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  作者: 夏目治
霧雨
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霧雨

 彼女とバスを一緒に乗っての時、窓から街灯の光の届く所だけに白く光って残余うの水滴の注ぐがほのかに見え。

「そういえば、美桜はとうこで住んているの」

「えっ、私かい?今はホテルで住んているはよ、たで、このまちに私は誰も知らないし、仕方ないよ。」

「ホテル、ですか。えっ、家もないでなんの話?君の家族は?」

「ないよ、私には家族や友達がない、そもそも私は人間ですか?私は本物かい?」

 彼女の瞳孔にやり切りないの寂しさを感じる、蝋燭ろうそくの灯が、フッと吹き消されたような寂しい心持ち。

「人間ですよ、美桜さんは必ず生きてるの人間ですよ、だて美桜さんは美桜さんですよ、生きっているの美桜さん。」

その時、僕はこう信じてる、僕と会話しているのは本物の美桜さん、他の人ではない、僕の眼の前のはずっと憧れっているの美桜さんです。

「そうか、ありがとうね、私のことを信じてくれで。そうだ、美桜で呼んでもいいよ~」

 彼女のは話を訊く、我ながら面白いくらい困った顔、彼女がギラギラと笑ってる。

「美...美桜、これでいいですよね」

「はい、よろし~」

 窓の外の風景は行きとは逆の順序で移っていった、山の迫った海岸線に沿って、特急列車が大きなカーブを描いた時。空に浮かんだ月が見えた、月はそれから、カーブにあわせて窓の外をゆっくりと移動して、やがて視野から消えていった。目に映る風景は、瞬く間にうしろへ去っていく、海の上に月光が反射している、銀色な海浜は鏡みたいなキラキラしてる、石油を流したような光彩が、一面に浮いている。

「ね、清志、私のこと、会いたいの?本音が聞きたい。」

「はっ、はい、美桜のことが会いたい、たで、君は僕にとて唯一の友たちだから、いいえ、それでも足りない、僕は君を守りたい、抱きしめたい...もっと君の側にいてほしい、もっと君とこの世界のを」

 湖辺こへんで美桜と会えだ時の気持ち、これこそ僕の本音、本物の気持ち、彼女が好き。

「でも、あの時、なんでその人たちがあなたはも死んじゃだと言ってだ、それになんでその後君が町から立ち消えるかい?」

「ううん、私はも死じゃだわよ、彼らの話は間違いではないよ、私は何年前にも亡くなれますた、母が私を殺しだ。」

「えっ、じゃ今の上野美桜は何、人間ではないかしら、今僕の隣で座るのは誰?君は...」

「うんん、私もわからないよ、死んじゃだのはちなのに、でも清志くんと会いたは本当に嬉しい、これは神様の指示かもしれない。」

「えっ、しかし美桜.....」

「なぁに?清志が私は人間のことを信じてるですよね、だてさき、清志が言った、私を守りたいて、本音ですよね?」

 彼女の眼を見る、無邪気な、見ているこちらの胸に日が射すような、あどけない笑みを浮かべの目、彼女は僕のことを信じてる。それだから、僕も彼女のことを信じなければならない。

「そう、本音ですよ、僕は君のことずっと信じてるですよ、昔も、これからも 必ず君のことを守る。」

「そうっ、ありがとうね、清志。」

 彼女の唇は静かに合わさり、頬から力が消えた。やや吊り上がった眉は、鳥が羽根を休めるように平らになった。

 バスが家近くの公園で停まります、それは僕と美桜初めて会うの場所。美桜がブラツコを撫でってる、相変わらずの風景、すでに日は落ち、闇が海と山の境を消している。もう夕焼けは最後の一滴を絞りだして、町の四隅しぐうは暗く沈み、夜が香りたっていた、薄い夕闇のなかで商店のともりも淡い。夜の気の所為かな、周囲の木が大きくに見えるそう、木の影が伸し掛かってくるの気がする。

