44) 第16話 オレの女神がインフレしてる件(3)
ちょっと今回長くなりました。
「ふはははっ、やはり出来るなぁガウリィ殿っっっ。貴方とは是非遊んでみたいと思っていたぞっ!!」
「ヴィリス様、今の内に俺の後ろへっ!!
俺ぁ槍がねぇとあんま上手く走れねぇんでっ!!」
嬉しそうに女はひと吼えし。素早く弾き飛ばされた剣を追って後ろに跳ねるように飛びのく。
「ガウリィさんっ!?」
《【高速思考パス】接続。
指摘。……彼の指示に従った方がいい。彼ならあるいは耐えられる。》
(なんでっ起きてんだよ門番さんっ!!
みんな【神々の奇跡】で周りの騒動にゃ気づきにくくなってる筈だろ、ステラっ!!)
女神はこの戦闘になるべく街の者達を巻き込みたくないと思っていた。故に戦いの始まりと同時に、この騒ぎによって皆が起きてこぬように一計を案じていたのだ。
《肯定。優美の奇跡による安らかな眠りの強化は発動中です。ですがそれでもその存在が強固なモノにはレジストされてしまうことがある。》
(いやいや、それならなんで普通の門番さんが一番に目ぇ覚ますんだって話だよっ。いっちゃなんだけど普通の門番さんにゃウチの子の相手なんざ出来るわけないって。早く逃げて貰わんと、怪我じゃすまなくなるぜっ!!)
《普通の門番であるならですがね。あいにく彼は普通ではない。説明が面倒です。ステータスの確認を申請。展開します。》
(ちょっ、おいっ!!)
・
名前 ガウリィ・レオルド
種族 ヒト族
性別 男
職業 豪戦士
レベル 75
BS:なし
信仰:ヴィリスカムィ
筋力 240(80)
耐久 147
敏捷 94(31)
器用 70(23)
感覚 66
知識 27 (19+8)
精神 68 (60+8)
魔力 16 (8+8)
【カッコ内は信仰補正と能力減退値。】
【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】
HP 2798(2723+75)
MP 323
【Rはレア度。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】
武器:【衛兵の槍】
防具:【衛兵の鎧】
種族スキル/Rはレアスキル。RRはダブルレア、RRRはトリプルレアスキル
【優良筋種】:ヒト種の中でも筋肉の質に優れた一族の血を引いている。見た目より筋力が高く、その成長は大きな資質を秘めている。
【癒せぬ傷】:古傷により右腕と左足がろくに動かせず、骨格に大きな歪みがある。その為各能力が大きく減退している。
コモンスキル
【魔物知識Ⅲ】【戦略眼Ⅲ】【運動Ⅲ】【知覚Ⅲ】【追跡Ⅲ】【力技Ⅳ】【斧戦闘Ⅳ】【肉弾防御Ⅳ】【投擲Ⅳ】【槍戦闘Ⅱ】【人物鑑定Ⅱ】【昼行灯Ⅲ】【杖走行Ⅲ】【護衛戦闘Ⅱ】
【虹の調和を崇める者】:調和神ヴィリスカムィを信仰し、その加護を得るもの。自分の一番低い能力値3つにレベルに応じた能力修正を得て、精神攻撃に対し耐性を得る。
職業スキル
【EX:真・剛撃V】:ウォーリアの基本スキル剛撃を只々強化した果てにたどり着いた人類未踏の大境地。使用者の筋力に依存して効果上昇。今力任せの叩きつけは大地を割り、次元を立つまでに成長を遂げた。現在癒せぬ傷の為使用不能。
ユニークスキル
【筋力上限突破】:筋力値が種族上限を超えている。一部のスキルをⅣランク以上で修得可。
・
(うぇっ、何コレっ。なんでこんなヒトが門番やってんだよっ!!)
《多分【癒えぬ傷】の効果故に、かと。彼の取り柄である優れた筋力は傷によって完全に封じられている状態ですね。もはやBSではないので美少女化による解除も不可能判定。》
(ナニモンなんだよガウリィさん……。まぁいいや。ここは素直に手ぇ借りよう。跳ぶぞっ!!)
