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カガリノサイレント  作者: 若井 響虫
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残念懺悔のプロローグ

 うまく生きるというのは、結構難しいことだ。ましてや、他人を救うというのは、とてつもなく難しいことに分類される。少なくとも、僕はそう思うんだ。


 僕はヒーローになりたかった。この夢を今でも抱いていたら流石にやばいやつだが、これはまだ僕が、自分を信じることの出来た、子供の時の夢なのだから許してほしい。


 僕は、割と本気で努力した方だと思う。人に優しくし、悪を憎む心を忘れないようにしたし、毎日身体を鍛えて、格闘技なんかも色々やった。まぁ、でも子供だから、あくまで子供なりの努力でね。


 バカだなぁって思うだろう。実際、色んな奴にバカにされた。そんな一途な僕に惚れてくれる、胸がデカくて可愛くてエロいヒロインなんかがいてくれればなぁ……なんて思った事もある。我ながらませてる。まぁ、そんな邪念は考えちゃダメだって、できるだけ振り払ったけど。ヒーローになりたい一心でね。


 だが、ヒーローなんてものは結局絵空事だ。どれだけ頑張ろうがフィクションは現実にはならない。でも、僕は簡単には諦められなかった。


 そう、全ては彼女との出会いだ。彼女との出会いが僕の人生を変えた。


 うー、我ながら臭い台詞だ。でも、割と本当にそうなんだからムカつく。


 僕は努力を続けた。なれないとしても、僕の心に刻まれてしまった英雄に少しでも近づきたくて。だけど、現実とは厳しくて、強くなれる人はなれるが、なれない人はなれないものなのだ。そこには、才能という差が確かにある。


 それを実感しても、ヒーローになれないと薄々気づいても、僕は僕なりに、いい人であろうとしたし、人を救いたいと思っていた。

 

 だけど、人生やっぱり上手くいかない。


 あれは、中二の春のことだ。僕は柔道部だった。道場には新入生の見学者が沢山いた。皆初々しくて、緊張している顔をしていた。


 僕は技も上手くないし、知識もそんなにないから、あんましゃべんない方がいいかなって思ってた。でも、仲間達がシャイなのか全然喋ってくれないものだから、僕は少しでも空気を和やかにするために、わざとおちゃらけたんだ。

 

 「これは、体落としっていうもので、体ごと落とすんだけど…おっとと!」なんて言って、わざと失敗して、投げ返されたりを演じたんだ。


 女の子なんかはちょっと笑ってくれて、良い印象を与えられたかなとか思ってたんだ。


 そしたら、先生にちょっと来いって、道場裏に呼び出された。そして、「ふざけるな。真面目に教えろ!」などと言われてしまった。そこでは、まぁ謝った。さして、何もなかった風を装って、笑顔で新入生の元に戻った。でも、心の中ではガッツリへこんでいた。自分が悪いのはわかってるから、反省はしっかりしてしまう。


 で、家に帰っても、数日経っても、そして今になっても、僕は時折そのことを思い出して、ガッツリへこむんだ。


 そういう反省ばかりが、記憶に残っていく。僕の人生、こういうことの繰り返しばかりだ。もし、何かできるのなら、僕はこの全てを変えたいよ。


 すまない。あんまり面白くない話を長々と。結局何がいいたいのかというと。


 うまく生きるのはとても難しい。人を救うこともすごく難しい。だから、ちょっとぐらい捻くれたって許して欲しいということだ。


 何を言っているんだこいつと思ってるだろうけど、僕と彼女の物語を知ってくれればすぐわかることだ。


 それに理解できる人はしてくれると思う。ヒーローへの憧れと絶望。そして、自分への失望と諦め。


 ほんとは、彼女との始めの出会いから知ってもらうべきなんだろうけど、それじゃちょっと今の話のテーマからズレる。


 だから、僕が16の頃の話から始めるとしよう。


 僕は、あれから7回目の夏を迎えようとしていた。彼女という、英雄のいた夏から数えて。

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