最終話(続きを書いてないとも言う)
レイとニューズ教の2人は街を出て歩き始める。
「何処に、行くんですか?」
「まずは、この依頼を終わらせてしまおう。」
「依頼の内容は?」
「ふむ、少し問題を出そうか。一見、簡単に見え実のところ難しい依頼は沢山ある。それを見分ける訓練にもなるだろう。この依頼は、過去3回失敗されている討伐依頼だ。」
「討伐依頼......ですか。モンスターの名前は?」
「ゴブリンだね。」
「じゃあ、なんで......?」
「そこを考えてみたまえ。」
「ええ......。」
困惑しながらも頭を働かせ、考えるレイ。
(一見、簡単に見えて難しい依頼? 単純に敵が強いとか? いや、そんな単純な話じゃないだろ。となれば......なんだ? 集団の敵? あー、確かにそれはありそう。他にあり得そうなのは......。無いな。)
あっさり、結論付けると教官にそう告げる。
「集団の敵ですか?」
「惜しいな、後もう一つひつようだ。」
そういったかと思えば、急に大鎌を振り先ほどまで居なかったゴブリンを殺す。
「答えは、人の知恵を持ち群れた魔物だ。」
森林の中、歩いていた2人を囲むようにゴブリンが現れる。
「い、いつの間にこ、こんなに......。」
「幻影魔法に、気配希薄のスキルか。定石といえば定石だが当然、対策されている物でもあるな。」
そういい、大鎌が一閃。
たちまち、数本の木と共に幾匹ものゴブリンが真っ二つになる。
「剣弓を構えろ!! 実戦で経験を積め!!」
「はいっ!!」
剣弓を両手で持ち振り回して、ゴブリンを斬りつける。だが、その剣技は拙く見るに耐えない。
「甘いっ!! 腰を入れて振れ!! 訓練のことを忘れるな!!」
そう言われて、姿勢を正す。
先ほどよりも精悍に。
前へと向ける視線は、怯えながらも興味が宿っている。サイコパスという無かれ、この世界は、この仮想現実はあくまで”夢のような世界”なのだ。夢で何を思おうとも自由では無いか? 少なくとも、個人の思想を縛る必要はないだろう。
「流石に多少の知恵は回るか。まあ、それがどうしたという話でもあるのだがな。」
レイたちに背を向け、逃げ始める様子を見て教官はそう呟く。
「剣弓を貸せ」
「え、あ、はい。」
「[狙い撃ち]飛べッ!!」
剣弓に即座につがえた矢を一瞬にして飛ばす。その矢は、ゴブリン三匹を貫通し木の幹に突き刺さる。
「ほれ、返す。」
「唐突すぎませんか?」
「そんなことはどうでもいいだろう。ほれ、来たぞ。」
目線を追ってみれば、その先には三体のゴブリンが。
「えぇ......。」
「いけるだろう?」
「無理無理無理無理!!」
「ほら行ってこい。[挑発]」
「はぁぁぁぁあああああ!!」
唐突に言われた言葉に驚きを隠さず、文句を言えば挑発スキルを使いゴブリンを集められるレイ。
後に引けない状況になり渋々、相対する。
武器の質や、強さは圧倒的に優っている。
だが、数で劣る。
(震えるな俺、やればできる。)
内心を奮い立たせる。自分でも信じていない言葉を妄言を吐き、剣弓を上げて下ろす。
剣技とも呼べぬ動きは、当然のごとく空を切りその隙にとばかりにゴブリンは襲いかかっ
てくる。
慌てて、回避。
避け切れずに、頭に思いっきり棍棒が当たる。
一対一ならば対処も出来るだろうが三体一。
いつも以上に、思考は甘く体が怯える。
「逃げるな。怯えるな。」
声が聞こえた。
教官の声が。
(落ち着け、俺。まだ......大丈夫だッ!! )
所詮、ゲーム死ぬことはない。
だが、ゲームであれど恐怖はある。剣が向かってきたら当然、無意識に避けるし火に触れれば熱くなくとも消そうとする。その心理的リミットをレイは、”意識した”消すなどと言う芸当は一般人のレイには不可能。だが、ここまでは大丈夫という心理的ハードルはわかる。二度目の棍棒は、当たらなかった。
「考えてみれば簡単なことだな。」
慢心? 否、違う。
レイがそう呟いたことは、レイが事実としてそれを受け止めたからこそ無意識にそう呟いたのだ。
簡単な話だ。
なぜ、早朝はゴブリンを殺せ今は手古摺っている? 理由はただ一つ。
「冷静になれよ、俺」
技術はないに等しい。
力はレイがはるかに勝る。
頭脳も同様に。
唯一、差があるとすれば数のみ。
覚悟さえ決めてしまえば、心理的ハードルを認識し恐怖を覚えながら理性によって大丈夫と安心させてしまえば。
三体ごときのゴブリンなど敵ではないのだ。
ザッ......。
一歩下がる。
棍棒に確実に当たらない位置へと。
ギギッ?
動きが変わったぞ? と、一匹は不思議げに首を傾げる。
「[払い][凪ぎ]」
攻撃が入る位置にゴブリンが入った。
スキルが発動する。
感覚的にそれがわかる。
今ならスキルが発動すると。
「勝った、な。」
一匹目を切り裂く。
ギャァッ!?
二匹目が一匹目がやられたことに動揺し、動きを止める。
だが、レイも一緒だ。
奇襲じみたことをせず直接対面し、相手の姿をはっきりと見て倒したのは初めてなのだ。
手に残る感触が、動揺と興奮を誘う。
意図的ではないもののここに膠着状態が生まれた。
......
「......。」
先に動いたのはレイだった。
「行くぞ?」
言葉で挑発する。
同時に、剣弓を正眼の位置に構える。
前に一歩、踏み込む。
ギャァ!!
棍棒を振りかぶり襲い掛かって来るゴブリン。
「シッ!!」
それをレイは、カウンターで返す。先ほどよりも強く抵抗を感じる。だが、その抵抗はそれ以上強くならない。一瞬にして、抵抗も消える。
「やったか。」
レイがゴブリンを切り裂いたのだ。
ホッと、一息。
足から力が抜ける。
地面に、レイが座り込みかけ......。
「この程度では不合格、だな?」
レイの後ろからゴブリンが飛んで来る。
「え?」
「全ての敵を視界に入れておけ。」
「いたの?」
「最初から三匹いた。内、一匹は実力を弁えず私に向かってきたがな。」
「しくったなぁ」
「まあ、初心者はこんなものだろう。」
「はぁ......。まあ、切り替えるか。」
「そうだな、悪い点はそんなところだろう。最初は弱腰だったが冷静になってからは動きも
変わったしな。」
「じゃあ、良かった点は?」
「スキルを使用できたことだな。最後の一撃は使用してなかったが......。まあ、大した問題ではあるまい。」
「あー、気をつけます。」