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5話 パチパチパチパチ......。
「やった、やっと火がつきましたっ!!」
「こっちも魚を三匹ほど捕まえれたぞ!!」
先程から少し経った。
ファイアの魔法で火をつけている間に俺は魚を取りにに行った方がいいと思ったから取り
に行ってたんだが......。
丁度いいタイミングだったみたいだ。
と言うか、ホントここに魚が多くて助かった。
三匹も取れたのは僥倖僥倖。
「じゃあ、私が焼きますね。」
「あ、じゃあ、頼む。楽しみにしてるぞ」
「任せてください!!」
彼女は大きい胸を張ってそう言う。
め、目に毒だ。この娘は......。
「急にそっぽ向いてどうしたんですか?」 「なんでもないよ、森宮さん。」
ダカラキニシナイデ。
「それより串とかありますか?」 「くし? ああ、刺すのか。いや、持ってないな。」 「そうですか......、じゃあ、えっと、コレを川で洗ってくれませんか?」 「ん? ただの石だけど......。」 「石焼きをしようと思っているんですよ。」 「石焼き? なんだそれ?」
「いいから洗って来てください!!」
と、急かされたので平たい大きめの石を洗う。 とりあえず、服を模倣してっと。
ゴシゴシゴシゴシ......。
うん、これぐらい綺麗だったら大丈夫かな?
「あ、洗えましたか? こっちの準備はできてますよ!!」 「はいはい~、あー、よっこらせっと。ここにおいたら良いのか?」 「そうです。うん、完璧!!」
石を置いてみるとあら不思議。
かまどみたいなものが完成したではありませんか。
「簡易的に焼くだけならこれで十分かな?」
「やったことあるの?」
「うん、叔母さんがアウトドア好きでね。こう言う自然の中での調理方法とか教えてもらっ た事があるの。」
「それはありがたい。」
「塩とか有れば良いんだけど......、流石にないか。」
「まー、持ってないな。ま、まともに焼いて食べれれば十分だ。」
「そうだね。っと、火を持ってきて。」
いつの間にやら薪を置いてるではありませんか。 丁度良い感じに燃えてる木を一本持って行ってと。
「燃えやすいものを入れなきゃ燃えねえぞ。」 「あっ、何かないっ!!」
「はいはい」
バサバサバサ......
乾いてそうな草を集めてたのでそれを入れる。
一気に火は燃え上がり、丁度良い感じに他の木にも火が付いた。
「気持ちいいくらいに燃えてますね。」 「だな。で出来上がるまで何分ぐらいかかるんだ?」 「せっかちですね......。」
「そうか?」 「そうだと思います。あと、多分30分ぐらいはかかると思います。」 「じゃ、ちょっと出かけてくる。」
まだ夕日が出ていて暗くはなっているが気にするほどではない。 川辺には、鹿などの生き物がいる。 モンスターなどもちらほら。 ツノが生えたウサギや、スライム。 ゴブリンなんかもいるな。
「のどかな光景には違いないか......。」
川辺の大きめの石に座り剣を見る。
思いの外、剣にはダメージが入っているな。
「っと、コレばっかは仕方ないか。模倣で誤魔化してもダメージは蓄積してるしな。」
ファンタジーを読んでいるから多少の知識はあるが、それでもやっぱり経験に基づくもの じゃ無いから嘘か真か、実用性の有無までは把握できない。
「全く、本当に苦労する。」
だが思いの外、悪くないと思う自分もいる。
「これが人間ってやつか。」
全く、笑えない。
笑うことなど出来るはずがない。
恐怖で怯えなければならないはずなのだ。
顔を歪め泣き叫び生を渇望する世界のはずなのだ。
