3話
放課後、ソフトボール部のグラウンド。
女子たちがキャッチボールを終え、整列している。
そこへ、野球部の男子たちがぞろぞろと現れた。
中村を先頭に、吉田、圭吾、田島、佐々木。そして、少し離れて立つ翔。
「え、何この空気」
「中村、いけ!」
「よし…俺が代表で言う!」
中村が一歩前に出て、深呼吸した。
「女子ソフト部の皆さん!お願いがあります!」
千夏が眉を上げる。「…なに?」
「大会、俺ら勝ったら…一緒にプール、行ってください!」
一瞬、沈黙。
遥が眉をひそめる。
「…なんで私たちが?」
「いや、勝ったらっていう条件付きで!ご褒美的な!青春的な!」
「青春的なって何」
「なんかこう…部活の絆的な!」
「絆はプールで深まるの?」
「深まります!たぶん!」
圭吾が割り込む。
「要するに!俺たち、勝ったら水着が見たい!」
「は?」
「アウトー」
「即退場ー」
「圭吾くん、今のは完全にアウトだよ」
「てか、何勝手に“合同”って決めてんの?」
「まず、勝ってから言え」
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田島が、申し訳なさそうに言った。
「いや、ほんとに勝ちたいんだよ。
でも、人数ギリギリで、ピッチャーも俺と翔だけで。
だから、モチベが欲しいっていうか…」
翔は黙っていた。
でも、女子たちの視線が集まるのを感じていた。
遙が、静かに言った。
「翔くん、投げるの?」
「…たぶん」
千夏が、少しだけ笑った。
「じゃあ、勝ったらプール。
ただし、条件付き」
「条件?」
「水着は各自の判断。
浮かれすぎたら、即中止。
あと、SNSに上げたら、全員沈める」
「沈めるって、物理的に?」
「水中で、ね」
「バタフライで沈める」
「クロールで追い込む」
「平泳ぎで囲む」
「泳法で制裁すんな」
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遥がため息をついて、ぼそっと言った。
「…私はマネージャーで行くだけだから」
その瞬間、男子野球部が爆発した。
「よっしゃああああああああ!!」
「遥も来るってぇぇぇぇ!!」
「水着って言った!水着って言ったよな!?」
「プールきたあああああ!!」
「勝つぞ!絶対勝つぞ!!」
「走り込み100本だ!!」
「それ、球速に関係あるか?」
「関係ある!気持ち的に!」
「俺、浮き輪買う!イルカのやつ!」
「俺、ゴーグル買う!曇らないやつ!」
「俺、日焼け止め買う!SPF50!」
「それ、野球関係ねぇ!」
女子たちも騒ぎ始める。
「え、どうする?水着買わなきゃ!」
「やばい、去年のやつサイズ合うかな!?」
「髪どうする?まとめる?巻く?」
「日焼け止めって、どれがいいの!?」
「てか、男子とプールって、何着ればいいの!?」
「やばい、テンション上がってきた!」
「青春って、こういうこと!?」
「でも、浮かれすぎたら沈めるからね」
「制裁は泳法で」
翔は、グラブを肩にかけながら、静かに言った。
「…お前ら、動機が雑すぎる」
圭吾が笑いながら答える。
「でもさ、雑でも本気になれるのが、青春ってやつだろ?」
翔は、少しだけ笑った。
「…じゃあ、俺が投げる。お前ら、泳げ」
「任せろ!俺、バタフライできる!」
「俺、平泳ぎで逃げる!」
「俺、クロールで突っ込む!」
「それ、野球関係ねぇ!」




