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困っているのはリリーバー  作者: 双鶴


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11/14

11話

「投稿、完了っと」


圭吾がスマホを掲げた。

翔のフォーム動画。

高梨トレーナーの助言を反映した最新版。

スロー再生付き、解説テロップ付き、BGMはなぜか「風の中の少年」。


「タイトルは“沈む球、最終形態(仮)”!」


「“仮”ってつける意味ある?」


「ある。進化は止まらないってこと!」


翔は、スマホを見つめながらつぶやいた。


「…止まってないのは、お前のテンションだろ」


---


投稿から数時間後、コメントが続々と届いた。


「肘の位置、前より安定してる」

「顔の残し方、すごく良くなった」

「沈むというより、滑って落ちる感じ」

「回転数、もう少し上げられそう」

「リリースの瞬間、左肩が開き気味かも」


翔は、ひとつひとつのコメントを読み込んだ。

匿名の誰かが、真剣に見てくれている。

それが、嬉しかった。


「…まだ、直せる」


---


その日の夕方。

グラウンドのブルペンに、三人の影が並んだ。

先発の田島、キャッチャーの吉田、そしてリリーフの翔。


田島が言った。


「大会、初戦の相手、打線強いらしい。

俺、三回までは全力でいく。

でも、四回以降は…頼むな」


翔はうなずいた。


「…三回まで、流れ作ってくれ」


吉田がミットを構えながら言った。


「俺が間をつなぐ。

お前らの球、どっちも受けてるから、呼吸は合わせられる」


三人は、順番に投げた。

田島の直球。

翔の沈む球。

吉田の構えが、少しずつ変わっていく。


「田島の球は、押し込む構え」

「翔の球は、引き込む構え」

「間の取り方、リズム、全部変える」


吉田の声が、静かに響いた。


「でも、どっちも“勝つための球”だ。

俺が、ちゃんと受ける」


翔は、グラブを握り直した。


「…じゃあ、俺は沈ませる。

流れを、止める」


田島が笑った。


「頼もしいな、リリーフ」


翔も、少しだけ笑った。


「…任せとけ。

沈む球は、整ってきた」


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