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食事は辛いよ

一応、ヒロイン(?)です

やれば死ぬ、やらなくテも死ぬ

運が悪くテも死ぬ、運が良くテも死ぬ


ならばこの国の人間には私の事なんテ無視シて欲シいのデスよ

                             幼馴染の少女の独り言より





『10月10日 21:01(日本時間) 豊下市、上池公園』



未来というものを感じることが出来ない絶望感の中で、細々と人間を殺し食べて生きている私らのことなんて無視して欲しい。

夜中の公園の草むらの中に置かれたダンボールの中で、黒主体のゴスロリ服の少女はそんなことを考えていた。

季節は冬、風もあり気温も低く本来なら身体が震えるはずだが、少女にはその身体が無い。


普段ならば首の上にある、人間の少女の顔は外されダンボールの奥に置かれてるため、

黒と白の縞々のニーソックス、黒主体のゴスロリ服だけが手と首より上が無いのに自分の意思をもったかのように草むらに佇んでいる。


少女の名前はカース・スノウ。

転がっている頭の名前はカース・スノウとは別の名前なのだが、名乗ることが自宅以外では無いため、省略する。


そんなスノウは廃墟と化した塔で果てた人間の魂を喰らう、リビングメイルだった化け物である。

この世界で討伐されないように自分の体であったメイルを捨てて、ゴスロリ服に乗り移っているので今もリビングメイルかどうかはわからないのだが。

もし名前を付けるとするならば、リビングゴスロリであろうか。



「雲が出テるシ、ご飯日和デスね」



地球には本来存在しない自分がこちらの世界に連れ去られて来て、何日、何ヶ月、何年がたったのか。

元々、こちらに住んでいた訳では無いのでスノウの日本語は一部カタコトのままである。

初めのうちは日本語すら理解出来ず、日本語が理解出来ないまま、たくさんの同胞を無くした身なので、一部ぐらいカタコトでも理解できてればいいとスノウは考えている。



「久シぶりの食事、何トか明日を迎えられソうデス」



元の世界に何人もいた神の一人の名前を思い浮かべ祈る。

その神もこちらに連れて来られて、消息を絶ってしまったが元の世界からの最後の癖は抜けない。

他にも色々癖と呼べる物はあったのだが、この世界で必死に生きようとしたためか、癖も、何をしていたのかも、廃墟と化した塔で冒険者や旅人の死体の魂を喰らっていた日々も既に思いだせなくなってきた。

