第351話 目立ちたくないけど
主人公は、色々と考えて感知系の力の強化として心眼スキルをアルティメットLV1に。
しかし、それでも感知出来なかったゴブリンアサシン2匹から奇襲を受け、なんとか撃退しました。
「ふう」とため息をつきつつ、腰に付けた小さめの袋から中級エリクサーを出して飲む。
それで、ゴブリンアサシンのミスリルの小刀から付与された呪いも毒も消え、MPも回復してくれたが。
しかし、頭部を狙われ脳を破壊されていたら、意識を奪われ死んでいたな。
ああ。
勇者職のステータスの頭蓋骨なら、あの程度の攻撃だと脳まで達しないんだ。
まあ、それは朗報だけど。
心眼スキル、アルティメットにしても、感知できなかったじゃんか。
どうなっているんだよ。
と突っ込みたいところだが。
そう思っていると、幾つものスキルが『事前に説明した通り、ユニークからアルティメットランクの隠形や偽装スキルや秘匿スキル持ちが、互いにスキルを掛け合いより強力に隠れている為に見破れなかったのだろう』と言ってくる。
確かにそんな説明を聞いたけど、後ろから刺されたりすると愚痴りたくなるんだよ。
はあ。
複数の力を纏められたら、って説明があったけど、他の存在と協力し合うのも当然それになるんだろうな。
まあ、他の存在に強力な力を行使するんだから、その分MPを使う事になる。
だから、数匹が隠形等を掛け合っている程度なのだろう、って話だけどさ。
ああ。
魔物は基本最大MPが多いんだったか。
そう考えると、アルティメットの心眼程度では。
……。
キリがないな。
それでも、地道に力を上げていくしかないか。
ポチとフクと力を重ねることも含めて、今後要検討だな。
「くゎっ」
「キューン」
そう思いつつ、城壁の下を覗き込むと、未だ登ってきているゴブリンスカウトが居たので、魔力弾を撃ち込む。
そして、城壁に沿って風弾を撃ち込んで、城壁に取り付いている感知出来ていない魔物がいないかを確認。
城壁の上に意識を戻し、中級MP回復薬を飲んでMPを回復。
魔力弾を大量発生させ、人を避ける設定にして、高さを変えて城壁の上を走らせる。
流石に2度目ともなると、城壁の上にいた騎士や兵士達は落ち着いたもの。
それで魔物が現れないか、皆で周りを注視しているが、大丈夫そうか。
まあ、断言はできないんだけど、流石に強い奴はネタ切れだと思いたい。
「はあ」と言って、周りの様子を見ていると、アレンは既に近くにいて「イサム」とか不安そうな小声で言っているが。
好青年は、何を気にしているのかね。
ミリアとシャロンも、不安そうにアレンの身に付けているバックを握っている感じ。
ポチやフクは、もう落ち着いていて、周りを警戒しているか。
そういえば、俺のお付きって感じになっていた感じの騎士のエッカルトさんも近くにいるが、何も言ってこないね。
そう思いつつ、状況を把握することに努める。
暗殺部隊は、南側の城壁近辺ではネタ切れっぽいかな。
まあ、ゴブリンニンジャやゴブリンアサシンが、他の場所に全く居ない、と言う訳ではなさそうだけど。
隠れて暗殺ではなく素早い動きで攻撃する、ってパターンで今現在戦っているみたいだから、隠れるのが不得手な連中かな。
そう状況を把握し続けていると、苛立った雰囲気の強い気配たちが近づいて来ている。
ハイオーガ以上の個体が攻めて来るのか?
そう意識した処で、ここの指揮官のマウロさんがやってきた。
「ゴブリンの暗殺部隊は、ほぼ倒したのだろうか?」
「多分、ですけどね。俺じゃあ、感知出来ないゴブリンが多すぎて、とても断言できるような状況じゃないですけど」
「そうか。なら、後は」とマウロさんが言ったところで、「ドォォォン」と言う轟音が幾つも響き渡る。
ん。
音がしたの、南側だけじゃないぞ。
改めて感知の魔力を広げると、あ~。
後方で様子見をしていたオーガでも強そうな連中が、城壁の上に飛び乗って来たんだ。
東西南北の全てで。
そして、そのオーガ達が叩きつけた金棒が城壁を破壊している音が轟音になったか。
ちなみに、南側だと3匹か。
西が8匹に、東が14匹。
そして、北が24匹だけど大丈夫なのかね。
Bランク以上のオーガ達だけど。
まあ、強い人も多いし、何とかなるんだろうな。
なんて現実逃避をしていると、飛び出そうとしている気配が。
「アレン。あれはハイオーガだ。しかも、レベルアップしている。勝てるんだろな」と言ってアレンが飛び出さない様に牽制する。
「駄目だよ。Bランクだよ。レベルアップなんていていたら、5倍職以上じゃないと」とシャロンが必死に警告しているが。
「だけど、イサムなら勝てるんだろう」と何故かアレンは俺をにらみつけてくる。
冷静ではなさそうか。
そう思ったので「まあ、頭が悪くて感知力の低い奴ならね。力の相性があるから」と言っておく。
すると、多少冷静になったのか、情け無さそうな表情になりつつ、飛び出して行く様な気配ではなくなったか。
そんな会話をしている間に、ハイオーガによって振るわれた金棒に吹き飛ばされ大けがをしている人達が。
流石に、ここの指揮官のマウロさんは、自分に聖の祝福を掛け真面に戦ってもハイオーガとガチで戦っている。
それを冷静に見ながら、ポチに治療を命じながら、隠してある力がバレない討伐の仕方を考えていると「と、討伐に参加されないのですか?」とお付きの騎士のエッカルトさんが聞いてきた。
「いや。手柄を取り過ぎるのも、迷惑かなと」
「いえ。皆、生き残りたいので、お願いします」と言ってきたかと思うと「おい。冒険者のイサムさまが戦うぞ」と大声を上げた。
すると、マウロさん以外がハイオーガと距離を取り始める。
はあ。
やるしかないのね。
目立ちたくないのに。
主人公は、ハイオーガとの戦闘に入るようです。