《肯定。コネクト/ウル【疾風の一撃】》
言うが早いが女神は門番の後ろへ跳んだ。嵐はもうすぐ側まで迫っている。無邪気な微笑みを顔に浮かべ、その手に持った槍を門番に投げつける。
苦もなく門番はそれを掴んだ。
「ははっ、さぁガウリィ殿っっっ。それでは拙作と一曲踊りましょうっ!!」
「っち、そりゃどうも。せっかくの美女からのお誘いがこんな嬉しくねぇってこれありかよおいっ?」
「そう言いますなっ。何退屈はさせませぬ故っ?」
「そういう激しさ、好みじゃねぇんだよなぁっ!!」
緊張感のない台詞を吐きながら、門番は嵐をいなす。
挨拶代わりの横薙ぎ払いに踏み込んでの肩当て1つ。剣の根本で切り込まれながらも女の身体を吹き飛ばす。飛ばされ間際に女の脚が門番の顎を襲うが、それよりも槍による捌きの方が速い。それと同時に槍の石突きを地面に突き立て飛ばされいく女目掛けて右脚で蹴り込むと、女はくるりとそれを始点に回り込み、無傷で着地。
どちらのソレも尋常の者の戦ぶりではない。
優れた戦士の、英傑と呼ばれるべき者達の立ち会いだった。
共に距離を取り、語り合う。戦の流儀で言葉を愉しむ。
「いやぁ、強いなガウリィ殿。何より戦い慣れていらっしゃる。」
「嫌味かよお嬢さん?
ま、一目見た時からおっかねぇ女だって分かってたけどよ。」
「なぜコレほどの御方が門番を? 拙者不思議でなりませぬ。」
本当に不思議でならないという面持ちで、女は門番に理由を訪ねた。しかし門番の答えはどこまでもそっけない。どうにも触れられたくない部分であるらしい。
「……ここにいるのはどこにでもいる豪戦士って職業の、冒険者上がりの負傷兵っ奴だぜ。いかほどのもんでもねぇわ。」
「ははっコレは御冗談を。その右腕と左脚。ほぼ自由が聞かぬのではないですか?そのような状態で不自由なく長年門番を務められる。貴方が木っ端なわけがない。正直貴方が主殿の為にその脚で街中をかけていった時、拙者少々震えましたぞ?」
「そりゃどうも。別の事で震えられたいね、まったく。んでアンタこそ何で女神様とやりあってんだ。どう考えても頭おかしい選択だろうよ?」
門番は逆に女の真意を問いただす。女神の従者が女神を襲う。その意味がどうしてもわからない。しかし返ってきた答えは想像を超えて要領を得ないものである。
「かか、そうさな。
この身は元より歪んでいる故。気付けばこうなっており申した。」
「わっけわかんねぇ。どうなんですヴィリス様?」
「少しばかり成り行きのままにスキンシップを……。」
「んな危険なスキンシップあってたまるかっ。」
自分の愛する女神すらわけのわからない事を言い出したのでつい怒鳴ってしまった彼を誰も責めることなど出来まい。それでも女神の事を気遣える彼はやはり大人であった。
「ならどうして俺らを起こさんかったんですかい?」
「騒ぎを大きくしたくなかったのよ。本当はいい子なのよウチの子?」
「割と庶民のオカンが言いそうな事言わんで下さいよ、ヴィリス様っ!?」
「だってぇっ!?」
「くく、愛されてますなぁ拙者。何やら申し訳なくなりまする。」
女神が身内に甘そうな事は分かっていたが、予想以上であった事は否めない。どうにも普段は残念な部分が目立つその言葉に、思わずその場にいる全員が頬を緩めて脱力感に襲われる。
「ならもうやめてくんねぇかな。俺ぁ無駄な仕事がダイっきらいなんだよ。」
「そうですなぁ。今少し斬り合いを楽しんでから考えましょうっ!!」
「そうなるわよねぇ……。」
「んな綺麗な笑顔で言うコッチャねぇからなっ。ヴィリス様も納得しないっ!!」
どこまでも天真爛漫な女に1人頭を抱える常識人が唯1人。彼の今後の役割が決定した瞬間でもある。つっこみは、何時でも不足しているのだ。
