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魔刀師匠 ~私の見つけた宝物~  作者: NOMAR
魅刀赤姫の主編
47/49

3ー12


 モーロックのブレスを二つに斬り分けその間に立つ。炎の壁に挟まれる。五年前はこのあとに、セキは私の身体でモーロックの身体を登って頭の上に立った。

 私はどうしようかな? そんなことを考えているとブレスは止まった。

「グオオアアアア!!」

 モーロックが顔を押さえて仰け反る。顔から血? え、おじーちゃん、どうしたの? 鼻血?

【ほう、ブレスを斬り裂いた刀閃がモーロックの顔まで届いたかよ】

「え? あそこまで届いちゃった? 斬れちゃった?」

 うっそー!?


 モーロックは片手で顔を押さえて、ズシズシンとよろめくように二歩下がり、頭を振りながら、

「バカな! バカなバカなバカなあ! ワシのブレスを両断し、その上、ワシの顔にキズをつけるだとおっ!?」

「おじーちゃん、ノリノリだね。斬れたって、ちょびっとじゃん」

【ふむ、なかなか熱い芝居をするドラゴンだの】


「小娘ぇ! このカオスドラゴン、モーロックにキズをつけるとは! 貴様、ただの盗人では無いな!? 貴様はいったい何者だ!」

【御膳立てはモーロックが拵えた。ミル、名乗るがよい】

 いったい何を企んでるの? 後ろを見れば腰を抜かしたおにいさん。遠くには避難してこっちを見てるベルデイの兵士。

 うん、ここはカッコ良くやるべきところ?


 左手で鞘を握り、右手のセキを高く掲げて立つ。ゆっくりと手首を返して、セキの刀身に反射する陽光の銀輝をグルーリと回して照らすようにして。ここはビシッと。すぅ。


「我は刀術師、ミルライズラ! 魅刀赤姫の主なり!」


 セキを軽くひとつヒュンと振りキラッ。人指し指と中指に挟んでクルリキラッ。刀身の腹で左の肩をパンと叩いて、逆手に持ったセキを鞘に納めてパチン。よし、決まった。


 モーロックおじーちゃんは片手で顔を押さえたまま、ビックリ目を見開いて。

「バカなぁ!? 魅刀赤姫が新たな主を選んだだとうっ!? しかも人間をっ! み、認めぬっ! 断じて認めぬっ! ぐうっ!」

 首を伸ばして空を見上げて。

「ぬうう、忌まわしき光の加護め! この身を焼くかっ! このままではワシの身も限界!」

「え? ちょっとおじーちゃん、無理しないで早く帰った方がいいんじゃ」


 黒い翼を広げて羽ばたく。大きな黒い羽毛の翼。バサリと黒い羽が舞う。その手で私をビシッと指差して。

「ミルライズラよ! その名、憶えたぞ! 貴様には最早、安息の時は無い!」

【なんと言うのか、モーロックは芝居が古いの】

「おおげさだね。ドラゴンを見たこと無い人には解らないと思うけど」


 モーロックはバサリバサリと羽ばたいて、街に開いた地下への大穴へと飛んでいく。黒い巨体が滑るように空を飛ぶ。

「我らが魔族の至宝を取り返すために! かつての魔王様の忠臣が貴様を狙う! 怯えて震えるがいい!」

「え? それって、皆が私に会いに地上に来てくれるってこと? 嬉しいけど、無理はしてほしく無いなぁ」


「それまで魔王様の愛刀を汚すでは無い! いずれ必ず、必ずや取り戻してくれようぞ!」

 と、言い残してモーロックは大穴の中へと降りて姿を消した。

【あれで演技に自信が無いというたか? あやつ、こっそり練習でもしておったか?】

「あーゆうの好きなのかな? おじーちゃんは」

 瓦礫の山となったルワザールの街に静寂が戻った。


 でもって。

 この後はベルデイの兵士は慌てて撤退していった。ただ、瓦礫に当たって負傷したり、おじーちゃんのブレスの残り火を消火したりとかした兵士。ドラゴンが出て慌てて避難した街の人がいるわけで。

