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39) 第15話裏 あまねく全てを束ねる光(5)

15話大進行ラスト。

【義賊視点】


そして不意に。俺の肩へと女神の掌が置かれ、そして告げられたのだ。


「必要ないわ。」


それは否定の言葉だった。


ああ、咎人は今裁かれた。

やはり俺は。

許されるべきモノではない。


母を救おうと世界中で暴れまわった男は、その実。

己でその救済を無下に放り投げていたのだ。


当然の結果に。思わず強く、強く目をつぶる。


しかし女神の言葉はそれで終わりではなかった。


「貴方の母親を救うのに理由なんていらないもの。」

「っっ!?」


思わず顔を上げ女神の姿を凝視した。

その顔には深い慈愛と、涙の粒が浮かんでいた。


「……色々辛い思いをしてきたのよね。

そんな貴方に優しくしてくれた、素敵な方、…なのでしょう。

だったらね。そんな人が不幸になってしまうなんて世の在り方は嘘だもの。だから私がこの手で変えてみせるわ。この世の全てを美しく変えてしまう手でもって。」


ああ、ああっ!!

そんな事があっていいのかっ。

貴方は咎人でさえ許し、美しい有り様にお変えになられたというのか?


こんなモノの為に涙を浮かべて、本気で慈しんで下さるというのか。この身の不幸を間違いであると、幸せを望んで下さるというのかっ!


「だって私は、誰もが。全ての者が笑って暮らせる世界を望むのですから」

「……ああ、……女神よ。」


ああ、この御方こそが女神。

人々の喜びを願い、皆の幸せの為にお力をふるう御方。世界の全ての不幸な在り方を変える為に現れた、虹を讃える真実の神。


儀礼以外で神になど祈りを捧げたことのない俺が、その時自然と、ソレを捧げた。この身は既に女神によって変えられていた。

ならばもう。


その生き方などたった1つだ。


「それが。それが、貴方の望みなのですか?」

「ええ。」


答えのわかりきった言葉を投げた。

当然に、優しい笑顔で女神は答える。

さぁ、誓いの時だ。


「ならば俺は、私はこれより貴方の言葉に従おう。

貴方の望むモノを、貴方に与えられたこの姿で必ず実現してみせる。」


「我が根源よ、光輝(フォトン)となりて我が身(ウイング)を空へっ!!」


口早に女神へ己の決意を言い切ると、私は父を殺して以来使うことのなかった根源術を開放する。とたん。我が背中から魔素で固めた光の翼が生えてきた。

女神と同じ在り方を選んだ私にはもう名を、姿を偽ることなど許されない。


「こ、光翼の、根源術ッ!!」

「っこ、皇族にのみ赦された尊き血筋の象徴魔術だってっっ!?」

「あ、ありえねぇっ。マスカレイドがなんで光の翼を纏うってんだっ!!」

「な、なんて綺麗……。」


ざわめきが大きくなる。

立ち上がり、民人達に振り返りながら。

私は被っていた陶磁の仮面を地面に叩きつけ、大声でもって宣誓を果たす。


偽りの仮面が砕けた音が、その場のざわめきを支配する。


「皆のもの、聞けっ!!

今ここで快賊義侠を名乗る痴れ者は死にたえたっ。仮面でもって自らを偽り続けた愚かな男は消え果てたっ!!」


翼を広げ、皆の視線を集める。

女神の後光を受けた純白の翼が今、まるで女神からの祝福を得たかのように虹彩を帯びた。その姿が、なによりも誇らしい。


「ここにいるのは女神によって新たに美しい在り方を定められた1人の女っ。女神によって一度は捨てた誇りを取り戻したかつては男だったモノだっ!!

女神の望む世界を創る為、私はあえてこの名を名乗るっ。


ファルケシアス・フォン・リーブライオスっ!!」


「っこ、光輝の翼!」

「知勇名高き第三王子。舞い翔ぶ鷹のファルケシアス殿下っっ!?」

「前代皇帝殿下と共に死んだって話じゃなかったのかっっ!!」

「建国帝の生まれ変わりと謳われた誉れ高き天秤の王子っ!?」

「か、快賊義侠は、天秤の王子だったってのかよっ!!」


一度は捨てた在り方。一度は捨てた誇り。

そしてその時に捨てた名前を、私は変わることで取り戻した。

もはや変わらぬ、美しき在り方を与えられて。


「我が母、治世たる天秤の名を継ぎて、皇族の証たる鷹の名を頂く者の名だっ!!

皇帝たる父を殺し、世を騒がせた大悪党は今宣言するっ。

私はもう逃げないっ。必ず女神の、虹たる女神の望みを叶えてみせるとっ!!」


この名を取り戻すことでこの身に流れる高貴の血が、魔法陣の影響を受けた彼らの心を惑わせてしまうかもしれない。

だかそれでいい。


「今私の天秤は調和を望む大いなる女神へと捧げられたっ!!

天秤はここに定まったっ。

私はこれより虹を求め続ける求道者なり。争いなき雨上がりの世界を望む者だっ! 果てなき道を往く者だっっ!!


