第53話 取り調べ
主人公達は、強盗達を討伐後、町に到着したようですが。
また、嫌な奴が出てきます。
強盗達の遺体は埋めて、街道を走り続け、チャリス町の城壁が見えて来た。
改めて門に掲げてある旗を見ると、今朝出立したハリアガ市と同じ旗なんだよな。
それは、領主が同じって事になる筈。
それに嫌な予感を更に覚えるが、被害者のアレン達の判断に任せるしかないかな。
俺が駄目だと強制すると、真面目なアレンは余計変な方向に爆発しそうな気がするし。
途中、『もし衛兵たちに強盗に襲われたと訴えるのなら、頭に来たら何も言うな。切れても何も言わず、何もするな。余計事態が悪くなる』と言い含めたけど、どうなるかな。
あそこまで色々と言ったから、衛兵への報告は諦めてくれると思いたいけど、アレンは基本的には人を信じるタイプだからな。
しかも、自分だけでなく、ミリアとシャロンまで悲惨な目にあったから、黙っていられない気もする。
だけど、それがより悪い結果になるかもしれない、と言ってあるんだけど。
どうなるか分からん。
だから、薬草採取にも、魔物狩りにも行かず、格納箱と亜空間収納と魔法の袋内の整理をしてきた。
その過程で、可能な限りMPを回復させながら、魔石の在庫に応じ下級魔生薬も造ったし、下級万能薬すら可能な限り造った。
結果、下級万能薬18錠と、下級魔回薬72錠が造れたけど、さてどうなるか。
多分、中身の提示を強制される格納箱から、隠してある亜空間収納へのモノの移動も色々と考えてシッカリ行った。
まあ、アレンが訴えたとしても、真面な衛兵達に当たれば問題は無い筈なんだけど。
訴えないで欲しいな。
そう思いつつ、城門へ到着した。
結局、城門でアレンは強盗に襲われたと訴えた。
その結果、衛兵団の詰め所にある尋問室に4人とも監禁されている。
事情聴取だそうだ。
衛兵達は男女を分けようとしたんだけど、シャロンが気が狂ったかのように騒いだので、何とか4人で一緒に居られるのは良かったのだろう。
「しかし、君達は無傷だね。なのに、強盗団に襲われ、傷だらけになりながらも撃退したと主張しているが、旅人を襲ったのは君達じゃないのか」
その言葉に、アレン達3人は必至で耐えている感じ。
俺が、強盗に襲われたと訴えるなら、頭に来ても冷静に対処し、暴力に訴えたりしない。
切れて暴れたり、叫んだりしないと約束しろ。
でないと最悪の事態になる、と言い含めてあるから。
いや。
目の前の騎士団員に絶望しているのかもしれない。
なので、既に3人は何も言う気はない様だ。
訴えたのが失敗だったと嫌と言うほど実感しているだろう。
だから、俺だけが騎士や衛兵達に対応している。
「ミリアが大神官職で、その傷治療魔法で治療後にエリクサーで治療しましたから」
「そのエリクサーはどうやって調達したんだい」
「俺が、薬学スキルを持っているので、その力を使い、万能草を採取して、それを代金にしてエリクサーをハリアガ市で造ってもらったので」
「ふ~ん。万能草なんて、そうそう手に入る物じゃないけどね」
「ええ。採取に向かったら目の前の魔物が湧いて死にかけましたけど」
「ほう。まあ、君のスキルなら可能なんだろうね」
そう嫌な笑みを浮かべながら聞いて来る領軍の騎士団に所属していると言う嫌味そうな男。
アレンが強盗に襲われた、と訴えた後、4人とも他人に詳細に表示するモードでステータスウィンドウの表示を強制させられ、更に鑑定スキル持ちに鑑定され、俺達の取得しているスキルは衛兵達にも目の前の騎士団員にもばれているからな。
まあ、俺のスキルは偽装後のモノだけどね。
しかも、町に到着するまでに生産しつつも下級魔回薬で可能な限りMPを回復させてきたおかげで、今は偽装強度を100%にしてある。
幸い、ここは首都では無いから、俺の偽装を見破れる程の力を持っている人は居ない、とは思うが、心配ではあった。
だけど、今の処大丈夫そうなのかな。
「イサム君だっけ。まさに暗殺者って感じのスキルだよね。うちの斥候部隊に入るかい」
「いえ。力不足です」
「君は、成人の祝福を受けたばかり。なのに、隠形スキルは既にノーマルランク。偽装スキルも秘匿スキルもベースランクとは言え取得している。
更に、ベースランクの影魔法にノーマルランクの幻影魔法だよ。ここまでスキルが揃っている人材は、我らが領軍にも数える位しか居ないんだけどね」
「でも、スキルランクとレベルが低すぎるでしょ。こんなのでは、斥候部隊に入っても生き残れる気がしませんが」
「ふ~ん。それで、君は格納箱スキルも持っているし、魔法の袋も持っている。それを確認させてもらおうか」
既に取り上げられている皆のバッグや魔法の袋だけでなく、やっぱり、格納箱内も調べられるのか。
予想通りそう言われたので、格納箱からも全て出して衛兵たちに見せる。
格納箱に入れたまま隠していても、バレない気もするが、一応誠意を示すと言う事で、要求に応じてみる。
格納箱スキルのランクとレベルに応じた荷物数を出せば、隠しているとは思われないだろうし。
すると、魔法の袋、皆のバッグ、格納箱から出したコンテナや袋を物色し始める騎士団員と衛兵達。
「本当かよ。これは、オーガが持っている鉄ミスリルの巨大金棒だぞ」
「こっちは、万能草が8つも。魔力草も20もあるぞ」
なんて、騎士団員や衛兵団員が騒いでいる。
「ああ。その辺は、うちの女性陣の私物なので勘弁してもらえませんかね」
「ん。強盗で得たモノかもしれんだろう」と先程から嫌な事を言ってくる騎士団員は嫌な笑顔で言って来る。
「違う。それは、母が大切にしていた遺品の指輪とネックレスです」
そうシャロンが訴えているが。
「そう言い訳する強盗も居るからな」と、あの騎士団員は話を聞こうと言う感じはないな。
ミリアの両親の遺品の指輪とネックレスも衛兵達が持っていく。
大切にしていただろうに。
隠しておけばよかった。
シャロンとミリアが持っていた指輪やネックレス。
万能草8単位と魔力草20単位。
鉄ミスリルの巨大金棒やハイオークが持っていた鉄ミスリル製の武器と中級エリクサー1本と中級魔回薬20個。
魔法の袋(小)。
大ミスリル貨とミスリル貨。
格納箱と魔法の袋に入っていた全ての魔石、魔物の皮、魔物の肉。
それらを俺達の目の前に置き、こう聞いて来た。
「これらを証拠として騎士団に提出するなら、強盗などする必要が無かったと認めるがどうする?」
そう嫌な笑顔で笑っている俺達を取り調べていた騎士団員。
もう、屑騎士って呼び名でいいか。
「まあ、無実を証明する為には、しょうがないですかね」
俺がそう言うと、アレンが顔をゆがめながらピクっと動いたが何も言わない。
何を言った処で、因縁をつけられて余計に状況が悪くなると言い含めてあるからか、こいつらがどうしようもない奴だと我慢しているからか。
「ああ。証拠品の提出、ご苦労だったね」
そう言われて、半日の拘束を終えて、俺達4人は夜中に町に放りだされた。
主人公達は、悪い方に予想していた通りになった感じです。