もはや唯開き直ってしまった女神は、構わず彼に頼みを伝えた。
「しょうがないでしょう、そういう娘ですもの。あのガウリィさん、申し訳ないのだけど、少しの間だけワタシの為にあの娘の足を止めていて貰えないかしら?」
「何か手がお有りで?」
「ええ、少しばかりは。……出来ればあの娘はワタシが直接救って上げたいの。」
女神の言葉には覚悟が見えた。強い意思を帯びた紫水晶は見た者に有無を言わせぬ輝きを讃えていた。
それに思わず女は笑い、門番は流される事となる。
どことなく流れる暖かな空気の下で。
「ああ、本当に。拙者は良い主殿を得たらしい。楽しみですなぁ。我が主が一体何を用意してくれるのか。もちろんガウリィ殿との戦いも、ですが。」
「はっ、美人ドコロにそういわれちゃ弱ぇわな。ならまぁいっちょ気張ってみますかねぇ。」
「それではいざ尋常に?」
「おうさっ!!」
そして戦いは再開された。
・
僅かな時間を稼ぐべく門番は命を賭して嵐の前に立ち続けた。
存在の強度は門番が上、戦闘技量は互角程度、しかし攻撃の手数と鋭さは圧倒的に女の方が上手であった。
「はっ、本当にお強いなガウリィ殿。壊れた身体でよく動く。だがまぁそれもここまでのようですね?」
「ったく、質の悪ぃ嬢ちゃんだっ。昔の仲間を思い出すっ!!」
「太刀が悪いとはひどい言葉だ。是非訂正願いたくっ!?」
冗談を交わしながらも致命をくり出す。
鋭い女の指先が、男の胸を抉らんと至近から放たれる。
しかしそれは。
「そうゆう所も、似てるんだよなぁっっ!!」
「な、自身の肉で拙者を捉えたっ!?」
「覚えとけ嬢ちゃん。俺らみてぇな脳筋がひたすら鍛えた筋肉はよぉっ。」
「ぐぅっ!?」
「オメェみてぇな軽戦士捕まえる檻になるんだよっ!!」
豪戦士の罠である。一度捕まえてしまえばこちらのモノと、槍を捨てて同時に打ち出される戦士の拳。しかし女はどこまでも尋常ではない。
「くく、コレは勉強になりもうし、たっっ!!」
「ぐぅっっ!!」
戦士の肉の継ぎ目を狙い定めて筋を斬り、僅かに弛緩した所で離脱するや、同時に手から離した剣を中空にてつかみ取り、逆袈裟に一閃。流れるように門番の右脚を蹴り払って姿勢を崩し、返す刀でその身を振り抜こうとしたまさにその時。
その変化は訪れた。
・
(始まりはステラが【高速思考パス】を初めて飛ばしてきた時だった。)
(オレは何かと裏目に出やすい体質だ。ワカバん時の事もあったからこういういい事があった後は、なんかあるかもってアイツが前もって忠告してくれたんだ。)
(そっからオレらはステータスと、出来る事を確認し合った。)
《【信仰の供 物】を虹の橋設定》、コネクト/ファルケ【高貴なる血筋Ⅲ】》
(それはワカバのスキル、【エレメンタルセンス】をオレが借りた時の事だ。全てのモンに宿ってるっていう精霊が見えるようになったオレは、石や土の精霊達から何かとなつかれちまってよ。そんな時な、ステータスを見ると。)
(不思議な事に、オレは精霊術ってモンが使えるようになってたんだ。)
《血統の純化を開始、軌道調整中。成功。進化認証開始、成功。
女神より一時的に神々の王へとクラスチェンジ。入主 神威の人格変異開始。》
(ステラに聞くと神というものは自分の教義と属性が許すのならば、使用条件さえ整えたらクラスに囚われる事なく魔術が使えるようになるらしいの。
それでその後もワタシはステラと一緒に【神々の供物】で共有化するべきスキルを探していたんだけど。その中で1つ、とても気になるスキルを見つけたのよ。)
【高貴なる血筋Ⅲ】:上級職を帝王系に進化可能になり、根源術が上級根源術へと書き換わる。
(神術ってのはね、その垣根では根源術という扱いになるらしいのよ。じゃあね。ワタシが、女神がコレを手に入れたらどうなるのでしょうね?)
