どうやら前世の記憶を思い出したようですわ
〜神聖術・魔法に関しての説明〜
(設定がわからなくなった時に見に来てください!)
神聖術
神聖力を持って生まれた者のみ扱える。力の量は生まれたときから変わることはなく、力の強さは心の綺麗さに比例する。力が増えることはないが減ることはある。
魔法
大気中にある魔力をエネルギーとし使用する。生活の中で使用するような魔法はだれでも使えるが、戦闘や治療などに使う魔法は訓練が必要。
という2つの力がある世界です。
神聖力が高い女性は聖女に選ばれます。男性も神聖力を持つ人はいますが、協会は"聖女"を求めているため、神聖力の高い男性は神官になるのが一般的です。
神聖術は術者の神聖力が尽きたら終わりですが、魔法は魔力からエネルギーを得ているため、限界がありません。ですが、神聖術は力がある限りどんな奇跡を起こすことも可能で、魔法は術者の技術がなければ強力なものは使えません。これが神聖術が重視されてる理由です。
「システィア、この王冠に神聖力をこめなさい。」
本日最後の仕事はこの王冠に神聖力をこめることらしい。今日は朝から祈祷室の掃除、病気や怪我をした人達の治療、国にかけている結界の維持などを行ったため心身ともに疲弊している。もちろん、神聖力もあまり残っていない。
「申し訳ありません、教皇様。もう残りの神聖力が少なく……。」
「口ごたえをするのですか、システィア。貴方は聖女です。この国のために、身を削って働くべきです。早く神聖力をこめなさい。」
そう言って差し出された王冠を、私は黙って受け取ることしかできなかった。
「何をしているのです。それは国からの依頼ですよ。早く終わらせなさい。」
「…はい。承知いたしました。」
私は残り少ない神聖力を指先から王冠へと流していく。この国では神聖力をもつ人材は貴重であり、その中から力が強い者が聖女として選ばれる。私は伯爵家の娘として生まれたが、歴代最高の神聖力をもつ聖女として協会で預かりの身となった。伯爵家で政治の道具としか見られていなかった私は、協会では神聖力が使える道具として働かされているわけだ。
神聖力を流していた指先に軽く押し返されるような反動がくる。どうやらギリギリ足りたようだ。
「……っ、終わり…ました…。」
「では本日の業務は終了です。部屋へ戻りなさい。」
そう言って教皇が王冠を持ち、さっていく。私は震える足を叱咤してやっとの思いで部屋へ戻った。部屋には質素な机と椅子、本棚、ベット以外には何もない。服も協会から支給されたものだけだ。
「疲れた……今日は、もう…ねよ……。」
私は服も着替えずベットに倒れ込むように眠りについた。
道を走る鉄の箱に奇妙な服を着た人々。ここはどこだろうか…。知らない、知らないのに私は知っている。
そうだ……私は…………。
目が覚めるとカーテンの隙間から朝日がのぞいている。昨日は帰ってきてからそのまま朝まで眠ってしまったらしい。
私は今見た記憶を整理する。そう、記憶だ。あれは夢ではない、私が私になる前の記憶。
「前世の私はよほどの徳でもつんでいたのかしら…?」
そう、何を隠そう前世の私はオタクで、異世界転生ものが大好物だったのだ。もしかしたら自分も可能性があるのではと日々夢見る痛々しい乙女だったのである。
「前世の記憶を思い出したけど、人格って案外変わらないものなのね。」
体に神聖力を巡らせながら、異常がないか確かめていく。前世の記憶を思い出したが、感覚としては自分の子どもの頃の映像をみた感覚に近い。自分は覚えていないが、確かに自分だと認識できるし、そんなこともあったんだなという程度だ。
「これからどうしましょうか……。と言っても、私が自分で好き勝手できることなんてあまりないのよね……。」
私は聖女として協会で働いているため、自由にできる時間は食事と睡眠の時間くらいなのである。聖女といえば、アニメや漫画で勇者と旅に出たり、王子様と結婚したり、夢と希望がつまった職業な訳だが、実際は毎日ボロボロになるまで国や協会のために働かされているだけである。夢も希望もない。
「異世界転生ものといえば、物語やゲームの世界にっていうのが定番だけど、ここも何かの世界なのかしら?…………神聖力……聖女……うーん、ありきたりすぎてわからないわね……。」
(この世界の特徴といえば、魔力、神聖力という力があること、魔物が存在していること、かしら。魔王や勇者なんて聞かないし、あと物語でよく出てくるのは王家よね。)
この国の王家は、国王と王妃、王子が三人である。第一王子はとても評判が良く、何事もなければ時期国王で確実だろうと言われている。第二王子は表に出てきたことがなく、情報が少なく、今は離宮で暮らしているらしい。第三王子は確か留学中だっただろうか。
(鍵になりそうなのは第二王子かしら?情報が少ないことと、離宮に暮らしていることから何かしらの秘密がありそうね……。)
システィアが物思いにふけっていると、ゴーンと朝の鐘の音が鳴った。
「大変っ、もうこんな時間!!早く掃除に行かないと、祈りの時間に間に合わなくなってしまうわ!!」
システィアは自身に浄化の魔法をかけ、急いで仕事に向かうのであった。
システィア(早く終わらせて、祈りの前に朝食を食べるわよ!!)
シュババババッ!!!!
見習い(す、すごい速さだ……、一瞬で部屋がきれいになっていく……!!これが、聖女様の力…っ!!?)
システィアは食事と睡眠は大事にしています。健康第一!!