自分の本体であった、鎧すらどんなものだったか忘れてしまったのだから、そのような細かいことは忘れて当然なのだが。


今スノウに残っている昔の自分は、食前に神に祈るという、リビングメイル、もといリビングゴスロリらしからぬ行動だけである。



「食事にこんなに苦労スる時が来るトは…」



元の世界ならば、居住していた塔の宝探しに来る人間を適当に襲っていればよかった。

こんな食事すら困難な世界には来たくなかった。

そもそも何故こっちの世界に来るはめになったかもわからない。

いやそんな理由はどうでもいい、来た理由がわかったところで状況は何も変わらない。

とはいえ夜空を見上げる度に考えてしまうのだ。


何故、自分はここにいるのかという事実を。


日々適当に食事をしていた頃はこんな事考えることは無かった。

こちらの世界に住み、学校とやらに通い、将来などという単語を聞く度に考えてしまうのだ。


私の将来には何があるのだろうか、と。


いつものように答えがでないままぼんやりしていると、ガサガサと公園の隅の草むらを掻き分ける音がする。

スノウの待ち人が来たらしい。



「来まシたか」


「こんばんみー、夜の公園に佇むゴスロリ服ってさ、ホラーにしか見えないよな~」



子供服を着た少年が陽気な声で話しかけてくる、最近流行の東京の戦隊物の絵柄のシャツを着ている。

私らの天敵だというのに。

捕まえられて殺されるか、その場で殺されるだけの一方的な立場だというのに。



「なんデソんな服着てるのデスか」



顔が無いため表情はわからないが、あきらか不機嫌な声でスノウは少年に尋ねる。



「あー…これ?この前爺ちゃんが買ってくれたんだから、天敵だからって着ないわけにはいかないやろ」


「私なら捨テまるデスよ、ソんなの」


「いやいや、爺ちゃんから貰ったんやで、捨てられる訳ないやろ」



にこやかに答える少年の姿を見てスノウは溜息をつく。

渋々着たという表情では無く、プレゼント貰って嬉しいですといった感情が表情に出ている。

自分以外の心が本当にわからない。


国に、人間を食料とする危険魔物の指定を受けている私達がそんなの着て、喜んでどうするんだと。

見つかったら速やかに消去されるだろうに。


少年の爺さんとやらもこの少年が人間の血と肉を食料とする吸血鬼と狼のハーフである自称吸血狼であることはわかっているだろうに。



「まあソんな事はドうデもいいデス、ソろソろお腹が減っテ限界が近いデスし、サッサト襲いまスよ」



スノウはゴスロリ服から携帯を取り出し、この公園の近所に住む君塚由葵にメールを再度送る。



「何したんや?」


「メールデ呼んダダけデスよ、もうソろソろ来るはズデス」


「スノウの知り合いなんか?」


「はい、今回のターゲットは私の立場の幼馴染デス」



スノウは今回の食事のターゲットは迷ったのだ。

いつもなら、知らない数ヶ月前から調べただけの年寄りを狙って襲っている。

しかし今回は問題が発生してしまった。



「いやいやちょっと待ってーな、俺と一緒ぐらいの時期に来たのに何で幼馴染がおるんや」


「ソれの幼馴染デスよ」


スノウはダンボールに転がっている頭を指差す。

さっきまでゴスロリ服の上に乗っていた死んでいる人間の頭だ。

地球に連れて来られた時に出会い助けて貰った少女からの最期の置き土産である、その代償として、口約束として少女の呪いと化した恨みを晴らさなければならないのだが。



「彼女の幼馴染デスよ、一応仲は良いはズデス、多分、恐らく、きット」


「何でそんなあやふやなんや…」


「人間の心が私にはわからないデスシ…」


「じゃあ何でそんなあやふやな知り合い相手襲うんや、いつもならもっと詳しく調べてるやろ」


「事件のセいデ、警備が凄いのデスよ…」


「あー…最近、警備凄いもんなあ…連続殺人事件のせいで」



問題というのは、田舎であるはずのこの町で起きた連続殺人事件が原因だ。

どんな世界でも大人が行方不明になるぐらいの事はある。


その場合、警察に捜索願が出されたりはするが、警察はスノウの目が付く範囲では張り紙程度しかしない。

間違っても大量の警察や退魔詩魔法使いや剣士や正義の味方は来ない。


しかし連続殺人事件になると話は別なのだ。

少年とスノウは溜息を付き項垂れ、どんよりとした雰囲気に包まれる。


よりによって自分達の年に数回程度しかない食事時に、どこかの馬鹿が連続殺人事件なんてする物だから、警察が動員され都会のほうから化け物退治の専門化が何人か訪れているのだ。


