老害
「クロム・ランペルト様ですね。冒険者ギルドへの登録を完了させて頂きました。見習い冒険者からのスタートとなります」
「はい、どうも」
街に向かい、俺はギルドに加入した。
新人は全員見習いからのスタートらしい。
そして、見習い冒険者には……。
「おうおう! 何だてめえさっきの小僧じゃねえか! しごいてやるから覚悟しろよ!」
──教育係として先輩冒険者が付く。
「はぁ」
「ああ? はぁじゃねえよ! しっかり先輩に挨拶しろ!」
俺の教育係は先ほど商人を助けた時に出会った冒険者。
ロウガ・イシュルと言うおっさんだった。
上から物を言ってきて糞ウザい。
このおっさんが俺を評価して、その評価が十分であるならば正式にDランク冒険者として冒険者登録できるらしい。
クソみたいな制度だ。
そして……その日から俺とロウガの冒険者生活が始まった。
この生活が俺の人生の中で最もストレスが溜まった時間だった。
なぜならロウガは……。
──先輩を笠に着た老害だったから。
Episode1
とにかく自分のやり方に拘る。
異論は認めない。
「おい! ゴブリンはまず足を斬って動きを遅くしてから心臓を狙えよ!」
「直接心臓に剣を突き刺した方が早くね? てか、俺剣なんて使わないでもいけるんだけど」
「……っ! うるさい! 俺はそうやって習ったんだ! 黙って従え! 冒険者は最初は剣と決まってるんだ! 早く足を斬れ!」
クエストはゴブリン一匹の討伐だった。
いらないと言っているのにロウガは俺にボロイ剣を渡してきて、それで倒せと言ってきた。
どうやらロウガは剣の使い手らしく、指導がてらに自慢をしたいらしい。
「だからそんな事しなくても」
剣を新品にするスキル『砥ぎ師』
剣の達人になるスキル『剣聖』
一瞬で間合いを詰めるスキル『瞬歩』
心臓を一突きするスキル『一撃必殺』
剣系スキルで心臓を一突きし、ゴブリンを即死させる。
ほらな? 別にお前のやり方じゃなくても倒せるんだよ。
「ほら、こっちの方が早いじゃん」
その時──ロウガが俺に叫んだ。
「何をやってるんだお前は! まずは足を斬れと言っただろ! 勝手なことをしてんじゃねえ!」
「だから……」
──ゴン!
そんなことしなくても。と言おうと思ったところでロウガの拳骨が俺の頭に直撃した。
「まずは足を斬れ! と俺は言ったんだ! 魔法を使ったのか知らんが勝手な事をするな!」
クエストの内容はゴブリンの討伐。
その内容は自由なのにも関わらず、ロウガはギルドに提出する新人評価シートにDと大きく書いてわざと俺に見せつけてきた。
「俺のやり方が出来ないなら冒険者なんてやめちまえ!」
(何でお前のやり方が出来ないと冒険者を辞めるって言う結論になるんだよ)
Episode2
プライベートにも干渉してくる。
後輩を奴隷か何かだと思っている。
「おい! 先輩のグラスが空いたら酒を注げよ! それが後輩のルールだろ!」
クエストを受注していない時は、大体ロウガからの呼び出しに答えなければならない。
どうやら、ロウガの中ではそれも評価シートの項目に入っているらしい。
何回かシカトしていたら大きな声で「ならばお前はDだな」と評価シートを取りだして脅してきた。
「はあ? 自分で飲む酒なんだから自分で注げば良いじゃん」
ムカついたのでスキルを発動。
対象者の身体をコントロールするスキル『身体操作』
自分と同じ動きを強要するスキル『鏡写し』
相手の精神に干渉するスキル『精神操作』
魂を支配するスキル『ルールメイカー』
催眠術を使えるスキル『催眠』
目を合わせた相手に絶対順守の命令が出来るスキル『支配の魔眼』
自分で酒を注がせるスキル『強制手酌』etc……
身体&精神支配系のスキルを100個程使用し、ロウガに自分で酒を注がせる。
能力を解除したところで、ロウガは自分の手に持っている酒瓶を見て……叫んだ。
「お前! 魔法か何か使って俺に酒を注がせたな! 後輩のお前が注ぐんだよ! 大体最近の若者はな──」
(う~わ、面倒くさ……)
いつもの事なんだが、ロウガは説教をする時に昔の事を話し出す傾向にある。
それが為になればいいのだが、全くならない。
最終的には自分が過去にどれだけ凄かったかの自慢をしだし、自分はどれだけ偉い人に好かれているかの自慢になるのだ。
(なんでこいつは、今の自分と自分の力を誇れないんだろう)
延々と、自慢話をし始めたロウガを冷めた目で見る。
その目が気に食わなかったのだろう。
ロウガはドンとテーブルを強く叩くと、評価シートを取りだしてDと大きく書き出した。
「何だその態度は! 先輩の話をしっかり聞かないか!」
(それと、冒険者としての資質とどう関係があるんだよ)
Episode3……と言いたい所だが、これ以上語ると無限に話し続けてしまいそうで怖い。
まあ基本的に、ロウガはとにかくマウントを取りたがり、尊敬の言葉を言い続けないと怒るって事だな。
言ってても気分が悪ければ怒るけど。
そんなクソ見たいな日常が3か月程続き、いつものようにゴブリン退治に向かった時だった。
俺たちの前に魔王が現れた。
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