 地面に開いた大穴から離れたところ、無事な建物を避難所にして、ケガ人の手当てを。クレリックにビショップといった治癒の神法が使える人に治してもらう。

 私も手伝ったんだけど、私が近づくとみんな怯えるのであんまり役に立てなかった。

 私が黒いドラゴン相手に一人で戦って、その上、撃退した。なんてことになってて、それを見た人がけっこういたわけで。

「もとベルデイの兵士が私を見て、『ひゃあっ』とか『ひいっ』とか。近づくだけで腰抜かしたりとか。ショックだー。私ー、これでも女の子ー」

「そりゃ、しゃーねーだろよ。助けて貰っといてなんだけど、俺もまだちょっと怖いし」


 このおにいさんの名前はウラスク。もとベルデイの兵士で総大将に剣を向けた人。上官として皆が避難するのを見届けて、務めを終わらせたらトンズラするつもりだったとか。

「そっか。上官を殺害未遂だから軍にはいたくないか」

「あのまま居てもベルデイはこれから落ち目で、給料にも期待できねーし。この街でまた探索者に戻るか」

「それなら、その前に再建しないと」


 私は懐かしのひだまり孤児院に。とりあえずそこを宿に。壊れてなくて良かったー。ユマニテ先生も皆もボラッシュの神殿にいるから、今は誰もいない。ちょっと寂しい。

「ベルデイはこれでよし」

【次はエスデントかの】

 瓦礫を片付け、使えるもの探しつつ二日後。エスデント聖王国の軍がやって来た。ちょっと調べたら何が起きたかは、直ぐに解ったようで、私のところにお迎えが来た。

 ただ、最初に来た騎士がね。

「詳しく事情を調べたい。小娘、ついて来い」

「えっとね。私がここで何をしたか、聞いてる?」

「ドラゴンが現れた。街の惨状を見ればそれは解る。だが、お前のような小娘がひとりでドラゴンを追い返したなど、信じられるか。ただの茶髪ポニテのペタン()では無いか」

「かっちーん!」


 言ってはならないことを口にしたので、私がドラゴンを撃退したってことを、身体で解ってもらいました。

【まぁ、侮られたままでは、なんだしの。モーロックの芝居が無駄になるのでな】

「騎士なら礼儀ってもんをねー。女の胸をなんだと思ってるのよ」

【おっぱいだと思ってるのではないかの?】

 その後は聖王国では聖女と知られたメッチが来てくれたので、話は進んだ。

「ミルがドラゴンスレイヤーになっちゃった……」

「斬ったけどちょびっとだからね? 顔がちょこっと斬れただけだからね? ちょびっとしかスレイヤーしてないよ」


 聖女の伝にエスデント聖王国は大混乱。百層大冥宮とルワザールの街は取り戻したものの、迷宮から魔物が、ドラゴンが出たことに大騒ぎ。神殿の神官は光の女神の加護が薄れ、ついにこの時がきたか、となり。王家は財宝の採れる迷宮が、これまでに無かった危険。魔物の地上への出現に怯えて。


 で、ドラゴンを撃退した謎の女刀術師が話題になる。王家で家臣にして本国の守りに、対闇の軍勢の戦力に、なんて私を召し抱えようとしたりね。神殿も同じ、神聖剣士としてどう? なんて役職、給料、待遇なんてちらつかせたりね。全部断ったけど。


 私が百層の下層から魔王の至宝を盗み出した、なんてのも広まって、その宝を売ってくれなんて貴族や商人が来たり。

 ドラゴンを撃退したのはその剣の力か? と盗もうとしに来るのが来たり。もう、千客万来。その上に私がかつての魔王の臣下から狙われている、ということも広まって街から出てけ、という声もある。

 そういうのを適当にあしらいつつ私は旧ひだまり孤児院に住んでいた。

 落ち着いたら百層に戻りたいのに、なかなか落ちつかない。


 噂だけが膨らんで。あの刀は百層大冥宮の下層から盗み出してきたという。光の加護も弱まり魔族が地上に現れた。魔王の残した至宝を取り返しに、魔物があの女を狙って地上に来る。しかし、あの女はドラゴンさえも追い返せる。何を考えているか解らないが、ルワザールの街から出る気は無いらしい。捕らえようとした騎士が手足の骨を折られて道に捨てられた。王家にも神殿にも手が出せないという。謎の女、いや女の姿をした魔物か悪魔か?

 と、えらい言われよう。私、一躍、時の人。


 聖女メッチェラーノ、メッチには私のこの噂とか使って、ルワザール復興できない? と相談。聖女メッチだけが謎の女と少し話ができる、なーんて王家と神殿には思わせて。ルワザール復興に、闇の軍勢への防衛の為に、探索者増やして強い人呼ぼうと、迷宮から出る財宝への関税は無くなった。それと、私がルワザールが住みやすくて便利な街になったら、また守ってもいいかなー、と言ってましたよ、と、メッチが王家と神殿にポツリと溢す。これで復興が加速した。やるな、メッチ。

 ボラッシュに避難してた人が戻ってきて、その中にはユマニテ先生、孤児院の皆、同じ孤児院出身で仕事見つけて街に住んでた友達。探索者時代の知り合い。同じパーティだった探索者もいた。ほんと助かった。私ひとりだと街に出たら皆ビクビクして、ご飯のおかず買いに行くのも苦労したから。

 ユマニテ先生には泣かれて抱きしめられて、また、私も泣いちゃった。五年振りの再会だもん。その後、もう一度泣くまで怒られたけど。もう無謀なバカなことはしないで、と言われても今の私の状態じゃ、約束できないし。

 

 そんな感じで、ドラゴン返し、炎の切断者、魔族の仇敵、魔王の愛剣の継承者、ルワザールの触れてはならぬ者、として名をはせる私であった。

「セキには、地上を案内するって約束したけど、ルワザールの街の中しか行けて無いね」

【なに、この騒動を充分に堪能しておるわ、くくく】




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