そんな中で一人の人間を探偵のように付回している、ゴスロリ服を着た少女。


はっきり言って怪しい。

行き当たりばったりで襲えという者もいるかも知れないが、そんな無謀な真似は出来ない。

現実にはゲームのようにセーブポイントは無い。

死んだらそこまでなのだ、私みたいな魔物は魂ごと消滅させられ転生することさえ出来ない。

世の中には死霊術師もいるらしいが、本物は見たことが無いので、私達は死んだらそのままであろう


そして少年は吸血狼だから昼間は碌に出歩けない。

だから食事とする人間を調査することが出来ず、知っている人間を襲うことにした。



「セめテ、あと少し時間があれば良かッタのデスが…」



そうすれば違うクラスメートを食事とする事はできた。

だが、私も少年もそろそろ限界なのだ。



「貴方の爺サんを襲うわけにもいかないデスシ」


「あったりまえだ、爺さん襲ったらお前でも殺すぞ」



太陽を浴びたら塵となってしまう吸血狼である少年。

そんな少年が何故生き延びられているかというと、家族を無くした一人の老人に住ませて貰っているからだ。

理由はよくわからない、外見はただの人間である少年に何かを感じたのだろうが、私は少年とそこまで係わり合いになる気も無い。

食事時だけの同盟なのだ。



「私も家族を襲えないデスシ…」



こちらに来た時は中身の無い鎧であったスノウ。

死病で余命僅かの少女に助けて貰い、言葉や常識、そして身体であるこのゴスロリ服と顔と遺言を貰った。

恩を返そうにも少女は既に死んでいるからスノウは別に恩を返す必要は無い。

しかし、この少女の家族はスノウの正体を知っている。

知った上で、少女の振りしてくれと頼まれ、家に住む事も、少女の頭を貰うことも許可してくれたのだ。

少女がいなければとっくに滅されていた手前、遺言にも、家族との約束にも逆らうわけにもいかず。

そもそもスノウにとって、居住が確保できる時点でデメリットが特に無いのだから、従う以外に選択肢は無い。

そのためスノウは一年のうち食事をする数日前後以外は家に住んでいる。


流石に人間の魂を食べた直後ぐらいはいないほうがいいだろうという考えで。



「貴方に友人なんテいないから、私の幼馴染を襲うシか無いのデスよ」


「でもいいんか?、幼馴染なんやろ、若いやつは止めろってお前散々言ってるやん」


「余命が少ないと思われテる人間なら問題無いデスよ」



君塚由葵の身体が健康であることは知っている。

その上で周りの人間に勘違いされていることも知っている。

彼女がどういう性格なのかも知っている。


彼女を襲えば捜査に引っかかり私達は見つかり殺されるかも知れない。

しかしもう時間が無いのだ。


二人揃って我慢したほうなのだ。

スノウは人間の魂が食事で、長期間食べなければ自身の魂を喰い果たし自滅する。

少年も同じような状況で外に出ることも出来ないし、その辺りの人間を適当に襲ったら半分身体を喰われたグールが発生し吸血狼がいるとばれすぐに滅される。


もう少し強かったり、食事内容が違えば楽に生きられたのだが。

二人揃って人間の命が食事であり、人間に協力して貰える可能性は無い。



都会のほうの強力なモンスターだと、雑食や空気に漂う魔力などを食事するものが多く。

人間の娯楽相手のような秘密結社や悪の組織として生活しているが。

雑魚モンスターAのような私達は生きることすら必死なのだ。


まあ雑魚モンスターAであるこいつと違って、私はは三流の化け物レベルとスノウは考えているのだが。

二人は仲が良い訳では無く、生活のために協力し合っているだけだ。



「その相手は何時来るんや?」


「待ち合わせのメールは送ッタからもうソろソろのはズなのデスが…」



その頃、幼馴染の食事にされかかっていた君塚由葵はというと。

クラスメートの殺人を見てしまった影響で、約束なんてものは完全に忘れ、携帯もまったく見ていない。

翌日も学校があるためか、無理やり寝入ろうとしているが目が冴え、嫌な想像ばかり頭を過ぎり、ベットの中で転がっていた。


そんな状態になっているとは露知らず、スノウと少年は完全に待ちぼうけを喰らっていた。


