12) 第6話 オレと狼の初めての戦闘
反応できねぇっっ!!
気づいた時にはもうオセぇっっ!!
そんとき一番木の側にいた、ワカバ目掛けてナンカが飛びかかってくるっ!!
狼っ!?
させっかっっっ!!
オレが必死にワカバの腕ぇ引っ張って、狼から逸らそうとするよりも速く。
「させませんわよっ!」
ぎゃいんっっっ!!
誰よりも頼もしい女が動いたっ。
今にも飛びかかろうとしていた狼の横っ面に、見事に一発拳をぶちこむっ。
だが、その一撃じゃ狼は諦めねぇ。
どころか、ソイツだけじゃねぇ。
オレ達ぁ知らん間に狼の群れに囲まれていたらしいっ!!
…4、5。……5匹もいやがるぞっ。
ドイツもこいつも蒼い毛並みで、痩せた身体に黒い湯気みてぇなのをマトイながら口からヨダレぇ垂らしてやがる。一発でなんかまともじゃねぇってのがわからぁ。
オレ達を庇うように鎧さんが前に出るが、いかんせん相手の数が多すぎる。
ここはオレも前にでんとな。やれるかどうかは分からんが女子どもを危険に晒してはいそうですかと納得出来るタチじゃねぇ。
オレがそう思ってワカバとコイシを小悪魔ちゃんに預け、動こうとした時だ。
「いけませんわぁ皆さん。こいつらは蒼狼の幼体、本来は中層域にいる筈の群体生物です。こんな浅い森に出てくるなんてぇ。
しかも魔毒に侵されてぇ、正気を失っています。
皆さんどうかぁここはワタクシにまかせて、撤退を。
ともすれば全滅もありえますよぉ。」
いきなり鎧さんはテメェを見捨てていけなんてふざけたことを言い出したっ!
狼たちをさばきながら、さも当たり前と言わんばかりに。
ワカバとコイシが不満そうだ。そりゃ当然。オレだってそうだっ!
「ふ、ざけんなぁっっ!!
あんたぁ置いて引き下がれるかよっっ!!!」
「あらあら、ふふ。ありがとうございます。
でもぉですねぇ?」
彼女の軽い言葉と共に。
鎧さんの腕に狼の一匹が噛みつきやがったっ!!
だが、全く血が出てねぇっ、何でだ!?
「ワタクシはヨロイビト、この身はこの通り鎧のように硬く、重くなります。彼らの牙くらいならワタクシの肌を通りませんよ?
そして。」
腕にくっついた状態の狼の腹に空いた左腕で一撃っ!!
それで狼は腕から離れ、糸が切れたみてぇに崩れ落ちた。
「硬くて重いということは、それだけで武器になりえます。
どうか、ご決断を。
ワタクシ死ぬ気なんてありませんわよぉ?」
「鎧ッチ、本気だよ。どうすんのご主人サマ?」
「カミサマっっ!!」「カミサマ。」
迷ってる暇なんざねぇ。
オレは素人、相手は格上、最悪だっ。
そりゃあコイツラ連れて引き下がんのがきっと最善なんだろうがさっ!!
でも正直そりゃあ納得できねぇっ。
出来るわけがねぇ!!
「く、うォおおおおおおっっ!!」
叫んで飛び出すっ!!
小悪魔ちゃんに視線を1つ、仕方ねぇって顔してやがる。
今にも泣き出しそうだった2人の目に、輝きが増していく。
どうやらここにゃあバカしかいねぇらしいっっ!!
言うが早いがオレは前へと飛び出して、鎧サンの近くにいた狼にそのまま全体重を乗せた蹴りを打ち込んだっっ!!
「あ、貴方様はッ!」
「理屈はわかるぜ鎧さん。
でもどうしても理解はできねぇ、のみこめねぇっっ!!
仲間ぁ置いて逃げるなんざ、オレには到底、できゃしねぇんだっっ!!
それにな。戦う方法なら、ここにあらぁっっ!!」
オレは覚悟決めて腰にぶら下げた剣を抜き、迫りくる狼を切り払おうとする。そん時オレは完全に頭に血がノボッてて。
テメェの力のことなんざコレッポチも覚えていやがらなかったんだ。
もちろん、狼は止まってくれねぇっっ!!
だからまぁ、当然。こうなる。
いつもの軽いポンという音と、煙が上り。
狼に飛びつかれたオレは。
「やれやれ主どの。拙者だけいつまでも姿を与えて下さらぬものだから、内心少しヒヤヒヤしておりましたぞ。」
オレの剣だった、サムライみてぇなカッコした女に助けられた。
ソイツは軽口を叩きながら何喰わぬ顔で狼を切り捨てて見せると。
「しかしまぁ確かに。拙者が姿を与えられるなら、こういう場面こそふさわしい。それでは主どの。御身の敵、尽く。凶器が払って見せましょう。」
ひどく獰猛な笑顔1つで、この状況を歓迎した。
NEXTSTORY
「増えるアレとオレたちは」
閲覧ありがとうございます。
今回タイトル間違った感が否めないね……。
ブシドーちゃん関係でつければよかったわぁ。