「じゃ、美桜今夜はどうするかい?新たしいホテルを探すの?」

「ううん、どうするのかしら、お金もないし、この街で知り合いもないし、もし誰かが部屋を提供するのはいいな~」

 美桜は両顎りょうあごがやや張って来て、舌を掴むときのような狡猾こうかつな相を現わして来た。

「さぁぁ、どうするのかしら、私を連れって帰ってくれるの人は私と同じベッドで寝っでもいいわよ~」

 彼女は嬌然きょうぜんと笑ってる、少しを開いた唇と、エロチックな視線とが、僕へ射るように圧迫する。

 いいえ、僕はそうな人ではない、僕は紳士だ、堂々としてはいいだ、僕は何のエロの考えもない、別に彼女と一緒に寝たい、こういう変の考えは一切ない。そう、僕は紳士だ、変態ではない、正々堂々としてもなんの問題もない。

「じゃもしいいければ、一緒に僕の家に戻るかい?」

「いいわよ、じゃあお邪魔しまし~」

 初めで女の子を家に連れって帰ってくれる、心臓がドキドキする、耳にドラムみたいな重い響きを伝える声、僕はいさなのよな長い呼吸こきゅうを吐く、空気を思いっきり吸い込むと体の中の空間が少しで膨らんだ気がした。「ちょうど緊張するね」

「えぇぇぇ、意外な、清志の部屋は意外とキレイね。」

「えっ、そうですか、別にキレイだと思うないけど。」

「うわぁぁぁ、フワフワしてる、あなたのベッド、気持ちいいな~」

  彼女は僕のベッドでゴロゴロダラダラながら、幸せそうな顔が出る。

「ほっら、僕のベッドから離れなさい、今夜あなたは隣の部屋で寝る、あの部屋は昔お母さんの部屋だけど、今は誰もいないから。」

「そうですか、えぇぇぇ、わたしと一緒に寝されない?」

「バカのこと言わないでよ、そうなわけないだろ!!!」

「はいはい、わかりました~そういえば、清志の両親はどこですか?なんで今はここにいないの?」

「僕のおやじとお母さんはも離婚してだ、家には僕一人だげ、一人で暮らすの。」

「あっ、ごめん、こうゆうことは思はなっかた。清志、ごめんね」

「別に、いいよ、も慣れてるから。」昔から、学校のクラスメートや隣に住ってるの婆さんもよくそう言って、「君、かわいそう、小さいから両親はけんかばっかり、まさか最後は別々愛人あいじんと駆け落ち。あのさ、君で隠し子よね、そうじゃないと、なんて君を遺棄するの?」

