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13話
大会初戦。
快晴。
風、微風。
観客席には、ソフトボール部の姿もあった。
野球部は、1点をリードしていた。
三回裏。
先発・田島は、全力で投げていた。
「ナイスボール!」
「いいぞ田島!」
「あとひとつ!」
だが、四回。
球速がわずかに落ちた。
五回。
コントロールが甘くなった。
六回。
先頭打者に四球。
次の打者にヒット。
無死一、二塁。
ベンチがざわつく。
吉田がマウンドに駆け寄る。
「田島、どうする?」
田島は、肩で息をしながら言った。
「…もう、限界かも」
ベンチから、監督の声が飛んだ。
「ピッチャー交代!翔!」
翔は、静かに立ち上がった。
グラブを握り、帽子を深くかぶる。
ベンチを出て、マウンドへ向かう。
観客席がざわつく。
ソフトボール部の女子たちも、息を呑んで見つめていた。
遥が、ぽつりとつぶやく。
「…来た」
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マウンド。
翔は、田島からボールを受け取った。
田島が笑う。
「頼んだぞ、リリーフ」
翔は、うなずいた。
「…流れ、止める」
吉田が構えに戻る。
スタンドが静まり返る。
打者がバットを構えた。
翔は、ボールを握った。
指先に、沈む感覚を探る。
風が止まる。
時間が、少しだけ遅くなる。
そして、翔は腕を振ろうとした——
(つづく)




