12回目の時計の音
R15指定となります。
15歳未満の方はご遠慮ください。
カチ…カチ…カチ…
視界は真暗に覆われていて聞こえるのは秒針が動く音だけだ。
「あの…誰か居ませんか?」
女の手足は椅子に縛られ動く事も出来ない。
「やっと起きたんだね。待ちくたびれたよ」
急に耳元で男に囁かれ、女の身体はビクンと跳ねた。
「だ、誰なんですか?なんでこんなこと…」
「知ってる?ある国で死刑囚を対象に実験を行ったんだ。今の君のように視界を塞ぎ、見動きを取れないようにした状態で…手首に紙をスッと当てる。ナイフで切るようにね…」
男は女の言葉を遮り話し始めると、女の手首に何かを当てた。
「そうして少しずつ体温程のぬるま湯を落としていくんだ…まるで手首からポタポタと血が滴り落ちるようにね」
女は自分の手首からポタ…ポタ…と滴が落ちていくのを感じ震えていた。
「な、何をしているの…?まさか本当に手首を切ったの?」
「さぁ…どうだろう?因みに、その実験は半日かけて行われるんだ。時計の音が一時間毎に鳴る。12回その音が聞こえたら君は出血多量で死ぬと伝えられてね…君はどうなるのかな?」
「冗談でしょ?止めて…お願い!今すぐに!!」
カチ…カチ…という秒針の音と自身のドクン、ドクンという鼓動の音が支配してくる。
再び、男は女の耳元で囁いた。
「12回目の時計の音が鳴り終わったら答えが分かるよ」
「はいカットー!!」
静寂に突如監督の声が鳴り響いた。
「ふぅーお疲れ様。怖い思いをさせちゃったね」
男は優しく女の手首を縛る縄を解いた。
「はぁー本当に怖かったですよ。役に入ると本当に人が変わるんですもん…」
「はは、ごめんね。お疲れ様。ところでさ…この撮影で最後…引退するって言ってたよね?」
「はい!なんだかこの業界に疲れちゃって…ちょっと旅でもしようかなー…なんて」
女は旅が楽しみなのだろう。男に満面の笑みを向けた。
「そっか…良かったらさ、旅に行く前に遊ぼうよ。どうしても君と一緒にしたい事があるんだ」
「もちろん!時間はたっぷりあるので!日時は合わせます!連絡お待ちしてますね!」
「ありがとう。じゃ、また連絡するよ。お疲れ様」
事務所の送別会も終わり、女が帰宅しTVをつけると連続殺人事件の特報が流れていた。
どうやら殺害されているのは皆若い女性で外傷もないのに死んでいるという。
これでもう11人目らしい。
「こわ…物騒な世の中だわホント」
女が呟くと同時にスマホが鳴る。
どうやら共演した男のようだ
視界に入った時間は0:00だった。
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