「清志っ。本当にいいの?私はいるよ、ここにいるよ」

  彼女は僕を優しく抱いた、深い海の優しさ、スポンジに詰まっているように、絹糸のような髪が僕を触ってるみたい。

 気持ちいい、なんか母さんの感じがある、懐かしい、この温かいさはも何年ぶりかしら。まあ、もういいじゃんない、この子があれば、他に探し物はないよ。

  部屋の雰囲気が徐々曖昧になる、窓外のナイトホークの鳴き声がまるで僕たちを囲まれたのように。

「キスする?」

  彼女は僕の顔を見って、蜜柑色みかんいろの唇が目の前で上下に動く、プリンのように柔らかい。触れたい、その唇を、でもダメだ、そうじゃいけない。

「からかわないで、もう。」

「テレレ、冗談冗談。さて、食べにいきますか?それとも家で料理するか?こう見えて、私かなり料理が得意から、試しても?」

「テレレじゃないよ、本当に。近くのレストランにいきましょう、すごく美味しいうどん屋が知っていますよ、食べましょう?」

「わかった、それにしよ。」

  そのうどん屋さんは家に近くのゲーセンの隣、小さいく古いの木造建築。中に入ると、人が意外と少ない。

「失礼しました、二人でお願いします。」

「はいよ、 坊ちゃんか、はいはい、こっちで座って、今日も相変わらず?」

「あっ、はい、お願いします。」

「はいよ、じゃこっちのお嬢ちゃんは?」

「えっと、私は彼のと同じでいい。」

「はいよ、ちょっと待ってね。」

  壁には絵が掛かっています、富嶽ふがく三十六景です、席の上の神奈川沖浪裏はこのうどん屋さん一番好みの絵だ、凶暴なまでに高く激しく渦巻く波濤と、波に揉まれる三つの舟、それらを目の前にしつつ、うねる波間から遥かかなたにある富士の山を垣間見るという、まるで僕のように、流れに乗る、けど居場所が見つからない。一筋一筋ひとすじひとすじの水の流れ、波濤はとうのうねり、波に沿わせた舟の動き。

「ねぇ、このうどん屋さんの旦那さんとは知り合い?」

「まぁ、一応、昔よくおじさんの息子と遊ぶ、ここでよくご飯を食べる。」

「一応って何に?」

「彼が死んった、その後はめったにここに来ない。」

「えっ、どういうこと?死んったって......」

「はいよ、ひやあつ2人前、ごゆっくり。」

  おじさんがうどんを置いた後、背を向けた。そして話をかけた。

「まだりつの話なんのか?あれは...坊ちゃんの悪いではない、もう気にしないで、それは過去のものだ。」

  でも、おじさんの肩が振ってる、嗚咽を洩らした。その時の僕は胸にいっぱいある、どんなに我慢しても、声を立てて泣かずにはいられないような気持になだ、喉が腫れ上がって、呼吸もうまくできない。言葉も紡げなくなって、無理矢理開こうとすると今度は胸腔の辺りに圧迫感を覚える。

「ごめん、ゆっくりとひやあつを食べてね。」

「おじさん...僕は...」

律、僕の親友の名前だ、小学の時でいつも一緒に遊んてる。でも五年生の時彼が死んった、僕のせいだ、僕が律を殺すた。あの日、僕たちはいつものように家近くの公園でかくれんぼをやってるけど、一つちょっと変なおじさんが僕たちに話しかけって、彼は灰色の帽子をかぶった、ロリポップも僕たちにくれた。親たちに変な人に近いじゃだめと言われでも、その時の僕たちはそれを注意しなかった。僕がロリポップを味してる時、あの変なおじさんが律を連れ去った、そして行方不明になった、二人も。

  美桜が沈んったみたいの顔をしてる、美味しいのひやあつもなんか味がかわった。

  その日のあと、美桜は母さんの部屋で休んった、バイト先も見つかった、一応ね、平和の日々を過ごすった。

  朝は美桜が作った料理で夜は僕が料理する、僕は授業があるので彼女一人で。放課後二人學校で打ち合わせ、それてどうかで遊んだり。彼女はなんか事情があるので學校とかは行かない、何度もその理由を尋ねるけど、美桜に止められた、今考えればあの時の僕でバカよね、そういう明らかのこともわからない。

  休みの日は二人で水族館とか遊園地とかカップルがよく行く場所、彼女はサメが大好きから、イケアのサメもたくさん買った。夜はサメを抱いてソファに座ってながら映画を見て、サメと話して。

「ねぇ、ソラ、この映画どう?」ソラってあのサメの名前だ。

「えぇ、そうなんだ、清志はどう思う?」

「あっ、あまりマーベルの映画を見ないので、すみません。」

「そうですか~じゃ清志は何の映画が好みか?」

「映画なら新海誠とダドリー・マーフィーかな。」

「えぇ、清志は文芸映画が好みか、意外と大人ね。」

「それ、なんかむかつくけど。」

「ないない、褒めってるよ〜」

  こういう話もしてたよね、僕たち。僕たち外の世界を放棄した、代わりにお互いの心の深いまで探す。まるでなんのものが探ってるのような、深いまで、たとえ深海の中でも怖くない、だって愛してる、彼女を。二人がいるから、どういうことも乗り越える、短い時間でも、僕は彼女を愛してる、美桜のこと。僕のことを見つけたのは美桜、彼女が僕の中の物を火のように点火した、桜の最後の花を吹けたのように、そして春の雨のように万物を養いる。

