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魔法鍛冶師003

 ゴブリンによる襲撃の後始末を生き残った者たちで追え、俺たちは日があるウチに森を抜けた。

 

 被害としては元々10両だった馬車は6両に。犠牲者としては馬主3人だけで済み。奇跡的に一般人には負傷者はいるものの死者はでなかった。

 不幸中の幸いと言えばそうだが、少なくとも俺が居なければ全滅は間違いなかっただろう。

 このような遠出の旅で襲撃に合う事は多々あるが、大抵は冒険者達で守り切れてしまうのだが……。運が悪いにも程がある。

 最初の一歩がこれでは先が思いやられる。

 

 まあ、それはさておいて。

 森を抜けた先は広い平原で、辺りには何もない地平線が見える程の芝生が広がった土地。背景には夕焼けに焼けた山の景色が一望に広がっていた。

 夕方だ。

 黄昏に染まる空の光が馬車の割れた窓から入り。日陰になっていた森で暗さになれた瞳に眩しく手で目を覆う。

 

「あの……」

「なんだ」


 風景を同じように見ていた少女が俺へ不意に声をかけた。

 

「えっとその……」


 声をかけた彼女はもじもじとして、目を俺と合わせようとしない。

 

 なんなんだ。

 ゴブリンからの襲撃いらいずっとこの調子だ。

 もじもじして、こちらをチラチラと見たと思えば、俺が気になり見るとサッと顔を逸らす。

 なんなんだ?一体。

 

「なんだ?」

「えっと……」


 自分で声をかけたのだからなにか用があるのだろうが、俺のことを目を伏せチラ見して、ただもじもじとしている。

 

「はあ……。ようがないなら無理して声かけなくてもいいぞ」

「いえ、そう言う訳じゃ……」

「じゃあ?」


 と、問い返すと。

 少女は何か決意を決めたように顔を上げ、俺を見つめた。

 

「私、ロロナ・シルフォロ・スミスと言います!!先ほどはあの、その……。笑ってしまって申し訳ありませんでした!!」


 思いっきり、頭突きでもするのかというぐらいの勢いで、叫ぶように言って頭を下げるロロナと名乗った少女。

 なんだろうか。

 こんな小さな子に頭を下げられるようなことをした覚えもない上に、された記憶もないような?

 

「ん?」


 だから訳も分からず俺は首を傾げる。

 

「え?」

「なんのことだか分からんが?」

「だからその、最初に鍛冶をするためにってことを笑ってしまって……。あのあの、エルフだからって剣を打つなんておかしいと思って……。でもその……その、先ほど助けてもらった方にそんな笑ってしまうなんて悪い事したなって……」

「ああ」

「ひぐっ……」


 そこでロロナは涙目になる。

 いや、何故泣く。

 

「はあ……。別に気にしてない。普通エルフが鍛冶をどうこういうはおかしな話だろう?だからお前も気にするな」

「は、はい……。えっと、そのお名前は……」

「ああ」


 ここでようやく名乗っていなかったのを思い出す。

 そう言えばと。まあ、特にこの少女についても特に気にはしていなかったしな。

 それにしても――スミスか……。

 

「俺はタクミだ」

「タクミ?」

「ただのタクミだ」


 賢者の性はこの世界に知れ渡っている。伏せておいた方がいいだろう。そう思った俺は名だけを明かした。

 対してロロナはタクミと小さく唱えるようにつぶやいている。

 

 なんなんだか。

 それはそうと――。

 

「なあお前。スミスと言ったな」

「はい」

「鍛冶師の娘なのか?」

「えっと……はい!!こう見えてもアラン・シルフォロ・スミスの一人娘なんです!!」


 悲しそうな顔をしていたロロナに問うと、今度は自慢気に胸に手を当てて言い張ってくれる。

 

 なんなんだか。

 

 ドワーフのスミスという名は、所謂鍛冶師としての称号だ。

 それも名門中の名門。ドワーフの中でも一端の鍛冶師の一族が名乗ることを許される命であるり、ドワーフの鍛冶師でもスミスという名を名乗れるものは少ない。

 人間でいうところの貴族見たいなものであるが、その名を持っているというだけで、打った剣は通常の数倍の価格で取引されるという話もあれば。

 国の王国騎士団専属の鍛冶師であることもあると聞く。

 

 とは言え。

 

「訊いたことない名だな」

「え……」


 アラン・シルフォロ・スミスという名は訊いたこともない。

 まあ。そもそも他の鍛冶師の名など知らないのだが……。

 

 俺の一言に自慢げだったロロナは悲し気の表情へと変わり涙目になる。

 

「はあ……。そのアランとやらの娘のお前はなんで一人なんだ?その鍛冶師はどうした?」

「父ですか?父はその……先日、亡くなりました……」

「なくなった?」

「はい」

「そいつはすまない。悪い事を聞いたな」

「いえ……。それは別にいいんです」

 

 正直、名門の鍛冶師ならば娘から頼んで弟子にしてもらおうかと思ったが。それは無理の様だ。

 だが、ならば何故彼女はこの馬車に?


「ならお前はどうしてルーレシアに?」

「ですから、亡くなった父の遺品の整理をするためにルーレシアへ」

「そうか。悪いな本当に」

「はい。悪いです本当に悪いです。ですので、一つお願いを訊いてもらっていいですか?」


 今度は急にぐいぐいと来る。

 

「お願いだと?」

「はい」


 ロロナの視線は俺の腰元へ。その先にあるのは魔剣アクセル。

 

「その剣、先ほどゴブリン達を撃退した剣ですよね?」

「ああ、そうだが?」

「見せてもらえないでしょうか?

一度断った身としては頼むなんて、本当に申し訳ないのですが、その剣を見てみたいです」


 鍛冶師の娘として気になるのか、申し訳なさそうに言ってくる。

 

 と、そこで。

 

 馬車が止まった。

 

 そうして、ロロナの頭の上にある上部座席との繋げる窓が開き。

 

「今日の移動はここまでだぜい。この辺にキャンプを用意するからアンタらも手伝いな」


 そう一言、言われて。小窓は閉まる。


 どうやら、今夜の休憩場所についたようだった。

 

「外で話そう。ここだと剣を見るにも狭いだろう?」

「あ、はい……」


 そうして、俺たち二人は馬車を降りた。

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