最も欲しいスキル詰め合わせ
「クロム君! 探したわよ!」
「……なんで分かったんだよ」
朝早くからドンドンと五月蠅くノックされるので、何事かと玄関扉を開けてみたら勇者サシャ・ツキシロがそこにいた。
「Sランク冒険者の特権として、名前さえ分かればどこに誰が済んでるか調査して貰う事が出来るのよ」
人間の中から魔王が生まれる事もあるしね。と、部屋の中に入ってきながらサシャは呟く。
って……おいおいおいおい! 何勝手に部屋に入ってきてるんだ! マズイ! 俺の部屋には……。
「ちょ……やめろって! 勝手に入ってくんなよ!」
「何よ。いいじゃない部屋にあげなさいよ。男の子なんだし、エッチな本くらい持ってても何も……は?」
俺の制止を振り切り、勝手に部屋に入ってきたサシャが見たのは、決してエロ本などではなく……。
「なっ……なにこれ!? どういう事!?」
ヒノキの木材を使ったフローリングの床板。勿論床暖房設備。
バラエティ番組を付けっぱなしにしてある大型テレビ。
コタツの上にはノートパソコン完備でアニメ鑑賞中。
金と引き換えに、異世界からあらゆるものを取り寄せる俺のスキル『ジャングル通販』で取りそろえた異世界の生活様式だった。
「……バレちまったか。絶対に他の人に言うなよ? 100%欲しがるからな」
「うわ~! 凄いわね! この箱! 中に人が入ってるのかしら?」
俺の言葉を無視して、サシャはキョロキョロとテレビの前と後ろを行ったり来たりしている。
まあ、分からなくもない。俺も最初テレビを取り寄せた時は同じ事したからな。
なんだかここまで驚いてると俺まで楽しくなってきた。
「……ちなみにこれはコタツって言うんだが入ってみ? 世界が変わるぜ?」
「なにこれ! 暖かいわ! そしてなぜかめちゃくちゃ落ち着くわね!」
……凄く嬉しい。
なんだろ、自分だけの宝物をめちゃくちゃ褒められてるみたいで顔がにやける。
「ねえ、このコタツ? の上に置いてある箱は何? 絵が動いてるわよ!」
「それはな、アニメって言って異世界の最高の文化で……」
その時、サシャが何気なくキーボードにタッチした。
適当に目の前のボタンを押したその指は[Ctrl]+[Shift]+[T]
直前に見たタブを開くショートカットキーだった。
そして俺が直前まで見ていたサイトは……。
(ヤバい! 人生が終わる!)
──瞬間。高速でスキルを発動した。
エロサイトの履歴を消去するスキル『アリバイ消去』
ブックマークに登録していたサイトを健全化するスキル『記憶は脳内に』
ハードディスクを健全化するスキル『死なばもろとも』
健全なサイトを開くスキル『俺……勉強してたんだけど?』
パソコンが急にシャットダウンするスキル『何もしてないのに壊れた』etc……。
「え? なにこれ? 急に暗くなったわよ? 私何もしてないのに壊れたんだけど?」
オドオドとシャットダウンしたパソコンを前に狼狽えているサシャに、俺は優しく言った。
「ああ、偶に良くあることだよ。気にするなって。ところで俺の家まで押しかけてきて何か用なの?」
まあ、大体理由は分かるんだけどさ。
どうせ、俺をギルドに勧誘するとかだろ?
「え? そっ……そう? 大丈夫なら良かったわ。私はあなたの勧誘に来たのよ。ボランティアなんてやってないでギルドに所属するべきだわ」
やっぱり……。
「それと、貴方がなんでそんなに強いのかも気になるわ。それと、あの四角い箱の正体と、この暖かいコタツってアイテムはどこで売ってるのかも」
サシャはそう言いながら、コタツにずっぽりと入りながらテレビに魅入っていた。
……それ覚えたらもう俺の部屋から出なくなるんじゃないか?
少し不安を抱きながら、俺もコタツに入る。
「お前が勇者だから話すんだぞ?」
と、前置きをしつつ。
「まず、俺は絶対にギルドに入らない。あんなクソみたいな組織に所属するなんてまっぴらごめんだ」
見習い冒険者としてロウガに理不尽な扱いをされていた時の事を思い出してしまった。
思い出すだけでもイライラするな。
マジで最後に一発ぶん殴っておけば良かったわ。
「クソみたいな組織? 確かにあそこは封建的なところはあるけどそんなに……」
「ああ、あと俺の強さの秘密とこのアイテムは全部俺のスキル。俺は7京9181兆5273億6446万4985個のスキルが使えるんだよ」」
「もしかして貴方昔ギルドに所属してて、見習い期間中に何か……ちょっと待ってナナケイ?」
「うん。兆の上。京」
「ケイ?」
「うん。でも完全にコントロールできるのは7兆2283億9464万9591個だけ……違ったわ。今は少し増えて28兆3596億4544万5870個か」
「ニジュウハッチョウ?」
「うん。億の上。兆。最近コントロールできるスキルが増えてきたけど、まだ0.3%しかコントロール出来ないんだよ」
果物を生成するスキルで生み出したみかんを食べながらテレビを見る。
隣には顔を引きつらせながら両指を折って数を計算しているサシャがいた。
両手の指をフルに使って兆の位を確認したところで、サシャは大きくため息を付いて、やれやれと肩を竦めた。
「ふふ、そうよね。自分の能力を秘密にする人もいるわよね。ごめんなさいね、私が悪かったわ」
いや、マジなんだけどなぁ。
ブクマ、評価をしてくれたらモチベーションがグングン上がります!
面白い! 続きが読みたい! と思ったら、ぜひ評価☆☆☆☆☆⇒★★★★★をしてくれると嬉しいです!
頑張れ! 期待してる! って思った方もぜひ評価をお願いします!
応援よろしくお願いします!