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魔法鍛冶師006

「フッ……。

なんだ、信じていなかったのか」


 まだ疑っていたのか。

 幼い頃から槌で剣を打っていた名残でできた豆の多い少しごつごつとした手を見て、ロロナはようやく俺が鍛冶をしていることを確信したのだろう。

 それは鍛冶師の娘ゆえなのかは知らないが、確信したのと同時、瞳を閉じて何故かゆっくりと握る手を自身の頬へ持っていた。

 

 形としては俺がロロナの頬へ手を伸ばし、その手に猫のようにロロナがなついているような感じには見えるが、俺にはその行動の意味が分からなかった。

 

 というより、


「うっ……ぐずっ……」


 泣き出したのだった。

 瞑る瞳からは涙が溢れ、それが流れて頬に当てる俺の手を伝う。

 

 意味が分からない。

 なんなんだ?

 

「どうした?」

「いえ……ひぐ……その……っ」

 

 分からないが。

 何かに悲しんでいるようだった。涙交じりの嗚咽は間違いなく芸などではなく。確かにロロナの感情だ。

 

「はあ……。

好きにしろ」

「ごめんなさい……ごめんなさい……」


 そうやって泣いているロロナから無理やり手を放す訳にもいかず、ため息つきながらも俺は抱えられる手をロロナにゆだねた。

 

 そうして、

 

「あの……ごめんなさい……」


 数分ほど泣いていたロロナは、ようやく気が済んだのか俺の手を放し涙を拭って俺へ頭を下げてきた。

 

「気にするな」

「はい……」


 理由は知らないが、何か手に思うところでもあったのだろう。

 言われてロロナはシュンとする。

 

「そろそろ俺は寝るぞ?」


 時計は無いが時刻はそれなりの時間だ?体感では8時とか9時とかその辺り。夜明けと同時に明日は出発であり、何より俺も今朝は早かったためか、ささやかな眠気がやってきていたので、一言言うと俺はその場に寝ころんだ。

 

 ああ――もちろん。ロロナが泣いていた理由が気にならない訳ではない。

 何らかの思いがあるのだろう。

 おそらく察するに、死んだ父のことか何か……。

 

 だが、ソレを訊いてどうなる?

 たまたまあった鍛冶師の娘に俺が話しを訊いてなにもすることはできない。

 それになりより、俺が鍛冶師を目指すには関係の無い事だ。話を訊いて無駄な面倒ごとに首を突っ込むよりここは流して、街に行き直ぐにでも鍛冶屋で弟子にしてもらった方がいい。

 どうせ、旅の間だけのなかでしかないのだから。

 

 そういったもろもろで、あくまで俺は鍛冶師になりたいだけ。

 その目的を果たすのに、面倒を挟んで遠回りなどしていられなかった。

 

 だから横になった俺は目を瞑る。

 

 

 それから、そうする俺の横へ何故かロロナも並んで仰向けに横になる。

 

「なんだ。わざわざここで寝なくてもいいだろう」


 俺はあまり大勢で賑やかな場所にいるというのが苦手だから、こうして離れているだけなのだが。

 わざわざそんな俺に付き合わなくてもいいだろう。

 

「いくら魔物が出にくい場所と言っても集団から離れてるんだ。危険だぞ?」

 

「そうですか?

私は此処が一番安全だと思ったんですけど」


 そうこちらを向き微笑みかけてくる。

 

「はあ……。勝手にしろ」


 そう言って、ロロナとは逆方向へ寝返りをうち背を向けて眠りへと落ちる。

 


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