《全神術が上級神術へと変更。ファルケより捧げられた血統により根源術の取得を開始、属性確認検索、終了。該当1件。根源:舞い飛ぶ者にして光属性【フォトンウィング】を虹教義で獲得。再定義。成功。【レインボードライブ】を取得。》
(ワタシの大本は女神として純化され、神術はより高みへと至るのよ。)
《入主 神威、貴方が貴方でいられる時間は少ない。急いで下さい、早く、疾く!》
(そうねステラ。それではコレより虹の橋は教義の執行を始めます。)
・
気配が変わった。
その瞬間、女神の気配があまりにも大きく変化した。
ゾクリと、そこにいた2人は動きを止める。
あまりの事に戦いを忘れ、2人して振り向くと。
そこで女神は変貌していた。
「お待たせ致しましたわ。それでは教義を執行します。」
七条の光を纏わせる女神の姿は神威に満ちていて。誰もが膝まつきたくなるものであり。その美はもはや見るものの魂をも蕩かせる兵器足りうる。万物に宿る精霊が、万象を編み上げる魔素が。女神の言葉に従うべくそれぞれに準備を始める。
「女神様……。」
「っ、はは。コレほどですか主殿。」
あまりの神威に膝をつく門番と、期待に胸を高ぶらせた凶剣。
2人の在り方は真逆であった。次の瞬間、跳ね跳ぶように大地を蹴った女を、女神の権能は許さない。
【我が根源よ、境界となりて彼らを分かて】
「ぐぅ、なっ!?」
跳んだ先に壁が出来ていた。不可視の、強固な壁だった。
即座にそれに対応すべく奔る女に女神は続けて謡う。
【我が根源よ、虹彩となりて天より注げ】
《対象コントロール開始。ツルギ以外の目標を対象から外します。》
その瞬間。7色の無数の光が、雨となってその地へと降り注いだ。1つ1つが破壊の魔力を帯びた絶え間なく注ぐ断罪の光。その雨が、全周囲から女神の敵へと折れ曲がり、襲いかかる。しかし女とて只者ではない。
「しぃっ!!」
全ての回避が無理な事を悟ると、その光の薄い場所を選んで剣を盾にし駆け抜く。どうにかこれを凌いでみせた。女神との距離はもはや5m弱、目と鼻の先の筈だ。
「これならっ!!」
地獄の蝶が女神を襲うべく加速する。振り下ろされる片刃が鋭く輝く。
しかし女神はそこになく。
【我が根源よ、虹となりて空へと奔れ】
《コネクト・ツルギ【地獄蝶々】+ウル【疾風の一撃】。ガウリィより【運動Ⅲ】にて制御試行っ、目標の微量調整、失敗っ。》
(えっ、失敗してしまったのっ。この場面で?)
《肯定、言葉もありません……。》
彼女より遠く離れた位置に立つ女神と、女神が跳んだことで出来た熱量を帯びた虹の橋。そして綺麗に2つに分かたれた女の、自分自身たる片刃の剣の姿があった。
光を超え、全てを置き去りにする女神の神技によって分かたれたその姿が。
(あ、アレは。良くありませんわね。調和的にすごく良くない気が致します。)
《なんてこった! やはり初見での試行は無理がありましたねっ。》
「ははっ、これは見事。とても叶わぬ。まさに貴方のソレは、……神技だ。」
「もうこれで終わりです。それでいいでしょう?」
「ええ、もちろん。カカっ、ああ。楽し、かった……。やはり貴方……は、主に……相応し……く。」
(おやめなない、満たされた涼やかな面で天に召されようとしないのっ。これだけ荒ぶったのですから、そこは今際の際まで全意をもって抗って頂かないとっ!)
《入主 神威。早期に彼女の本体にお触れ下さい。消滅は避けねば。》
(天意の如く、あれかしですわぁっ!)
