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第6話:石を求めて

第6話:石を求めて




 (かべのあな)から朝日が差してきていた。

 トワは基本作業机にもたれかかりうつらうつらしていた。


 とりあえず、配置図(レシピ)集には目を通した。ただ、一部のページが一面鍵のマークになっていたが、トワの想定範囲内ではあった。

 所持品目録(インベントリ)の枠の2行目以降も鍵マークで埋められていた。こちらにも同じ要素があっても不思議ではない。

 何よりも、まず閲覧できた配置図(レシピ)が十分すぎた。



 第一の目的であった便器、しかも洋式便器があったのだ。他にも今後、役に立ちそうな配置図(レシピ)もあった。

 徹夜のかいもあったというものだ。


 しかし、眠気でやや不明瞭な意識のトワが弱々しく呟いた。


あれ(・・)って、たぶん()やんなぁ」


 あれとは洋式便器の配置図(レシピ)の事だ。

 ページのクラフト枠には石塊と思わしきものが配置されていた。しかも、単に枠を埋めているだけではなく、数字も書かれていた。つまり創造(クラフト)は、材料、配置だけでなく材料の数量まで判別するのだ。


「石かぁ。当然小石を集めてもだめだろうしなぁ……」


 物憂げなトワの呟き。


 トワのゲームの経験上、石材というのは珍しいものではない。ただ、どこで入手するか、だ。

 ゲームのパターンでは、地面を深く掘ると土の層から石の層になる。あるいは地上に岩か採石場があるといったものだ。

 そして地面を掘る場合、問題があった。

 明かりである。


 配置図レシピ集にはいくつか明かりに関するものがあったが、どれも材料に難アリだった。

 一番現実的なのはトーチ(たいまつ)だったが、必要な材料は2つ。片方の木の棒は木材から作れる。だが、もう一つ、炭と思わしきものが問題だった。配置図(レシピ)集の文章は読めない文字で書かれているので絶対とまで断言できないが、黒い小石のようなものの集まりがクラフト枠に描かれていた。ゲームの知識とあわせると、恐らくは木炭や石炭のたぐいだろう。


 木炭なら木材を燃やせばと思ったのだが、火をつける道具がない。また火を扱う以上、トラブル防止の為に火消し用の水もいるだろう。何よりも単に木材を燃やしたものが創造(クラフト)が要求する木炭にならないと、トワの感覚(フィーリング)が否定していた。


 他の明かりは(えきたいねんりょう)や金属素材が必要そうでさらに難度が上がる。ランタンなどはいずれ欲しくなるだろうが。



 配置図(レシピ)集の中に炉があったので、それで木炭から創造(クラフト)出来る可能性は高いが、その炉の材料も石なのだ。


 結局は石をどうにかして手に入れなければならない。



「はぁ、こうしてても始まらへんな」


 パチィン。

 気合一発、トワを両の頬を叩いて背筋を伸ばした。



 少なくとも、ここに来た時よりは大幅に前進している事は確かなのだ。とにかく、行動しない事には何も変わらない事は間違いない。


「とりあえず、今日は予定通り食料になるものを探しにでよか」


 夜の間に感じられた、得体の知れない気配はもう感じられない。やはり、あれは夜限定のようである。


「でもまぁ、一応これはもっていくか」


 トワが手にしているのは剣であった。但し木製の。まぁ、木材を創造(クラフト)して作ったのだから当たり前なのだが。

 やや重く、数回振り回したら息切れしそうなシロモノだが、普段は所持品(インベントリ)に入れておけばいいだろう。


「……ああ、ついでに」


 基本作業机から離れようとして、トワはふと思いついてさらに創造(クラフト)して、新たなアイテムを所持品(インベントリ)に加える。


 トワは深呼吸して、軽くストレッチしてから壁に手を添えた。


「『変換(クラッシュ)』」


 作った出口からでてから、設置(ビルド)で出口も(かべのあな)も塞いでいく。


 泥棒が入るとも思えないが気分的な問題だ。


 そしてトワは周囲を見渡し違和感を感じた。その正体はすぐにわかった。


「木材がなくなってるやん?」


 昨日、伐採(デストロイ)した木々の残骸である木材が一つも残ってなかったのである。


「誰かが全部持ってった……なわけはないから。もしかしたらアイテム化したものは時間経過で消滅すんの?」


 もし、トワの予想が正解なら、変換(クラッシュ)でアイテム化したものは、設置(ビルド)するか、所持品(インベントリ)に入れなければいけないという事になる。


所持品(インベントリ)の管理が重要になってきそうやなぁ」


 所持品目録(インベントリ)の使える枠数は10。

 事前に準備した道具(ツール)の分も考えると、空き枠が十分とはいえなかった。

 しかし、現状は変えられない。なら不安があっても突き進むしかない。


「行くか」


 自らに言い聞かせるように呟き、トワは歩きだした。




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