第320話 魔法的金属の昇華には
主人公は、マティアスさん達の安全を確保する為に、街道と砦付近の魔物の間引きを行いました。
しかし、それは魔物の揺り返しと言う現象を起こす事に繋がりかねない、迷惑な行為だったのに、やってしまっている。
その上、ここの領主は真面目な善人ぽい。
という事で、勇者職を疑われない範囲内で色々と提供する様です。
第68話に魔法的金属の昇華についての同じ説明がありますが、忘れているだろう、という事で。
覚えている方や、必要ない方は読み飛ばしてください。
そうなった理由については、後書きに付記しておきます。
はあ。
やっちまった。
マティアスさん達の安全を確保する為の『魔物の間引き』が、『魔物の揺り返し』なんて現象を起こす切っ掛けになるかもしれないなんて。
こりゃ~、持っている物資をある程度提供すると言う支援をしないとな。
勿論、勇者職を疑われない範囲内で、だけど。
という事で、ここの領主で指揮官のモーガンさんに提供を望まれたオリハルコンを提供する事にする。
まあ、提供するのはインゴットではなくオリハルコン製の武具だけどね。
オリハルコンのインゴットはグレード2以上しか持っていないので、グレード1の武具を提供する方が、勇者職を疑われないだろうから。
でも、量は提供したいから、俺が勇者職の時に使うショートソードと籠手以外は全部出して良いかな。
そう言う結論になったので、亜空間収納内のコンテナ内を荷物を整理してもらい、そのコンテナを格納箱から取り出した様にして小さめのコンテナを執務室にだす。
そして、そのコンテナ内のオリハルコン製の武具を取り出して、床に順次置いて行く。
すると、モーガンさんに命じられてダスティンさんが、ここに所属する鍛冶師を呼びに行ったようだ。
多分、その人が限定鑑定し、買取価格を決めるのだろう。
提供するのは、剣、大剣、ショートソード、斧、槌のグレード1が4つずつ。
盾は、小型、中型、大型、超大型のグレード1が2つずつだ。
「これは、結構な量になるな。オスカーどうなんだ?」とモーガンさんは連れてこられた鍛冶師に聞いている。
「はい。このオリハルコン製の武具は、ほぼ100%オリハルコンですし、グレード1でその多くが新品。
付与術とかも行われていませんし、金属として傷んでいないのですが、グレード2にする為の損耗があります。
なので、造り直す時の損耗はほぼ2~3割程度になるでしょう。
まあ、それでもほぼ100%オリハルコンですから価値は高いです」
「そうか。それは良かったな」
そう言っているモーガンさんとオスカーさんはアイコンタクトをしている。
高めの相場で買い取るのか、安く買い叩くのかを確認しているのかもしれない。
まあ、隠しているとはいえ商業スキルをノーマルランク持っているから、相場は分かるけどね。
しかし、損耗か。
正確には、魔法的金属の昇華による損耗なんだけど。
鉄とか銅といった前世でもあった金属。
それとは違う、魔力とスキルにより、大きくその性質を望む方向に変質させることが可能な魔法的金属。
前世にはなかった、この異世界特有のモノだからか、前世の金属とは少し違う。
それは、様々な事で違いが出てくるんだけど。
例えば鉄は、0.02%から2%程度の炭素が混ざる事により、より強度や硬度が得られ、鋼鉄とか鋼とか呼ばれる。
それは前世と同じで、Eランクとかの魔物が持っているし、人族でも一般的な金属で採掘や鍛冶スキルにより簡単に作ることが可能だ。
他にも、銅は真鍮とも呼ばれる黄銅や青銅があるが、黄銅は主に銅と亜鉛の合金。
青銅は、主に銅と錫、あるいはそれにリンを加えた合金になるそうだ。
だけど、鑑定すると、その金属名称は前世と同じに鋼鉄とか黄銅とか青銅と表示される。
詳細鑑定すると、その含有率とかも見えるんだけど。
これに対し、前世にはなかった魔法的金属の合金になると、理が変わるようだ。