  そう、平和の日々、彼女が二度と消えるまで。

  朝起きたら、枕は濡れった、心が殻っぽいの感じ、まるで誰かが僕の心を奪ったの空虚感くうきょかん。鏡の中の僕の目って、真っ赤し、深い沈没した眼窩がんか、もうこれ、人間とはちょっと酷いよね。いつものように彼女を起こしたいけど、彼女はいなくなっちゃった。

  海の奥まで、僕はおもむろに沈んってる。誰もいない、光も声も。周りに泡がゆっくりと上に浮きます、僕たげが下に沈んみます。底が見えない、真っ暗闇、地獄もこれよりにぎやかかも、せめて地獄には使者がある。

「美桜!どこた?ソラ!いるの?おい、答えろう!」

  答えなんで、一つもない深い海の中は僕一人たげ、あの頃みたいに、僕たげが残られた。どうこうするも、手や足をどうだけ振れるでも、喉が枯れたでも、なんの答えもない。

  どれだけの時間がかかったかわからない、僕は椅子で目を覚めした、同じの部屋なのに初めてなじみのない環境にいての感じ。なんにも覚えてない、頭が騒々しい、酔ってないのに酔っバラみたいに頭が痛い、水飲みたいな、ほんの一瞬、僕は美桜を見った。

「美桜、君かい?どうしたよ、美桜?」

「美桜?なんて答えないの?どこ行っちゃった?」

  美桜はただ黙って僕を見て、そして離れた。彼女を追いたい、たけど、僕がどう足引っ張っても、彼女は追いつけなくなる。気がついたら、もう森の真ん中、濃霧のうむが僕を取り巻く、だんだんその中で迷った、周辺が視野の中に薄ボンヤリと浮かんできた。霧は相変わらず濃い、樹木が現実の世界とは思えないような、淡い影となっていた。どう言えばいいだろう、まるで艦隊から離れての舟、つくねんと海で航行している、周りはなんにもない、突然舟の底で穴が現れた、水がその大きな穴から流れ込む、原因は不明、舟が沈んった、最後は泡とともに海の底へ沈む。舟には僕一人しかないので助ける人もない、海に浮かぶ。

  その寂しさ、多分今の感じと似てるかも、けど今は森、空も見えないの古代の森みたいな場所、周りはぶどうの樹ばかり、注意しないと転んだり。最初は鳥の声とか動物の声もよく聞こえるけど、中へ進めると、声が聞こえなくなる、足が枯れ木を踏む音しかないになた。森は、夜のような漆黒を抱え込んでいる。奥に足を進めると、暗いと重い空気が体を囲んできた。足を踏み出すたびに、自分の体が黒く染まり、さらに足を出すと、影に舐められる。

  その暗いさの終わりは、美桜がいる。僕が彼女を見つけたのあの時のように、ほとんど同じ場所にいる、彼女は。

  美桜を見つけた瞬間、空から雨が落ちた、霧雨です、重いの雨ではない、はっきりと目に映らないくらいの細い雨です。軽い、美桜のような軽いさ、抱きしめられないよ、もう。

「かいろう?美桜」

「うんん、私、も帰られないよ。」

「えっ、どうして?なんにかあたの?」

「だって、私死んっちゃった、美桜はもう、この世にいないよ。」

  いないって、僕は目の前の美桜を見て、自分の目からのメッセージは、この人は美桜だ、正真正銘の美桜、上野美桜だ。なんのに、この違和感はなんに?彼女の姿はきり雨の中で消えようとしている、雨はコートのように彼女を包んだ、重いの陰鬱さ《いんうつさ》の息が彼女の側にいて、近くされないような陰鬱感。

「美桜、一体どうした?」

  音もなく細かく霧のように降る雨、美桜は僕の目の前にいたけど、二人の距離が途切れった。

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