なのに、楽しんでしまっている自分がいる。
「全く、自分のことが分からねえよ」
剣を振る。
ヒュッと音が鳴り、自分が思った通りに剣が振り下ろされる。
繰り返してみる。
何度か、何度も、幾度と無く。
「ああ、たしかに楽しいかな? これは。」
柔道みたいに決められた範囲の競技じゃない。
糞食らえの何でもありの現実なんだ。
「光真くーん!! 魚が焼けましたよー!!」 「すぐ行く!!」
森宮さんに呼ばれたし、そろそろ戻るか。
丁度、腹も減ったしな。
*5話:夜*
「おやすみなさい......。」
すー、すー、すー。
微かに寝息が聞こえる。
飯も食べ終わりあとは寝るだけ......、ならどんなにいいんだろうか......。
パチパチパチッ......。
「はあ。」
心身共に疲労しきっているが寝るわけにはいかない。
ここで寝たら、死ぬだろうな。
あー、家に帰りたい。
アニメ見て小説読んで億劫に宿題やって寝てえ。
「って、宿題はやらねえか。」
パチパチパチッ......。
また静かに、薪が弾ける。
程よい暖かさとその音に眠気を誘われるが生憎と、眠気より恐怖心がまだ強い。
「剣でも振るか。」
思い立ったが吉日。
早速立って剣を振ってみる。
シュッ、シュッ、シュッ。
最初は真っ直ぐに、ひたすらに剣を振ってみる。
やっぱり、重心が大きくブレて力の籠りが悪いな。
これじゃ、実践を意識した立ち回りなんかをするのはまだまだ先になりそうだ。
シュッ、シュッ、シュッ。
何回も降り続ける。
無心に、ひたすらに。
思いの外、剣というのは扱いづらいもんで体の軸をしっかりと意識しなければただの振り
下ろす動作だけで結構なブレが見える。
柔道では体が多少ブレていても何とかなったが剣はそれが如実に出てきてる。
「とは言え、はぁはぁ、結構疲れたな。」
今の時間は夜10時。
まだまだ、夜の本番には早すぎるが、あたりは暗闇に染まりたまに聞こえる物音が警戒心
を掻き立てる。
ギギャッ!!
「全く、何で休憩の時に来るんだよ。」
ゴブリンの鳴き声が聞こえ、剣を構える。 しばらくしないうちに、一匹二匹とやってくる。
ギギギャッ!!
醜悪な顔を歪め、ニヤリと悪辣な笑みを俺に向ける。
獲物がかかった、と。
「本当に、誰も食われてねえよな?」
問いかけの答えはない。
当然、か。
ギギャア!!
俺の思考が終わった直後、前から棍棒が迫ってくるのが見える。
「遅えよ。」
見切った。
こんな鈍間な攻撃より遥かに先輩の技の方が怖い。
危なげなく、棍棒を避ける。
そしてすれ違い様に、剣で腕を一閃。 大量に血が出てるのを視界に捉えて、二匹目に近寄る。 二匹目の武器は、槍みたいなもの。 構えられた穂先は、俺に向けられている。 だが、突撃をすることはなく向かう俺に対して怖がりながら目を瞑っている。
「格好の的だ。雑魚が。」
目に見える槍の穂先周辺を手で掴み、無理やり引き寄せる。 そして、槍を捻り取り捨てる。 無手となったゴブリンは、俺に襲い掛かってくる。
「オラァァァァァアアアア!!」
剣を捨て、腕を掴み擬似一本背負い。
相手の体を硬い地面に叩きつける。
ゴフッ......。
絶命には至ってないだろが、しばらくは立てもしないだろうな。
その間に棍棒のやつの命を、借り受ける!!
怒り狂って、襲い掛かってくるその動きは先ほどより数段早く
「読みやすいってな。」
足を軽く掛けてやると、面白い具合に転がる。
「ま、容赦はできないが。」
地面に転がっている剣を逆手で持ち突き刺す。 気持ちの悪い感触と共に刺さった場所から血が噴き出す。
ギ、ギギャ......。
吐き気は、無い。
足の震えは取れない。
ギギャア......!!
