第8話 職業による違いと授かるスキルの選択
主人公は、3つスキルを授けるから選んで、と神らしき存在に言われました。
なので、欲しいスキルを3つ選ぶようですが、その知識の源泉は前世で言う義務教育から得ている。
しかし、教育を同じように受けている人であっても得られるスキルは違う。
その理由は。
スキルをアルティメット(至高)のランクで3つ授ける。
そう神らしき存在に言われて、今まで習って来ていたスキルに付いて思い出す。
と言うのも、この世界では、成人の祝福で神に与えられる又は素質に応じて就ける様になるとされている職業も重要だけど、その人の得るスキルもその人の人生を左右しかねない程、重要なモノだから。
そして、その得られるスキルについては、その人の就く職業だけでなく、経験とか知識とか努力とか才能とかによって違って来るとされている。
なので、6歳から16歳まで、ほぼ毎日30分から4時間程度、村の集会所兼学校や自宅で国が用意している教材を使ったり指導員に指導してもらう等、毎日スキルに付いて学習したり訓練したりして来ている。
そして、成人の祝福で選択できるようになった職業を選ぶと、それまで得ていたスキル取得の為の経験値が選択した職業に応じて増減され、スキルを取得したり、遠からずスキルが取得出来る様になったり、取得した上でレベルやランクが上がったりする、とされているんだけど。
でも、どれだけ訓練等をしていても、スキルを得られない事もある。
まあ、逆に人によってはベーススキルではなく、ノーマルスキルをそれなりのレベルで取得出来たとか、ユニークランクで取得出来たとか有るんだけどね。
その理由なんだけど、既にふれた通り、選択した職業に応じて増減されると言った理があるから。
具体的に言うと、多くのスキルには職業の恩恵・弊害と言うモノが存在する。
例えば、戦士職ならば、剣技スキルに『職業の恩恵があり』、水泳スキルに『職業の恩恵がなく』、火魔法スキルに『職業の弊害がある』と言った形になる。
ステータスウィンドウ内のスキル欄にスキル名称だけでなくその経験値も表示されるので、それを元に昔の人が色々と検証し、その結果が教科書に載っているんだけど……。
職業の『恩恵がある』場合は『無い』場合の10倍のスキル経験値が得られ、職業の『弊害がある』場合は、職業の『恩恵が無い』場合に比べスキル経験値が10分の1しか取得出来ない、と検証結果が出ているんだよね。
つまり、職業の恩恵のある人は、職業の弊害がある人の100倍もの経験値を取得出来る。
そして、それとは別に各個人に各スキルの才能の有無があり、才能がある場合は1~4倍の経験値が。
才能がない場合は1~4分の1の経験値しか得られなくなると俺達は教わっている。
つまり、職業による補正と才能による補正で、全然スキルの取得や成長の労力が違うと言う事。
そういう事をスキルについての学習時に知らされる俺達は『他人の2倍努力をしたから、どうにかなる』なんて事は無い、厳しくて残酷な世界だ、と嫌と言う程知っている訳だ。
そして、俺が就けるとされている勇者職は、魔族や魔物だけのスキルやどの職業でも恩恵も弊害も無い『職業の影響なし』とされているスキル以外は、全て職業の恩恵があるチート職業だ。
つまり、多くのスキルを取得出来る上に、楽に高ランク高レベルに出来ると言う事。
そして、更に取得できるスキル数も勇者職はチートと言える。
と言うのも、先ず前提として職業と職業レベルで取得出来るスキル数に制限があると言う世界の理の存在があるからだ。
例えば、最下級職とも0.5倍職と言われる生産者職の場合、生産者LV1だと1に0.5倍され、切り上げされて1つのスキルしか取得できない。
これに対し、10倍職とも呼ばれる勇者ならレベル1でも、1に10倍した10個までスキルが取得できる。
更に言えば、ステータスも全てのステータスが違って来る。
あの異世界では、体を鍛えても筋肉が付きにくく強くなり難い。
鍛えれば筋肉が付いたり・反射神経が良くなったりするのではなく、職業に就く事や職業レベルが上がる事で強くなれると言う事なのだろう。
また、生まれついての個人差は少しあるし、16歳になるまでステータスは成長するとか、老化が始まると緩やかにステータスが下がり始めるとかが有るんだけど、成人時の基礎となる各ステータスは200近辺になっているそうだ。
友人に聞いたステータスからすると、それは間違いない事実。
そして、例えば筋力ステータスが200だとすると、0.5倍職の場合200を基準とし0.5倍した数値が加算されLV1の時に300となる。
