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困っているのはリリーバー  作者: 双鶴


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10/14

10話

放課後、ソフトボール部のグラウンド。

そこに、野球部全員が整列していた。

中村が一歩前に出て、深呼吸する。


「女子ソフト部の皆さん!お願いがあります!」


千夏が眉を上げる。「…また?」


「異種交流戦を、ぜひ!

俺たちと、試合してください!」


真帆「なんで?」


「試合のためです!勝利のためです!そして…プールのためです!」


圭吾が叫ぶ。


「俺たち、勝ちたいんです!

でも、実戦経験が足りないんです!

だから、強い相手とやりたいんです!

そして、勝って、プールに行きたいんです!!」


女子たちがざわつく。


「またそれか…」

「でも、試合って言われると、ちょっと燃えるよね」

「てか、翔くんの球、見てみたいし」

「え、ちょっと待って、それ私も思ってた」

「…やるか。交流戦。こっちも、ちょっと試したいことあるし」


遥は、翔の方をちらりと見て、静かに言った。


「…受けて立とう。試合、しよう」


---


その瞬間、野球部が爆発した。


「よっしゃああああああ!!」

「異種交流戦きたああああ!!」

「これ、勝ったらプール確定じゃね!?」

「てか、勝ってなくても、もう青春じゃね!?」

「俺、バットに願掛けする!“水着祈願”って書く!」

「俺、グローブに“浮き輪”って刺繍入れる!」

「それ、野球関係ねぇ!」


翔は、少し離れた場所で、静かにグラブを握っていた。

でも、口元にはうっすら笑みが浮かんでいた。


---


交流戦に向けて、野球部の練習は一気に熱を帯びた。

走り込み、ノック、ブルペン。

翔の投球にも、さらに磨きがかかる。


吉田がミットを構えながら言った。


「翔、今日の球、沈むっていうより…刺さるな」


「…それ、褒めてる?」


「もちろん。

沈んで、刺さって、勝って、プールだ」


翔は、少しだけ笑った。


---


そして、交流戦当日。

野球部 vs ソフトボール部。

真剣勝負。

結果は——野球部の勝利。


だが、試合後。

千夏が言った。


「今日は、試合。

プールは、また別の話」


「そもそも、そんな約束してないし」

「勝ったからって、即プールってわけじゃないし」

「てか、まだ春だし」

「水、冷たいし」

「…でも、いい試合だったよ」


---


野球部は、しばらく沈黙した。

だが、次の瞬間——


「でも!勝ったってことは、モテるってことじゃね!?」

「モテるってことは、プールで声かけられるってことじゃね!?」

「声かけられるってことは、夏が来るってことじゃね!?」

「夏が来るってことは、青春が始まるってことじゃね!?」

「よっしゃああああああ!!」

「プールきてないけど、気持ちはプールだあああ!!」


翔は、グラウンドの隅で、グラブを肩にかけながらつぶやいた。


「…妄想で走れるなら、それも才能だな」


吉田が笑った。


「お前の球も、妄想から始まっただろ?」


翔は、少しだけうなずいた。


「…じゃあ、次はもっと沈める」


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