「海魚の冒険記」
海の水はしょっぱいから、朝早くに海から川へとやってきた海魚達。
川の流れは海の流れと違って、なかなか上手に進めない。
少しでも上流に昇る度に水は美味しくなるんだけれど、流れはどんどんキツくなる。
周りを見ると、スイスイ昇っていく魚がチラホラ。
きっと彼らは元から川の魚達。
海魚の仲間達は下流でウロウロ困ってる。
全然下流なもんだから、まだ少し塩が混ざって変な味。
みんなで困っていたら、川魚の彼らが泳ぎ方を教えてくれた。
「胸ビレよりも尾ビレを振り振り」
なるほど、これは海とは少し違う泳ぎ方。
少し練習してみたら、海魚達も川で泳げる様になってきた。
スイスイとはいかないけれど、スっスっと登って行ける。
ああ、どんどん水の塩気がなくなって、水が美味しくなってきた。
昼になる頃には随分上流までやって来て、完全に冷たい真水になっていた。
みんな気持ちよさそうで美味しそうでいい気分。
それでも日が暮れ始める頃になると、真水の水が物足りない。
しょっぱい水が恋しくなって不思議な気分になってきた。
海魚達はみんなで相談して海に帰る事にした。
川魚達にありがとう。
帰りは簡単、流された。
夜には海に戻ってきて、しょっぱい水がいい感じ。
胸ビレだけで漂って、どこに流されても塩味だ。
同じ感じで仲間達。
やっぱり海がいいねと微笑みあった。
おしまい。