異世界召喚で人生が詰んだ者の英雄伝説
「おはよ〜」
「おはよ〜」
「よー」
「昨日のアレさ〜」
「あ、!それ最新号⁉︎」
「朝イチで買ってきたぜ!」
「ナイス!」
「男子うるさい〜」
「朝からテンション高すぎ〜」
教室に入った瞬間にそんな騒がしい声が聞こえた。
「うるさすぎだろ…」
俺、南雲 創也(なぐも そうや)は独り呟く。
「まあまあ、そういいなさんな」
「谷口…、お前も朝から幸せそうだな」
呟いた俺に、声をかけてきた谷口 陽介(やぐち ようすけ)にぶっきらぼうに返す。
この男の事だからどうせロクな理由でニヤついている訳ではないだろう。
ニヤついていなければなかなか見られる顔なのだが…
「いや〜解る?実はまた午後屋上で大事な話があるってお手紙が…」
何故かニヤついていてもモテる。
「行っとこい。そして落ちてこい」
「ヒドッ⁉︎」
ジリリ〜
「んHRだ…。また後でな」
「いや、もういいよ…」
いつも通りだった。
空を見上げる。
真夏の空だ。
この後授業を受けて、家に帰って、なんやかんやで夜寝て。
次の日が来たらまた学校に行って。
そんな日常が続くはずだった。
はずだったんだ。
「ん?」
床が光り始めなきゃ。
この日、俺の通う高校は大事件を経験する。
授業中の生徒36人と教師1人が忽然と姿を消した。
7月
「アチィ〜」
「言うな。もっと暑くなる」
「センセ〜。授業やめてアイス買いに行こうよー」
「ガキか」
「俺もアイス食いたい」
「先生もアイス食べたいですよ」
「でしょー」
「だよね〜」
あちこちから張り詰めた緊張が緩み、気の抜けた声が飛ぶ。
それを、俺こと西条 燈夜(さいじょう とうや)は冷めた目で見ていた。
(なんだかな〜。どうせロクな授業じゃねぇけどさ)
当然誰も自分の心情など知らないわけだが。
それにしてもうるさい。
「じゃあ後の2分は自習で。その代わり、アイス買いに行っちゃダメですからね〜」
「やった〜」
「イェーイ」
まあ早く授業が終わったのは嬉しい限りだ。
授業はつまらない。
こんな晴れた日にわざわざやる程の授業じゃあない。
「燈夜は昼寝が好きだからな」
なんて独りで呟く。
ジリリリッ
「っしゃあ!授業終わり!アイス買いに行こうぜ!」
「俺のも頼む」
「あ、俺も」
「私も〜」
「いや誰か一緒に来てくれよ…」
アイスか…。アイスより冷えた羊羹が食べたいな…。
「燈夜はジジイだからな」
またも呟く。
もう解ると思うが、俺は友達が少ない。
てかほぼゼロ。
てかゼロ。
「うん。言ってて悲しくなって来たな…」
帰ろう。
そう思いカバンを取った時だ。
「あれ?」
なんか床が…光って…る?
「おい!なんか床が光ってねーか⁉︎」
隣の男子が叫ぶ。
どうやら俺以外にもそう見えたらしい。
「なんだこれ⁉︎」
「なんか、光り強くなってね⁉︎」
「ヤバイんじゃ?」
「せ、先生⁉︎これなんですか⁉︎」
「わ、わかりません。皆さんまだ動かないでくださっ⁉︎」
そこまで言いかけて体がいきなり床に吸い込まれて行った。
「うわぁぁ⁉︎」
クラスメイトの悲鳴と共に視界が暗転した。