二人でボケと突っ込みの雑談をしながら何十分か時間が立つ。

が、あまりにも待ち人が来ないため、現実を直視しなければならなくなってきた。


「なあターゲットが来ない場合ってどうするんや…?」


「知らないデスよ!」



少年の問いにテンション高く、声質だけ聞けば嬉しそうに答えるスノウ。

表情を見ようにも、顔がダンボールの奥に置かれたままなのでわからない。



「俺、割と限界なんやで…、血と肉はスーパーの肉でごまかすのは限界あるし…お前すら美味しく見えてきたで…」


「血も肉も私には無いデスよ、あるのはこのゴスロリ服ダけデス」


「人間が食べれないって辛いよな、最低限すら食べれないなんて…」


「ご飯が無ければ、餓死か身投げか、捕まッテ処刑の三段コンボデスね!」



君塚由葵をターゲットと定め、食事にすると決めていたスノウと少年。

深夜の公園の草むらで物騒な会話をする二人であったが、誰かに聞かれたらどうするつもりなのだろうか。


実際の所、二人は深く考えていない。

少年は食事さえ出来れば良い、いざとなれば適当に襲えばいいと楽観しているし、スノウだって自分の作戦を完璧だと無理やり思


い込み周りの警戒すら碌にしていない。


理由は簡単である。

自分達の立場は地球に置いて、吹けば飛ぶゴミのような存在であり、上には上がいることも知っている。

言ってしまえば二人とも捨て鉢なのだ。

自分達に出来ることは少ない、ならその出来ることさえ裏目に出て失敗したら…。

失敗は、失敗を予想入れれば入れるほど失敗しやすくなるとスウノは考え、成功したことしかと考えないようにしている。




「スノウと田中、この地デ眠るまデあト少シデスね!」



ちなみに少年、田中ベネデットというイタリア系日本人のような名前である。

田中は世話になっている老人の名前であり、ベネデットは元の名前だ。



「いどなれば爺ちゃんを食べれば…いやあかん、最低限の義理人情忘れたら俺は吸血狼じゃない、ただの獣や」


少年の吸血狼という名称、口にだすと「きゅうけつろー」になり、頭の中で別の物が想像されそうである。



二人はいざとなれば同じ家に住む家族を襲うことは出来る。

しかしそれをしてしまえば、警察や近所の噂となり正体がばれ、自分が死ぬとわかっているからその選択肢は存在しない。


何しろ彼女たちには敵と戦えるような魔法も武器も盾も、足も、耳も何も無いのだ。

一応人間よりは強い力を持っているのだが、複数人来られたらそこで終わる。

逃げられたとしても、通報されれば終わる。


今の地球にはちょっとした魔法なら、町内の数人どころか数十人は使えるし。

人間を超えてるかのような筋力を持った人間もヤマのようにいる。


その目を掻い潜ったとしても、たまたま力のある持ち主が近くを通りかかっただけでも、運が悪ければ死ぬ。



スノウは地球に来た時、簡単に殺されていく仲間達を見、異世界との交流でおかしな力の持ち主まみれとなった日本の事を知り、


絶望し理解した。

田中はそもそも太陽を浴びた時点で終わるので、家を無くすか食事が無くなり動けなくなったら終わりと理解している。



「来ないというより、見抜かれたんやないか?」


「何デスト」


「俺今思ったんやけど、深夜の公園に呼び出すって何かおかしいやろ、こんな物騒な世の中やのに」


「…あッ」



田中の言葉に衝撃を受けるスノウ。

ちなみにスノウうっかりでボケボケなところがあるお馬鹿さんである。

元々が廃墟と化した塔の引きこもりのリビングメイルなのだからお馬鹿でもおかしくないのだが。



「トなるト私達の生命詰んダ?」


「通報とかされてたら既にアウトやし、何か用事が発生しただけっぽいけどな」



昔の日本の警察と違い、今の日本の警察には多数の魔法使いが配備されている。

ここが田舎とはいえ、探査魔法や捕縛魔法が得意な魔法使いは何人も配備されており、メールをしてから時間もたっているので。

詰んでいるならとっくに詰んでいる。

田中の言うとおり、こんな時間に呼び出されるのはおかしいと何か危機感が働いたのかも知れないが。

由葵はそんな勘は鈍い、何か起きたのだろう。



