表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/61

14) 第7話 増える狼とオレタチは(1)

始めから大惨事。そんな展開がわりと好きです。


とんでもねぇ。

突然オレの目の前で剣から美女へと姿を変えたその女の暴れっぷりに思わずオレは呆然としちまった。


空色の着物に紺色の袴を履いた、黒髪のポニーテールが似合うツリ目の勝ち気そうなその女性は、獰猛な微笑みを浮かべたまま現れると共に一匹の狼を斬り捨てた。


返す刀でもう一匹、別の狼を両断してみせると一転。彼女たちを振り切ってこちらに迫ろうとしていた狼の背に、自分の持ってる剣を投げつけ、息の根を止め。

同時に彼女へと向かってきた狼を、鎧さんが殴りつけて、それでしまいだ。


なんか心配したオレがバカみたいに思える位。

目の前の狼たちを彼女たちはあっさり片付けちまいやがった。


「はは、なんだよ。全然問題ないじゃん。」


頼もしすぎて自信失くすわ。

でもなこん時。

そんなお花畑なこと考えてる余裕はねぇってことを、俺はすぐに思い知る。


倒したハズの狼達が、まるで仲間を呼び寄せたかのように。オレ達の周囲は蒼い狼たちで覆われて、瞬く間にその数を増やしていったんだ。

いつまにか、オレ達は数えきれない位の数の蒼い狼達に囲まれてやがった。


奴らはオレ達から距離を置き、まるでなにかを待つかのように仕掛けてこない。

ただオレ達を取り囲み、その動きを見張るように睨みつけて来やがる。


「な、なんでだっっっ!?」

蒼狼(ブルーウルフ)は群体生物。グループでその意識と情報、そして命さえ共有しています。グループが全滅しないかぎり個体が死んでも傷が治りいつかは復活する理不尽生物(インチキ生物)ですの。

それが彼らが弱層中位程の力で中層域に棲息できる理由ですわ。

彼らは常に種で狩りをします。


幼体以外の強力な個体が出てくれば今のワタクシ達に勝ち目は薄いでしょうねぇ。もう撤退は、……難しそうですが。」


はぁ、なんだそりゃ?

じゃあコイツラオレらを取り囲んで、そいつが来るまで時間稼ごうって腹かよっ?

ま、ずい。まずい、まずい、まずい。


ぜ、絶対絶命じゃねぇかっっ!!


「なぁに、問題ありますまい。所詮はワンコロ。

拙者が主さまの刃として全て斬り伏せてしまえばよろしかろうて。

一言貴方がお命じになれば、この身を一振りの刃と化して尽くを食い破っておみせしましょう。」


自信漫々に、まるで散歩にでもいくかのような気安さで言いのける剣さん。彼女がスゲェのは認めるが、さすがにあの数相手にソレが出来るとも思えねぇ。どうやらオレと同じことを鎧さんも考えたらしく、さすがに彼女へと突っ込みをいれる。


だが彼女は、関係ないとばかりに、ただただ嗤ってそれに答えた。


「さすがに厳しいかとぉ。

先程の動きから察するに貴方1人ではいずれすり潰されましょう?」

「ああ、別に。無傷で勝とうなど思わんよ。

最後に立って、全てを成せば世はこともなし。

そう思わんか、鎧殿?」


まるで自分のことなんて勘定になく、それは唯勝利の為の道具だと。彼女は嗤っていってのけた。まともじゃねぇなこのヒト。

背筋につぃぃっと冷てぇモンが奔りやがる。


「まるで狂犬(・・)のようなお人ですわねぇ……。」

「かか、凶剣(・・)などとあまり褒めてくれますな?

さてさて主どの。どうかこの身に命令を。」


オレが喉を1つ鳴らし、剣さんの出す空気に圧倒されかけた時。

他のみんながオレらに近づき声をかけてきた。


「カミサマっっ!!」「カミサマ。」

「ご主人サマごめん。

2人が一緒に戦いたいって聞かなくてさ。あ、ついでにアタシも?」

「ワタシも戦うっっ!!」「ワタシも守る。」


おいおいおいおい、さすがにそりゃあねぇだろう!


「お、オメェラ、あ、アブねぇんだぞっっ、し、死ぬかもしれねぇんだっっ!!」

「ワタシ戦えるよっっ!!」「ワタシ守れるよ。」

「カミサマもいっしょっっ!!」「カミサマも同じ。」

「「ワタシたちカゾクは、ずっと一緒ってカミサマいったっっ!!」」

「う、くぅ。」


そう言われるとオレはなんも言えなくなる。

オレだって戦えるかどうか怪しくても、意地だけで無理いっちまってる。

コイツラの言いてぇことが分かりすぎて、つい言葉が詰まっちまったんだ。


「もう無理じゃん? これもうみんなで頑張るしかなくない?」

「ははは、これはまたずいぶんといい教育をしておられるっ!!

末が楽しみな少女達ですなぁ?」

「あらあら全く。どなたさまも困ったものですぅ。」


あっけらかんと続けられた彼女たちの言葉に、言い返せなくて。

俺はもう決心するしかなかった。


「くっそぉっっ、しゃあねぇっっこうなりゃミンナでヤんぞっっ!!

力ぁ合わせてぜってぇ生きてこっから出るぞっっ!!」

「御意に。」

「この命に変えましても。」

「頑張るっっ!!」「頑張る。」

「にゃん♪」


こうしてオレ達とブルーウルフとの戦いが始まった。


閲覧ありがとうございます。


蒼い狼についてのアレコレ。

蒼い狼は集合意識生命体。個でなく群で生きる生き物。

グループでその意識を共有している為、広範囲の集団索敵からの一斉飽和攻撃や上位個体による殲滅が狩りのスタイル。中層域で相手にしたくないモンスター№1に輝くお方。


対処法は3つ。逃げるか、集団ごと殲滅し尽くすか、出会ったモノ全ての意識を刈り取るか。


しかし本来蒼い狼自体が賢い為、手を出さない限り人間を襲ってこない。

なので中層域で出会ってもしっかりと目をあわせ、通り過ぎるのを待てば問題ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