例えば鉄ミスリルだと、主成分が鉄になり、2番目に多い成分がミスリルでその含有率が10%以上の場合に、そういう名称になる。
ミスリル鉄だと、それが逆になる。
なので、ミスリル30%、鉄20%、亜鉛10%、銅10%、ニッケル10%、錫10%、銀10%とかでも、ミスルリ鉄製という事になる。
そういう前世とは違う理がある上に、この世界にはグレードと言うのがある。
金属製品や革製品や木製品等をスキルで作ると、より良いものだとグレードが上がっていく。
具体的に言えば、革だとランクの高い魔物の皮を使い、ランクの高い裁縫スキルで加工するとグレードが上がると言った理になっている。
だけど、金属だと、更に面倒な仕組みがある。
正確には、魔法的金属には、かな。
例えば、魔法的金属でない鉄のインゴットにはグレードがない。
だけど、そのグレードが無い鉄を原材料に、鍛冶アルティメットLV10MAXで武具を丁寧に造れば、グレード4の武具が造れる。
そして、それはグレード0の武具より全然良いモノになる。
それに対し、魔法的金属になると、金属自体にグレード0から4までのグレードがある。
そして、それは別物と言っていい程の良質な物になり、当然その良質さは武具にも引き継がれる。
それが影響するのだろうか。
グレード0の魔法的金属をグレード1にすると10%、金属が消える。
金属としての質を昇華させるために必要なのだろう。
これを略称で言うと損耗と言う。
グレード0の金属をグレード2にすると30%
グレード0を3にするのに60%。
グレード0を4にすると92%も損耗があるんだよね。
しかも、これは魔法的金属からインゴットを造る場合だけでなく、魔法的金属製の物をスキルで作る時全てに影響する事なんだよね。
まあ、グレードを下げる分には損耗はないし、今の俺はグレード1以下しか造れないから、あんまり影響はないんだけど。
ここの生産者は、グレード2の金属製武具を造れるようだし、魔法的金属の価値はグレードによって変わるから、その辺もきっちり査定したという事なのだろう。
まあ、オリハルコンなんて神の金属とも呼ばれる金属だからグレードの違いで結構な金額の違いになりそうだもんな。
ちなみに、神硬貨はほぼ100%がグレード3のオリハルコン製である。
だから、あんな小さな硬貨が1000万GAZUと言う値段になるんだけどさ。
ちなみに、今回売るオリハルコン製のグレード1の武具は、グレード2のインゴットから造った。
でも、加工に使った鍛冶スキルがノーマルランクなので金属としてもグレード1になってしまっている。
これは、それなりに勿体ない事なんだけど、まあ、グレード1と2だと、それほどの違いはないから。
と言うか、鍛冶スキルのランクが足りなかったんだからしょうがないんだよね。
グレード1をグレード2にする時は、2割の減損が基本だから2割は損した感じはあるんだけど、オリハルコン製の武器が必要だと思ったのだからしょうがない。
また、金属疲労とかあったり、付与とかがあったりすると、この損耗の率もそれなりに変わったりするらしいが、まあいいか。
だから、隠し持っているオリハルコンのインゴットⅡとかⅢとかを売れば儲かる筈なんだけど、偽装後の俺程度の奴が大量に持っているモノじゃないからな。
そう思っていると、モーリスさんの鑑定と計算が終わったようだ。
神の金属とも言われるオリハルコン製の武器と盾。
幾らになるのでしょう。
魔法的金属の昇華について2度書く事になった理由:
『魔法的金属の昇華による損耗』の設定は、神硬貨(オリハルコン貨)とオリハルコン製の武具、大ミスリル貨とミスリル製の武具の値段について、整合性をとろうとして出来た設定です。
なので、ここで出来た設定をここに書いた後、前に戻って設定を書く必要のある部分に付記した為、似た内容が2か所にある事になっています。
ここを削除すれば良いだけ、とも思うのですが、忘れている人も居るだろうという事で。