「トなるト、ドうシまシょうか、一度裏目にデタターゲットは狙わないほうが良いデスシ…」


「てきとーにそのあたりの人間襲ってあとは運に任せるとかどーや」


「ソれは止めタ方が、碌な目に合わないデス」




勘などでは無く、ただの机上の理論だ。

スノウがこちらに来て学んだ本の一つに書かれていた、タイトルは幼稚園児でも判る孫子の兵法。

その本には色々書かれていたが、そのなかで敵を知り、己を知れば、百戦危うからずという言葉があった。

私もこちらに来てから学んだのだが、ようするに。

自分の力量を知っていて、敵のことがわかっていれば、危機に陥ることは無いといった意味だ。

多分そういう意味だ、きっと、間違ってないとスノウは思っている。



「運や運、それさえあれば一人ぐらいいけるやろ、強いやつに当たる確立なんて皆無や」


田中は指を一本立て、スノウを指差す。


「この世界にゲームのようなセーブ機能さえあればいいのデスが…」


指を指されても身動き一つしないスノウ、というより暗闇のため見えていない。


「最初の一歩でボスになんて当たることは無いで」


「あるんデスよね、ソういうゲームも、所謂クソゲーデスね」


「なんやそのゲーム…難易度高すぎるやろ…」



そんなクソゲーが家にあったのは、スノウの頭の持ち主であった少女の趣味である。



「で、結局どうするんや、日空けて襲うか?」


「ソれデも良いデスが…、一応ここデ探シテ見まシょう、弱ソうな奴が居れば一週間ぐらい調べテ見まスよ



上を見たら手は届かないが、下を見れば手は届く。

ならばその下を襲い、上には近づかない、勝てない状況では戦わない。

弱者の生き方としてはこれほど良い生き方は無いと考えている。


なにしろ、この生き方のおかげでスノウの対人間勝率は100%なのだ。

100%で無くなった時、消滅するからとも言えるのだが。



「誰か来たで」


耳と鼻をくんくんさせ、公園の入り口に視界を向ける田中。

空腹のためか不景気どころか、大恐慌が起きたかの表情になっている。


「格好ト身長ト性別は?」


そんな田中の表情をまったく見ずに、質問するスノウ。

お互い利益のために付き合っていて、仲が良い訳では無いから気にしてないだけだが。


「スーツ着た二人組みの男やな、かなりよっぱらっとる」


「男二人組なんテ勝テるはズ無いジゃないデスか」


「いつも通り、後ろからやればいけるやろ」



どこからか取り出した包丁を振り回す田中。

それを見て溜息をつくスノウは考えていることを口にする。



「バカデスか、片方奇跡的に殺シテも、もう片方ドうスるんデスか…」


「そりゃ、殺せばええやろ」



呆れ気味なスノウに対し、息荒く返答する田中。



「ここ街中デスよ、叫ばれテ人呼ばれタらアウトデス、ソもソも人間包丁デは中々死ななイデス」


「でもこの前のじーさんは」


「心臓悪くテ、簡単に死にソうな相手病院デ探シタんデスよ、あいツら健康ソうジゃないデスか」


「一人一人おびき寄せたらええやん」


「トにかく次デスよ次、まあこんな殺人犯がいる物騒な時期に夜出歩く人間なんテ」


「何かお前よりちっちゃい女の子が歩いてるぞ」



スノウの投げやりな言葉を途中で切る田中。

指を刺した方角を見ると確かに幼い、自分より身長の低い少女が一人歩いている。



「何デデスか…」



田中の言葉を聞き、嫌そうに、だるそうに、めんどくさそうに。

ダンボールに置かれていた自身の頭をゴスロリ服の上に乗せ、草むらから歩き出すスノウとそれについていく田中。

公園の草むらからでて、公園の外灯に照らされる二人。

パッと見人間に見えるスノウは、肩程度まで届く黒髪、背丈は低めで壁のような断崖絶壁のゴスロリ服。

目はほとんど開いていないかのような糸目であり、眠たそうな雰囲気を漂わせる少女であった。


その脳裏に浮かんだ事は、嫌そうに顔と口を歪め、深夜にランドセルを背負い歩く少女への疑心と。


『こんな生活止めて、元の世界に戻りたい』だった。

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