弱々しくも力強い鳴き声を聞き、俺は刺している剣を再び掴む。
「すまねえな。許せとは言わない、だから素直に死んでくれ」
これを言える俺は狂ってんだろうな。
けど、今はそれでいい。
狂ってても生きていられるのであれば......、それでいい。
「むにゃむにゃ......。」
「全く......、呑気に寝てやがるな。」
苦笑しながらその可愛い寝顔を見る。
はあ全く、襲われるとか考えてねえのか? ......ねえんだろうなぁ。
「風邪引くぞ、馬鹿が。」
そう言って、俺は森宮さんに上着を被せる。 さて、ゴブリンの死体を運ぶか。 流石に、ここに置いていたら血に釣られて寄ってくるだろう。
「よいしょっ、と」
担ぎ上げた、力無い体躯を川に放り捨てる。
しばらく見ていると、滝から落ちていった。
「死体処理完了、か。」
気色悪いな、ハア。
「けど、やらない訳にはいかないしな。っと、戦利品に槍があったよな?」
そう思い、見渡すとかなり草臥れた槍がある。
長さは大体二メートル弱か? 模倣して予備を置いておきたいが無駄に使うのはよした い。
と言うか俺は使わんよね? いや、森宮さんに使わせるか。
剣より槍の方が使いやすいだろうし。
構えとけば、容易に近づいて来ないだろう。
「と、なれば軽く洗うか。剣も槍も血がついていてかなり汚いしな。」
川から少し離れてるとは言え、目が離れる距離じゃ無いしな。
ジャバ、ジャバ、ジャバ。
軽く、血を洗い流し直ぐに戻ってくる。 水気は、ゲロ塗れだったシャツで拭き取る。 もうすっかり乾いていたので綺麗に拭けたな。 このの服は、メンテ用の布代わりとして使うか。 あとは......、簡易的に鞘みたいなのが欲しいな。 ベルトを模倣して作ることは......、可能か。 問題はここで一回使うのかどうか。 メリットは、両手が空くこと。 デメリットは、魔力が一減ること。
うーむ、悩ましい。 どちらも魅力的だ。 とりあえず、模倣可能か見てみるか。
「模倣、可能か。」
じゃあ、します? しちゃいます?
と言うわけで模倣、手の中に慣れ親しんだベルトが現れる。 これをこうしてああしてこうすると......、うん、簡易的な鞘に近いものができたな。 これをベルトにつけて......、剣を刺すと完成!! 直ぐに抜けるか? あ、大丈夫そう。
「よし、じゃあまた剣を振るか。」
シュッ、シュッ、シュッ。
無心に、ひたすら振り続ける。
音が、若干変わる。
微かな変化、それと共にコツが掴めたのか一気に重心が安定する。
まだまだ、未熟だ。
ま、技術は基礎さえ出来てたらどうにかなるだろ。
と、言うわけで動きながらの練習と行こうか!!
「フッ、ハッ、ホッ!!」
細かく動きながら仮想の敵であるゴブリンと戦う。 薙ぎ払い、切り裂き、刺し殺す。
時には休み、時には火を見て、時にはゴブリンを処理していたらいつのまにか太陽が昇り
始めていた。
「あー、眠い。」 「スピー、スピー、スピー。」 「呑気に寝てるのがムカつくな。」
本当にな。
っと、ステータスをみるか。
魔力はどれぐらい回復してるんだろ?
「と、言うわけで【ステータス】。」
*ステータス* 名前:月田 光真 種族:人族
進化:1
魔力:7/10
スキルポイント:0 スキルツリー名:贋作者 保有スキル:模倣 剣術
* *
スキルが増えてやがる......、だとッ!?(驚愕)
一晩剣を振っただけで生えるものなの!? と言うか、剣術スキルなんてスキルツリーに 乗って無かったよなッ!?
と、言うわけでスキルツリーを確認してみたところメインツリーの他にサブツリーという ものが生えてやがった。
運営(女神)仕事しろ!! こんなの誰が予想してんだよ!!
と、言いたいが類稀なる精神力で抑えつける。 ん? 心の中で言ってるじゃ無いか、って?
知らんな(すっとぼけ)
まあまあ、いいじゃ無いか。 しかし、これはいいものを発見した。 必死に鍛え上げれば、スキルは手に入るのか。 俺だけ、って可能性もあるが......。 フェイカーに、そんな付属効果が有り得るのかは謎。 起きたら森宮さんに聞いてみるか。 じゃ、残り5時間ほど頑張りますか!!
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