第11話:所持品保管箱
第11話:所持品保管箱
崖下の回収が終わった後、トワは家に戻った。
最初の探索としては十分な収穫はあったと思えたし、石材の変換にもかなり時間をかけた。
何よりも所持品目録の空きがなかった。今日の探索を打ち切るにしろ、まだ探索をするにしろ、所持品の整理しなければならない。
幸い、帰路はケモノに襲われる事もなかった。また、目印以外にも、木に傷をつけたり、小石を積んでおいたりと印はつけておいたので、帰路に迷う事もなかった。
ただ、木の傷はそのうち消えるだろうし、積んだ小石は何かの理由で崩れるかもしれない。何か、別の方法がいるかなと考えるトワだった。
「いっそ、設置で歩道でも作ろうか」
そういう発想が出るあたり、やはりサンドボックス系のゲーム好きが出ているトワらしい。もし、トワが整地マニアなら、家の周囲はまっ平らになっていたかもしれない。整地作業は一部の人間には麻薬的な快感があるらしく、一ヶ月ゲームで整地ついやしてもあきないらしい。むしろ、整地をやらずサンドボックス系をやる意味があるの? という感じである。豆腐愛好家のトワには理解出来ない世界であった。
そして、トワが整地マニアでなかった事は、森にとっても幸いな事だった。
家にたどり着いたトワがまずした事は、家の外壁を変換する事だった。出る時に塞いでいた為だ。
ただ、さすがのトワも毎回これをやるのは面倒だと思い。ドアを作る事にした。
人によっては『なぜ最初から作らない』と思うだろうが、そこはトワだからとしか言えないだろう。
ドアの配置図は配置図集にあった。材料による違いを省いても数種類存在する。見た目以外の違いは作ってみないとわからない。配置図集側の文字は読めない文字だからだ。
それは後で腰を落ち着けてやるとして、トワはそれより優先度が高いものを創造する事にした。
「『装備』」
所持品から木の剣を取り出し、床に放る。所持品目録のアイテム枠がいっぱいで、空きがなかったからである。先ほど壁を変換した際の木材も、まだ収集してなかった。
そして、これからトワが創造しようとしているものも、所持品目録が関係していた。
所持品目録の所持品の枠は10マス。何らかの条件でマスの数が増えそうではあるが、現状ではあくまで10マスだ。そして、いつまでも集めたアイテムを所持品に入れっぱなしでは、空き枠の問題で新しいアイテムの収集に支障をきたす。
変換したアイテムは放置しているとそのまま消える。実際に家の周囲に放置していた木材やコノコノの実は消えていた。
一度収集したアイテムや、創造によって作られたアイテムはどうなのかは、今後検証してみない事にはわからないが、取り急ぎ必要なのは、集めたアイテムを保管できそうなものだ。
配置図集でそれらしいモノにあたりはつけていたが、材料が木材と石材であった為、作れなかったのだ。
トワは窓用の穴を作るのも兼ねて、壁の何箇所かを変換して、木材を収集していく。
そして、必要数の木材があつまった所でクラフトパネルへと目を向ける。
「『創造』」
クラフトパネルで作られたものが、インベントリパネルに移動する。インベントリパネルは日本語表示なので、創造したものの名前がわかる。
「所持品保管箱か。そのまんまやな」
トワは呆れつつも基本作業机の横にそれを設置する。それの見た目は長方形の木箱だが、縁には金具のように滑らかな石が張り付いていた。
「乱暴に扱ったら、すぐに石の部分が割れそうやな」
さっそく、箱を開けてアイテムを収納しようとして所持品保管箱に手を触れると、インベントリパネル、クラフトパネルに続く三つ目のパネルが現れた。どうやら箱の形状は見せかけだけで、所持品保管箱は新しいパネルにアクセスする為の端末のようなものらしい。
新しいパネルに名前がないと不便なのでストレージパネルと命名した。ついでに保管系のアイテムを保管と分類する事にする。
ひとまず、今回の探索で得たものを所持品保管箱に移動させる。強くイメージしなくても、スムーズに移動出来た。もしかしたら、パネルとのやり取りになれてきたせいであったのかも知れない。
所持品保管箱に2x10の枠があり、つまりは20種類まで収納出来る事になる。
イベントリパネルと違い、拡張はできなそうだが足りなくなれば、随時創造して追加すればいいので、アイテムの置き場に困る事はないだろう。
新たな素材により創造の幅が広がった。
窓から外を見ると、夜になるにはまだ時間がありそうだったが、命の危険から逃れた安堵感もあって、疲れていたし、色々と家でやりたい事も思いついたので、今日の探索はここまでとなった。
ちなみにクロスベリーの実についてだが、さっそくトワは挑戦して見たが、やや酸っぱいものの特に吐き気も、腹痛も起こらず、食料として扱ってよさそうだった。