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13/13

13チーズ目:終わりもチーズ

「…………」

目を開けると、光の線が繭のように僕を覆っていた。

何かを叫ぶクレイヴの声が聴こえた。

「ハッ!…馬鹿馬鹿しい―――ドルヴァースは森と同時に消えたハズだ…!」


僕はふと、『森』という言葉で思いだした。

そういえば森で出会った老ネズミ……ロバートさんは――?

もしかして……。

僕は自分の体に力が戻ってくるのを感じた。光の繭の中は暖かく優しさに満ち溢れて居た。やがて繭は塵のようにキラキラと光ったかと思うと静かに消えた。もう体から血は一滴も流れていない。それどころかまるでバブルフレッシャーに乗った直後のように体が軽いのだ。

体に異変が生じたのは僕だけでなかった。

ドルヴァースの羽に触れた全員……そう、キップ隊長も、ヒルトンさんもジェニーもスティックも。皆寝惚け眼で辺りの様子を探るように体を起こした。「……みんな!!」

僕は瞬時に体を起こし駆け出した。笑顔のスティックに抱きつく。

「ユウキ!…ごめん……俺、何にも知らないでお前に……」

「いいよ……それより今はクレイヴだろ?」

「俺からも謝る…すまなかった、ユウキ」

そう言うとアランは頭を下げた。僕は慌てて首を振った。

生き返ったジェニーは、小さな嘴で滑らかな毛を繕う青い鳥を見とれていた。

「…ドルヴァース……命の鳥」

「命の――鳥」

やがてドルヴァースはキラキラ光る長い尾を揺らしながら空中に舞い上がると、何かを歌うように鳴きながら洞窟の奥へと飛んで行ってしまった。

それを見届けた僕らは、混乱し必死に歴史本を捲るクレイヴを見据えた。

「何で…!あぁ、ドルヴァース……森の象徴とされた命の源である羽を持つ獣である……」

「クレイヴッ!!」

ギョロりとした爬虫類のような黄色の目でヤツは僕らを振り返った。

「揃いも揃って生き返り……気安く私の名前を呼ぶんじゃない――カスネズミ共」

クレイヴの歴史本を持つ手が震えている。

すっかり生気を取り戻したキップ隊長は力強く踏み出した。

「どうやら自分の立場をわかっていないようだ」

僕らも隊長の後ろから付いていく。すると洞窟全体が揺れ始めた。今まで何度か洞窟の揺れを体験したが、まるで洞窟を掻き回すゆうな揺れ。思わず僕らは地面に倒れ込み、壁からは岩が剥がれ落ち始めた。

「…ハッ!立場がわかって居ないのはお前らだ――私が宝を手にすれば、死ぬのはお前ら等の方だ…!」

多少なりとも動揺している様子のクレイヴは、本を見開き叫んだ。

『いざ、偉大なるレジェンド・我に力を与えん』

次の瞬間、洞窟の全ての壁から岩が剥げ落ち、壁はマリンブルー…まるで宝石のように輝く海の中に入ったように透け、発光した。

「な、何だこれは…宝はどこだ!?宝は――ッ!」

クレイヴは狂ったように辺りを探った。

「…一体どうなってるんだ?」

「ふと僕は近くの壁に何かが彫ってあるのに気が付いた。

「ジェニー見て、これ……」

「……何だ?」

壁にはこう書いてあった。

『この世に唯一無二である宝……それは心優しいモノの中にある存在。つまり宝とは君たちの中にある』

「………」

顔を見合わせた僕とジェニー。それを聞いたクレイヴは目を見開き卒倒した。キップ隊長は肩をすくめた。

「何だ……そういう事か。こりゃ一枚取られたな」

ヒルトンさんはそんなキップ隊長を見て軟らかに微笑んだ。

「…私たちの中にあるもの――か」

辺りを見渡すと、スティックとアランがまた空間に暗闇の穴を開けていた。

「……」

僕は二匹を見据えた。視界がグンと濁って緩んだ。

悲しくなんかない――

「隊長……俺たち自分の国に戻ります」

小さいながらも芯の通ったスティックの声に、僕の横に居た隊長は誇らしげに頷いた。

「あぁ…行ってきなさい」

ヒルトンさんも頷いた。

きっと、隊長とヒルトンさんは宝を手に入れた。


じゃあ…僕達は――?


「ユウキ」


後ろからヒルトンさんの声がした。

「確かキミが私と初めて出会った時…迷子だったよね?ベットの下から来たと」

「………ハイ」

ならば、とヒルトンさんは僕の手を取って言った。みんなの視線が此方を向いた。

「…キミも国に帰るべきだ。私達と一緒にいるべきではない」

ギュッと握られた手に力が篭り、心臓がドクリと唸った。 何か悲しいものが近付いているような…そんな空気だった。

「―――そうだ」

ゲートの前に居たスティックとアランが駆け寄ってきた。

ヒルトンさんに握られた僕の手を奪い、何かを押し付けた。

「俺たちとお前の…あ〜。恥ずかしいな、とにかく握れや」

言われた通り握る。

「また…会えるよね?」

僕は思ったより声が震えていないのに驚いた。アランは歓迎会以来の弾けるような笑顔を見せた。

「もちろんさ」

間極まったスティックは僕を抱き締めた。それも…あまりの圧力に気がおかしくなりそうな程だ。

「――ユウキ。お前、いい奴だった!今まで特殊部隊に居てお前程お人好しはいなかった!」

チーン、と鼻水を煤る音がした。

するとスティックの上からジェニーもキップ隊長もヒルトンさんも覆い被さって来た。アランは遅れたとぼや気ながら最後に僕にのしかかった。

「その通りだ!また何処かで会おう」

ジェニーが悪戯っぽく言った。

「きっとだ」

ヒルトンさんとキップ隊長が顔をクシャクシュにして笑った。

「みんな――」

しかし暗いゲートが、早くしろとばかりにウンウン唸ったので、僕らはあまりじゃれあえなかった。アランは、スティックに言った。

「そろそろ行かないと…ゲートがお怒りだ」

それぞれがそれぞれと、体を離す。

そして僕とスティックとアランはゲートに向かった。

微かに涙で目をにじませたジェニーは、意地を張るように口を曲げた。

「短い間だったが、三匹とも元気でな!」

キップ隊長が言った。いつの間にかヒルトンさんの横にはサラさんが居た。穏やかな表情で微笑んでいる。

「皆さん、元気で!」

僕が叫んだ瞬間、スティックとアランは目の前に現れたマルコさんに驚き、次に笑った。きっと、三匹は一緒に国に帰るんだ。

僕はそう思い、ゲートに足を入れた。


みんな手を降りながら、消えて――……







気が付くと、僕はベットに横たわっていた。カーテンが静かになびく窓からは、オレンジ色の夕日が差し込んでいた。

「…………まじかよ」

僕は今までの事が夢なのかと思った。しかしそんなハズは絶対にない。クレイヴの牙に感じた激痛。


それに――…


「……キ、ユウキ〜?」

ガタガタと階段を登ってくる音がしたので、慌てて体を起こす。入れ替わりにガチャ、とドアが開き、母さんが顔を出した。眉を潜めて、不思議そうな顔をしている。

「ユウキ?夕食出来たわよ、早く降りてきなさい…」

「あ、うん。わかった――」


ふと机の上を見ると。




そこにはちゃんと

一欠片のチーズが置いてあった。

ようやく終わりました…感想・批評頂けたらとても嬉しいです、


PS、ネズミを見てもあまり叩いたり追い払ったりしてあげないで下さい(笑)

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