女神は改めて女に近づくと、言の葉を1つ届ける。
「私に貴方を、剣と、その担い手たる貴方を象るあらゆるものを差し出しなさい。そうであるならば私は貴方を新しい在り方へと導いて見せましょう。貴方に荒ぶる者としての喜びだけでなく、この世には多くの喜びが溢れているという事を。その身へと伝えてみせます。
私と共にあるべき者よ。虹の橋は貴方を望みます。
これより心よりの喜びを識るであろう貴方が、虹の橋の求めるモノなのです。」
(……ねぇ私と共に往く者よ。さきほどから私の言の葉が神妙かつ華やかな響きを帯びているように感じているのですが、何か思い当たる節はございませんか?)
《……純化の弊害ですね。教義の器として完成したことによって優美属性が貴方の言葉を書き換えているのでしょう。ああ貴方の翻訳はコレ由来なのかもです。》
(それが始めに移ろいゆくべき事柄なのかしらっ?)
《最初に変わるべきこと、でよいんですか? 入主 神威。とにかく早く状況を解決しましょう。このまま教義に浸食され続ければ貴方はもはや、貴方ではなくなってしまうでしょうから。》
「お心の、まま……に。」
嵐のような女は最後の力を振り絞って女神の前へとひざまずき、女神へと女自身である剣を差し出す。折れてしまった自身のその身を。
そして女は変えられた。いや取り戻した。
・
それは女がかつて失った姿であった。
身の丈2mを超える余りに長いその刀身に、刃筋を通さねば切れ味を大きく損なう剃刀仕立て。うねり焔の刃紋を表裏にて一致させる千子刃の緻密さは見るもの全ての背筋を凍らせる美しさを秘めていた。
それこそはかつて女が強さと共に捨てた姿。
その刀身の長大さ、刃の余りの鋭さからそれを使える者がおらず世の流れに従って万人に使える強さを与えられる前の一振り。
近代において、ヤマトに神話の怪物が蘇ったその時に、ある英傑の為に打たれた、とある刀自の手による最高傑作。以来その刀自は多くの名士達に奉納以外の太刀も打てと命じられたが尽くそれを断る理由となった史上の逸品。
真の技を持つ英傑でなくば扱えぬその繊細な刀身は余りにも使い手を選びすぎた。
振るわば神すら切り裂けど、英傑を選び抜く選定の一太刀。
銘を乱れ焔薄羽造り・千子村正大太刀拵え。
同じく大蛇を斬ったという異界の神の逸話から付けられたまたの名を。
羽々斬丸というらしい。
・
(……我が愛しき剣は何故にこのような在り方を得ているのでしょう?)
《一度自身を破壊されたことで変化時に元々の姿を取り戻した、のでしょうね。》
「ふふっ、まさかこの様な有り様を取り戻すことが出来ようとは。我が主には驚かされてばかりですね。」
女はもはや嵐でも凶剣でもなかった。刃に合わせて己を変えられた彼女は、本来の在り方を取り戻したのだから。真の侍の、英傑の側に有り続けるという、その誇りを。もはや主君は定められていた。
「ヴィリスカムィ様。
改めて私は貴方に忠誠を誓います。主従として、そのお側に有り続ける事をお許し下さい。今はまだ貴方に遠く及ばぬこの身なれど、いずれこの身は貴方へ相応しい一刀へと至ります。これより貴方の誇り、在り方を傷つけぬよう精進を重ねていきましょう。御身の為に、私の為に。」
「それが貴方の望む在り方であるのですね。」
「御意にございます。それが私の喜びなれば。」
女神はただ微笑み、女の新しい在り方を受け入れた。
主と従はこれより正しく定まり、以来揺らぐことなし。
もはや勝負は決した。ならばあとは唯優しい笑顔のみが彼女らを包んだ。
(……万難を払うべく微笑みを浮かべ、淑女たる余裕を見せましょう。)
《とりあえず笑って誤魔化しましょうと。純化が深刻化してきていますね。早く街の破損と、先程の光景の心象操作をして全てを終わらせることにしましょう。》
(よしなに。惜しむこと無くあらゆる御業を尽くし最善をなしましょう。)
【我が根源よ、虹ととなりて全てを治せ】
《【神々の奇跡を】を再使用。定義は優美。この光景を見た第三者の認識を優しき夢であるように変更します。これで神々の王となることで増加した1回を含め奇跡の使用回数は消失しました。》
その時、大きな虹が辺りを包み込み、一連の戦闘で受けた傷を癒やしていく。石や木で出来ているのなら壊れてしまった建物も含めてだ。もしこの光景を見たものがいたならば、それは優しい夢の出来事として受け止められる。それが自然に感じられる程、それは美しく幻想的な光景だった。
それが女神のもたらした奇跡であった。
故にこの出来事は全て夢の中のお話だ。それを識るのはたったの4人。
呆然と奇跡を見上げる男がいた。男は改めて神とはたやすく人の世を壊せるだけの力を持っているのだという事を理解した。
在り方を取り戻した女がいた。ただの凶器である事を定められていた女は、かつての己を取り戻し、どこまでも英傑と共に歩む在り方を取り戻した。
そして女神とその相棒は。
《状況終了、【高貴なる血筋Ⅲ】の使用を停止。……ステラは貴方に確認します。貴方は誰ですか?》
(何言ってんだよステラ。私は、虹の橋を司る者。女神だよな?)
