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困っているのはリリーバー  作者: 双鶴


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12/14

12話

試合前日。

グラウンドには、いつもより多くの声が響いていた。

野球部の練習は、異常なほどの熱量だった。


「走り込み、あと20本!」

「ノック、もう一周!」

「ブルペン、翔あと10球いけるか!?」


「…いける」


翔は、黙々と投げ続けていた。

吉田がミットを構え、受け続ける。

田島は、ベンチでフォームを確認しながら、静かに汗を拭いていた。


圭吾は叫んでいた。


「明日勝ったら!プール!水着!青春!全部来るぞ!!」

「俺、勝利のために眉毛整えてきた!」

「俺、勝利のために香水買った!」

「それ、野球関係ねぇ!」


佐々木は笑いながら言った。


「でも、関係ある気がしてくるのが、青春だよな」


---


そのとき、ソフトボール部がグラウンド脇に現れた。

遥、千夏、真帆、美月、陽菜、紗季。

練習を見守るように立ち止まり、静かに声をかけた。


「…頑張ってるね」


「明日、応援行くから」


「勝ったら、ちょっとだけ考えるよ。プールのこと」


「でも、浮かれすぎたら沈めるからね」


「泳法で制裁するから」


遥は、翔の背中を見つめながら言った。


「…沈ませて。ちゃんと」


翔は、グラブを握り直した。


「…任せて」


---


その瞬間、野球部が爆発した。


「よっしゃああああああ!!」

「女子が見てる!応援来る!プールの可能性がある!!」

「俺、明日勝ったら告白する!誰かは未定!」

「俺、勝ったら水着買う!誰のかは未定!」

「それ、犯罪だろ!」


吉田が冷静に言った。


「お前ら、邪な決意が混ざってきてるぞ」


圭吾が叫ぶ。


「でも!邪でも!熱でも!全部まとめて青春だろ!!」


翔は、最後の一球を投げた。

ミットに沈む音。

吉田が受け止めて、静かに言った。


「…整ってる。

明日、いけるぞ」


翔は、空を見上げた。

夕焼けが、グラウンドを赤く染めていた。


「…沈ませる。全部」


---


練習後。

野球部員たちは、それぞれの帰り道についた。

誰も口には出さなかったが、心の中では叫んでいた。


「勝つぞ」

「沈ませるぞ」

「プール、行くぞ」

「モテるぞ」

「青春、来るぞ」


翔は、ひとり歩きながら、グラブを握った。


明日、沈む球が本当に沈む。

そのために、今日、燃え尽きる。


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