っている。警戒心をむき出しにしていた頃に比べると良いのだろうが、今は無くなりすぎではないのだろうか?
「ん!これも美味しいですね!!ちょっとビターで、大人の味って感じです!!」
そういってまた自分のケーキを食べ始める。何度アピールしても気が付かないどころか、「仲良くなったみたいで嬉しいです!!お友だちって感じですね!!」と一番の笑顔で言ってくる始末。
どうして俺はこんなやつに……。きっかけは、なんだっただろうか。
* * * *
こいつが来るようになってそろそろ一ヶ月経つ。今のところ契約に背く行動も無く、怪しい動きはない。やはり、こいつの身元を早くに知ることができたのが良かったのだろう。
あれは国王陛下からの命で協会に行った時である。こいつがこの国の聖女として、目の前に現れたのだ。協会にいるとは聞いていたが、まさか聖女だったとは。俺は平静を装いながらその場をあとにした。そしてこいつについて調べあげた。その上で、害はないと判断したが、一つだけ懸念点がある。こいつは聖女でありながら俺に嘘をついたのだ。聖女は力を維持するために嘘がつけない。だが、何からしらの抜け道があるのも事実なのだろう。だから、俺はこいつを見極めるために自白剤を用意することにした。
こいつはご自慢の神聖力で身を守っているのか、俺の魔法では干渉できない。面倒だが薬を用意するほかなかったのである。神聖力でどこまで守っているのかはわからない。だが、ここで話をする際、酒を用意した時にほのかだが頬が赤くなっていたことがあった。つまり、体に対した害もでず、薬として調合された自白剤なら効果がでる可能性が高い。
周りに変な誤解を招いても困る。慎重に動いたら時間がかかってしまったが、やっと自白剤を手に入れた。今夜の酒にはそれが溶かされている。
今夜、こいつの本性をあばいてやろう。
アスタリオン「なぁ、俺が男だってこと知ってるか?」
システィア「知ってますよ?殿下は男の子ですよね?」
アスタリオン「男の子って……お前より年上なんだけど……」
頑張れ!めげるな!アスタリオン!!(笑)