これが10倍職だと、200に10倍した数値を加算されLV1でも2200と言うステータスになると言う違いもある。
しかも、筋力、知力、耐久、精神、俊敏、器用、HP、MPと言う8種のステータスが全て。
更に、職業による補正数値は、職業レベルが1上がる毎にLV1時の職業補正値の10%ずつ上がっていくから、レベルが上がれば上がる程バカみたいな違いになっていく。
つまり、就ける職業によってステータスは絶望的な程に違って来る事になる。
と言う事は、俺はあの世界で異質とも言える力を得る事が出来る。
まあ、天騎士、賢者、聖者の様に6倍職と言った職業もあり、油断できる差ではない気がするけど。
でも、それも数は少ないらしいからな。
そんな風にあの異世界の事を思い出していると、こちらを観察している感じの神って感じの存在。
ああ。
待たせたら駄目なのかな。
そう思いつつ、得るスキルを決める。
隠れる為の力か。
出来るだけチートな力が欲しいけど。
悪名高き『魅了』とか『支配』とか『精神魔法』とか、使い方次第では隠れるのに役立ちそうだけど。
でも、たった3つしか貰えないそうだから。
となると、先ずは偽装スキルか。
「まあ、そうなるよね」と神らしき存在からも進められたので、先ずはこれか。
ステータスウィンドウを偽装し、勇者職ではなく戦士職とかに変えられるし、持っているスキルも持っていない事に偽装できるし。
最初からアルティメットスキルまで成長させた状態で得られるから、これで多くの場合で力を隠せるだろう。
後は……、空間魔法スキルか。
「それも、あった方が良いだろうね」
神らしき存在の認識は、あった方が良い程度の様だけど、チートスキルの一つだからな。
空間をある程度操作できるから、『亜空間収納』魔法と呼ばれる自分だけの空間である亜空間を造り、そこに物を収納する力。
『亜空間部屋』魔法と呼ばれる、亜空間に俺自身が生活できる空間を作る力。
『転移』魔法と呼ばれるあちらこちらに瞬間移動できる力が得られる。
つまり、持っているモノを隠せるし、自分が隠れる場所も造れるし、多くの場合で逃げ出す事の出来る移動手段が手に入る。
まあ、贅沢を言えば空間を操作して攻撃する力も取得出来たら良かったんだけど、それは似たようなのが次元魔法と言う名前で別にあるんだよな。
最後は……、幸運スキルか。
「へ~。それを選ぶんだ。まあ、しょうがないか」と何故か嫌そうな神らしき存在。
「あまり良い選択肢では無いのですか?」
「運は大切だろうね。運悪く見つかる・バレルって事が減るだろうから。
でも、アルティメットでLV6まで鍛えれば他人を不幸にする事は出来るけど、他人に対し運が良くする事は出来ないよ。
それに幸運・不運って、塞翁が馬みたいな事もあるでしょ。
その時は不運な事が起こったけどそのお陰で10年後には良い事があった、みたいに。
自分は不運だと思ったけど、他人から見たら幸運とか、曖昧だったり判断が難しい部分もあるし。
他にも、運とか関係なく選択を間違えた結果酷い目にあうと言った事はあるだろうし、幸運スキルがアルティメットランクだとしても、君が思っている様に順風満帆の人生となるわけじゃないよ」
「そうなんですか」
「ふ~ん。運で全てを乗り越える、と言った理由だけで幸運スキルを選んだんじゃないんだ」と神らしき存在は俺があまり残念そうにない事から、幸運スキルを欲する理由を更に聞いて来る。
「ええ。魔物を倒した後の宝箱が出易くなるし宝箱の中身の質も良くなるんですよね」
「そうだよ。それで選んだんだ」
「それも、ですね。不運というのが怖いと言うのもあります。多分、両親もそれで帰ってこなかった、と思っていますし」
「あ~。運悪く、凶悪な魔物にあったからか」
そう。
俺の両親は、多分運が悪くて帰ってこなかったから。
主人公の両親は、何故帰ってこなかったのでしょうか。
〔スキルと職業に関する参考資料〕
〇が職業の恩恵有り、△が職業の恩恵無し、×が職業の弊害有りです。
格納箱スキル(生産系職業△、戦士系×、斥候系△、神官系△、魔法使い系△、テイマー系△、付与師系△、精霊使い系△、召喚士系△、傀儡師系△、死霊術士系△、天騎士系△、賢者系△、聖者系△、勇者系〇)
火魔法スキル(生産系職業×、戦士系×、斥候系×、神官系△、魔法使い系〇、テイマー系×、付与師系△、精霊使い系△、召喚士系△、傀儡師系△、死霊術士系△、天騎士系〇、賢者系〇、聖者系△、勇者系〇)
時間魔法スキル(職業の影響なし)
暗黒魔法スキル(魔物・魔族用のスキル)
こんな感じで、全てのスキルが設定されています。




