表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

メディア

「……メディアはなんで奴隷産出人になったんだ?」


 考えに考えた結果、雄二はメディア本人に直接確認することにした。先ほどのように他の奴隷から聞いて回る事も考えたが、偏見などが入って本当かどうかわからなくなるだろうしなによりもまどろっこしくて面倒くさい。

 

 いきなりすぎる話題にメディアは足を止めて俯いた。それに合わせて雄二も足を止めて向き合う。


「……いきなりどうしたの?」


「さっきの奴隷に言われたんだ。メディアは頭がおかしいから気をつけろって」


「……そっか」


 相変わらず俯いたままのメディアに、雄二はもしメディアが快楽殺人鬼だったらどうしようとか考えて一人冷や汗を流す。


 ……どのくらい時間が経ったのだろうか。先ほど聞こえなかった木と木がぶつかり合うような音や怒鳴り声が聞こえ始めた頃にメディアは顔を上げた。


「男と女が仲良くするのはそんなにおかしいの?」


「え?」


「女神様が決めたからって、絶対服従だからってなんで男は奴隷なの? なんで女はえらいって事になるの? そんなのおかしいよ、奴隷なんていなくたって皆で力を合わせれば暮らしていけるじゃない!」


 先ほどのしょんぼりとしていた顔とは比べ物にならないほどの悲痛な表情で雄二を睨みながら叫んだ。


「お、落ち着いて…!」


 あまりの気迫に気圧されながら雄二は必死に宥めようとするもメディアはなおも叫ぶ。


「男か女かなんて関係なく、ただみんなで仲良く暮らしたかっただけ! 暮らしたかっただけよ! なのに皆はお母様はおかしいって、背教者だって!」


 メディアの瞳から大粒の雫が滴り落ちると、それは一つ、二つと増えていき足元の床に大きな染みを作っていく。


「メディア……」


「お、お母様はひぐっ、お、おかしく、うぐっ……ないっもん。う、うえぇ……! だ、誰よりも優しく、て、だれ、よりも……っうぅ」


 しゃくりあげ、顔を酷く歪ませながら涙を拭う事も、雄二から目を離すことなく訴える。


「な、なんで、だれも、お母様を、お、おかあ……さま、まちがって……みんな、なかよくっ」


 今まで溜め込んできたものを全て吐き出しているのか、もはや自分でも何を言っているかさえ分からなくなっているメディアに雄二は何もせずただただ黙って聞いていた。いや、聞くこと事しか出来なかった。

 

 これまでの人生でこれほどまでに感情を吐露してぶつけてくる相手に出会ったことがないのだ、当然だろう。


 雄二の愛読しているライトノベルの主人公達ならば抱きしめたり、頭を撫でたりして宥めることも出来よう。だが、そんなこと雄二には出来ない。


 「――メディアのお母さんは間違ってないよ」


 「え?」


 ――――雄二に出来ることは、メディアの目をしっかり見据えながら口を動かすことだけだった。    



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