第一話 運命
初めて小説を書くのでご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。
「んぅ……?」
目が覚めるとそこは、……ここはどこだろう?真っ白な天井と窓の無い壁。隅に置かれた小さなベッド。その横の段ボールの山。頑丈そうで大きな扉。
そして、壁に鎖でつながれた私の右手の手錠。
「……って、手錠!?」
部屋の異質な雰囲気よりもまず手錠に驚いた。それもそのはず、生まれてこの方本物の手錠なんて初めて見たからだ。漫画ならともかく。
そしてそのまま右に目をやると、この部屋で唯一安心できる物を発見した。人だ。しかも女性。
彼女は眠っていたが、同じく左手を手錠で繋がれていた。女子高生だろうか?かく言う私も花の女子高生なのだが、私と比べるまでもなく彼女は、とても美しかった。
ふわふわの黒髪、整った綺麗な寝顔、上品そうな可愛い制服、これらを見ただけで彼女がお嬢様であり、環境に恵まれて不自由ない生活を送ってきたのだろうなと想像できた。いや、失礼か。人をすぐ見た目で判断するのは私の悪い癖だ。
と、彼女の胸元にピンで名札が付いているのが見えた。
「みなみ……ゆめの?」
「はぁい……?」
文字を読み上げると、彼女が返事した。眠そうな顔をこちらへ向けて、吸い込まれそうな瞳で私を見る。
「あっ、起こしてごめん。じゃなくて、あなたは?」
「ふぁあ……。あなたが呼んだんでしょ?ゆめのって。」
名札の読み方は合っていたようだ。
「ここは……、ってきゃああ!なんで繋がれてるの!?えっ!?誰っ?」
「おっ落ち着いて!」
彼女はとても混乱していた。当たり前だ。壁に繋がれているなんて、誘拐されたぐらいしか思い浮かばない。私もさっき、最悪の未来が一瞬頭を過っていた。
しかし、パニック状態の人を見ると自分は冷静になる、という話を聞いたことがある。その通り、何故か私は落ち着いていられて、彼女を守らなければという気持ちになっていた。彼女が美しいからだろうか。
「大丈夫!大丈夫よ!私も同じ状況。仲間だから安心して!」
何言っているんだ私。普段漫画しか読まないからこんな変な台詞しか出てこないんだろうな。格好付かない。
「何っ!?仲間?えっ?」
「うん!私もさっき起きて、驚いてるの。敵じゃない!」
何の敵だよ。
「そ、そう……。」
なんとか彼女は落ち着きを取り戻したようだ。いや、私の発言にあきれたのだろうか。
◇
「大丈夫……、大丈夫です。それで、あなたは?」
彼女は自分に言い聞かせるように呟き、まだ疑いを捨てきれないような声で話しかけてきた。私は彼女の名前を名札で分かることができたが、私には付いていないようだ。
「河北沙紀。飛鳥東高校の2年生。よろしく。」
「沙紀さんね、よろしく。私は南夢乃。西野高校の同じく2年生です。」
西野高校は聞いたことがある。確か隣町の女子高で、学費が高くお嬢様しか入学できないとか。現代でお嬢様っているの、と思った記憶がある。
「沙紀さん、なんでこうなってるか分かりますか?」
「え、なんでだっけ……?」
そういえば目が覚める以前の記憶が無い。今日は何してたっけ。いつも通りに起きて、いつも通りに学校へ行って、いつも通りにつまらない授業を受けて、そのまま帰る。
自分は目立つ存在でもないし、一日何事もなく、友達と途中まで帰り道を歩いていたはずだ。でも、そこから別れた後は……。何も覚えていない。家に着いた記憶はない。
「ごめん、何も覚えてない……。」
「そう……、私も下校の途中から記憶が無いの。」
「そうなんだ。じゃあやっぱりそこで何かあったのかな。」
「何かって?」
「その、私たちが攫われたっていうこと……。」
二人で無言になる。そう、私たちは攫われたのだ。得体のしれない何物かに。それを思い出すと、恐怖が蘇ってきた。やばい、涙が溢れそうになる。誘拐。手錠。そして――。
その時、「ピッ」という小さな機械音が沈黙を破った。