だが恐れなど、迷いなど欠片もないっっ!!」


虹の女神の望みは果てしなく険しい頂きにある。手段など問うていてはとても届かない。私はもう貴族だった頃の、甘さだけの優男ではない。

だが海賊だった頃の、己の為だけに生きる獣でもない。


女神が悪党だった私の為に泣いてくれた時、俺の生き様すら彼女が認めた時。私はそのどちらもが己であると、そう気づけたのだから。

どちらも使って目的の為に飛び続ける。この思いは、この決意だけは揺らがない。


なぜなら。


「なぜなら、天秤は偉大なる虹と調和の女神と共にっ。

全ての者が笑いあえる世界を望む、我等と共に生きる女神と共にあるのだからっっ!!」


民人達が私の言葉に声を張り上げて喜びを伝える。

もちろん私もありったけの叫びでもってこの喜びを世界に響かせた。

ああ見ているか神々よ、愚かな貴族よ。


人々(我々)は得たぞ。神を得た。貴様らのような偽りの存在ではない。真に世の在り方を憂う、真の女神の守護を得たっ。


私は必ず貴様らを、この世界から駆逐する、駆逐してみせる。


女神の在り方に不要なモノは、この私が地べたへ叩き落とそう。

優しすぎる女神にできぬ悪行は、俺が背負って飛べばいい。虹を背負う彼女と共にあり続ける事は、できぬかもしれぬ。悪徳は私を女神から遠ざけるだろう。


だがそれでいい。


はるか高き優しき光を目指し、飛び続けることができれば、それでいい。

なぜなら私は、虹へと向かい(遥か高みを)舞い飛ぶモノ(目指すモノ)なのだから。



【衛兵長】


そこには不思議な光景が広がっていた。


守る者が、民草達が。造る者が、造られた者が。海賊だった高貴な者が。なりより虹たる女神様が。本来交わらざる、あらゆる者達が女神の元に1つになって、皆で喜びを讃えている。


騒ぎに気づき何事かとやってきた者も。虹の光の美しさに魅入られていつのまにかその輪の中に。気付けば街の市民区の者たちみんなが集まって、女神様の元で馬鹿騒ぎ。楽しそうに笑うそのお姿を見て、さらに皆が喜びを深める。


あの女神様が現れてそれほど時がたったわけじゃない。

ほんの2、3時間といった所だ。それなのに、もうこれほどに街は変わった。


不意に、1人の男が気安い口調で女神様に声をかけた。


当然だ。この場の誰もが彼女を慕っていたが、誰もが古い友人のように砕けた口調で接しているのだから。女神様もそれをどこか嬉しそうに微笑んでいるのだ。


「なぁ嬢ちゃん。

そういや俺らはアンタの名前をまだ知らねぇ。なぁ、女神様よ。きっとここにいるみんなが今、アンタの名前を知りたがってるんだぜ。ひとつ俺らにその名前を聞かせちゃくれねぇか。」


「ええ、もちろん。虹の橋の(ヴィリス)(カムィ)。それがワタシの名前なの。」


「……ああっっ!

そりゃあいいっ。ふっ、ははっ。そっかぁ、そうだよなぁっ!!」


とたんにその場にいる者全員が、大声を上げて笑い出す。

ああ、そうだろう。その気持ちはよく分かる。今なら私にも、よく分かった。


「なによ、そんなにおかしな名前かしら?」


少し不満そうな顔をしている女神様の前で、みなが肩を叩いてなお笑いあった。


「いえ、そうではありません。」

「ええ。きっと違います。」


この場にいる全員があまりに貴方の名前が出来すぎていて、もう笑うしかなかったのです。ああ、虹の橋の(ヴィリス)(カムィ)。全ての色を束ねて蒼空にかかる快晴の象徴。それはまさしく貴方の事だ。


「民達は皆、貴方の名前が余りに貴方らしかったので皆嬉しさを堪えきれなかったのでしょう。」

「我等とてそうです。許されるならば今ここで皆と共に笑いあい、貴方と共にいられる事を喜びあいたい。」


女神さまは我等がそう伝えると少しだけ周りの光景を見つめた後に、自身も笑顔を零し始めた。ああ、そうだとも。我等も職務など忘れて喜びを分かちあいたい。


「へぇ、ならさ。笑えばいいじゃん。みんな一緒に。」


あっさりと、漏らした言葉にそう言って下さる女神様のお付きの方の言葉に、つい門番と共に顔を見合わせて笑い合う。確かにもう、ここで暴れるような者は出ないだろう。一番の大悪党が、その輪の中で楽しそうに笑うのだから。


「そうだ。別にこの場でそれを押し殺すことはない。そんなことこの場の誰も望むまい。それよりここに大罪人がいるのだが、仕事はいいのか衛兵殿?」


その本人が、突かれれば自分が困るようなことを聞いてくる。

だから肩を竦めていってやるのだ。


「ファルケシアス殿下もマスカレイドも、そのどちらも我等は男性であると聞いています。決して貴方のような見目麗しい女性ではない。違いますか?」

「ファルケシアスなんて女性、いるわけありませんよお嬢さん。だってそりゃそもそも男性名ですからね?」


「くくっ、なるほど理に叶っている。なら今の私はさしずめファルケシアといった所だな。ふむ、悪くない。美しい響きだ。」


たまらず私たちは笑い合う。女神の下で、笑い合う。


市民と貴族、悪党と衛兵、造る者と造られた者が。虹の元で笑い合っていた。

我々の常識は、世界はすでに女神によって変えられていた。


「ああガウリィ・レオルド。お前の言うことは本当だった……。お前の言う通り、これがこの街の、いや世界の分岐点だ。


世界が変わるぞ。女神と、私達が変えるんだ。我々は今、運命と出会っている。

輝かしい、世界の未来と。」


女神は全ての色を束ね、唯その道を指し示すのみ。

その時私たちは嵐の時代に終わりを告げる、優しい光を見るだろう。

晴れ上がった青空に、なにより美しくかかる虹の橋の輝きを。


あまねく全てを束ねる光を。


閲覧ありがとうございます。

やっと15話裏が終了っ!!

後は落ちを書くだけや。心が軽いぜ♪


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