《違います。貴方は間違えている。貴方は入主 神威。女神になった少年だっ。女神ではあるが、それは本質ではないっ。第一貴方の一人称は私ではないっ!》
(あれそうだっけか。まぁ別にいいけ……、)
《絶対に違う!!
貴方は入主、入主 神威だっ。間違えるなよ私を相棒と呼ぶ人よ。貴方は誰だっ!!》
(......ああ、そっか。オレ、だよな。オレはそうだ。オレは神威だ。入主 神威なんだっ。)
《そう、それでいい。。どうかソレを忘れないで下さい。私の相棒は貴方なんだ。私の女神は貴方の方なんですよ。入主 神威。》
どうやら失っていたモノを取り戻したのは1人ではないようだ。
それを取り戻して話は終了。
そう綺麗に終わらないのが世の中というものらしい。
奇跡と見たモノ、見せたモノが談笑していた時の事、不意に1つムクリと、誰かが起き上がる。存在が強固なモノが奇跡の眠りから目醒めるならば、もう1人。
目醒めるべきものがこの場にはいる。
未だ酒に頭を焼かれて意識を朦朧とさせる彼女ファルケは、不機嫌そのものの顔で半身だけ身体を起こすと。
「うるさい馬鹿どもっ、夜中に騒ぐなっっ!!」
寝ぼけ眼で素早く懐から銃を取り出し、慣れた手付きでそれを発砲。
音は1つ。放たれた弾丸は3つ。
言うが早いが非死性の氷結の魔弾がバカどものこめかみへと突き刺さった。
「あうんっ!!」
「のぉっ!!」
「オレまでっ!!」
それだけやると満足そうにさっさと横になる鷹の娘。
残されたのは、その身を凍らされた被害者のみ。
(うぁぁ、身体動かないから解除できないじゃんコレぇっ!!)
(ツルギ:ははっ、コレは手厳しい。さては鷹殿、コレは常習犯ですね?)
(ガウリィ:なんか理不尽なんだよなぁ、この扱い。)
しばらく文字通り頭を冷やす結果になったという。
ここにて主従の残念な言い争いから始まった命がけの勝負は終わりを遂げた。
結果、両者痛み分けっ!!
結論は唯1つ。夜中に眠れる獅子を起こした奴が悪いのだっ!!
《まぁいきなり銃弾打ち付けるのもどうかと思いますけどね。》
次の日の朝。
酒と戦闘。
その一連の事件のお陰で女神以外がダウンしていた事は言うまでもなかった。
NEXTSTORY
「オレ、アレになります!」
閲覧ありがとうございます。
長くなってしまいました。女神がインフレしているというお話でした。色々頑張れな神威君。覚醒状態はすごく強くなるのですが、色々自分が抜け落ちる使用のようです。ステラさんはいい顔しません。
あ、オチがひどいと思いました?
レベル差・ステータス差のある世界ですから、そういう事もあるよって話ですね。(白目)
おお、200pt突破してますねぇ。
改めてましてまた感謝回、やらせて頂きます。前回の感謝回、実はハーメルンの方と同じモノにしてしまったんですが、今回は何かしら別のモノで考えております。エ◯ス、それ以外問わず、何か要望がございましたら感想欄にご記入下さると助かりますm(_ _)m
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