第145話 フクの行く先は
主人公は、特異種のキラーラクーンドッグを従魔にして仲間と合流したのですが。
従魔のポチは、新しい従魔のフクを歓迎していないようで、フクもポチを馬鹿にしている感じ。
なので、一度はっきりと厳しい事を言いました。
ポチとフクに厳しい事を言って都市に向かい始めると、直ぐに「厳しかったね」とミリアが言ってくる。
「何の事?」
「いや。ポチ君とフク君の事」とミリアは心配している感じなのかな。
「ああ。魔物使い学に、一度キッチリした方が良いって言われたからね」
「そうなんだ。それでフク君はやっぱり特異種なんでしょ」
「ああ」
「だから、従魔にしたんだ」
「2回拒否したんだけどね。で、魔物使い学に相談したんだけどさ。
まあ、あの辺に一人残されても狩られるだけって認識できる頭はあるみたいだし、力もそれなりに持っているみたいだし。
まあ、それが悩みの種なんだけど」
「えっ。そうなの?」とミリアはフクの力について興味を持ったようだ。
「ああ。こいつ偽装スキル持ちなんだ。しかも、俺よりランクもレベルも高い」
「そ、それって」と、想定外のスキルを聞いたミリアは驚いている。
「従魔登録の時に隠したいけど、隠してバレルと余計面倒な事になるよね」
「……。鑑定はされるんだっけ?」と、ミリアは何故か怖々聞いて来る。
「ステータスウィンドウの詳細表示を要求された時に、されていたかも」
「……。どうするの?」と、困り顔になったミリアは聞いて来る。
「隠さず提示し、譲れと言われたら譲るしかないだろうね」
「キューン」
「ぐゎっ」
「か、可哀そうじゃないのかな」と言ってくるのはシャロンの方。
「俺を頼ったのは、生き残る為って感じだったから、生き残れれば大丈夫なんじゃないかな」
「クゥーン」
「別れるのは嫌って感じに見えるけど」とシャロンは言ってくるが、どうなんだろう。
「気のせいでしょ」
「キューン」
「くゎぁぁ」
「別れるのは寂しいって感じに見えるけど」と、ミリアは言ってくるけど。
「だけど、取り扱いに注意が必要なスキルを持っている以上、しょうがないでしょ」
「そうだけど。まあ、割り切らないと駄目か」と言うミリアもシャロンも納得した感じになった。
だけど、従魔たちはそうではない様だ。
「キューン」
「ぐゎぁぁ」
何故か、フクと一緒に落ち込んだ感じのポチにも、ハッキリ言っておく。
「死別より良いと思わないとね」
そんな話をして、都市に入る門へとたどり着いた。
国境の都市、マリアド市。
ここまで来て、指名手配されていたらどうしようと思ったけど、都市の中に入れた。
まあ、登録していない従魔と言う事でフクの門の使用料は20万GAZUだったが。
冒険者ギルドで従魔登録すれば、帰ってくるんだけど。
俺達の門の使用料も1人2000GAZUと高め。
国境の都市と言う事で、高めなのかな。
美女二人と並び歩くアレンと、獣系魔物を2匹引き連れて歩く俺。
まあ、良いんだけど。
冒険者ギルドへ行き、受付で並んでいると、周りの奇異の目が気持ち悪い。
まあ、察知スキルのレベル上げにはなるんだけど。
10分ほど待ち、若い猫人族の受付嬢に従魔登録をしたいと言うと、案の定ちょっとしたトラブルだ。
受付嬢に従魔の登録をお願いし、フクのステータスウィンドウの詳細表示を頼まれて表示したんだけど、それを一通り記載したかと思うと、裏に駆け込んでいく。
そして、猪人族のオッサンが出てきて対応してくれることになったんだけど。
「ここの副ギルド長のバハールだ。そのキラーラクーンドッグ。偽装スキル持ちなんだって」
「ええ」
「しかも、まだ自分達は冒険者登録すらしていないって話しなんだろう」
「ええ。問題があるのなら、こちらで買い取ってもらうのでも良いんですけど」
「キューン」
「いや。それが出来る程のテイマーは、ここに居ないからな」
「王都とかに行けば居ますかね」
「……、そこまでしなくていいとは思うが。なんで、冒険者登録していないんだ?」
「生まれ故郷の村長が嫌な奴で。村から出て冒険者になるって決めたまでは良いんですが、その後の移動でも嫌な騎士に会ったりして、ほとほと嫌になったんですよね。
だから、もう少し冒険者の地位の高そうな地域を探してみようかなって」
交流術スキルが、適正な言い訳を教えてくれるのでその通りに言い訳をする。
「……、まあ、ここも国境の都市と言う事で騎士団の力は強くて、冒険者の地位は低いからな。でも、登録だけでもすればいいと思うが」
「……。街道に関する強制依頼とかに捕まって死ぬ事になりそう、って言っても、分からないですか?」
「あ~。まあな。ひょっとして、街道を移動中に強めの魔物に出会ったりしたのか」
そう小声で聞いて来る受付のオッサン。
「ええ。冒険者がファイアージャイアントと戦っているのを横目に都市に逃げ込んだりしましたよ」
「……。それは迂闊に口にするなよ」
「ええ。発表する程ではない、と言う見解らしいですからね」
「その通りだ。……。よし。分かった。規定通り従魔登録を認めるが、悪用はするなよ」
「俺としては買い取ってくれる方が楽なんですが」
「キューン」
「ぐゎぁぁ」
「楽って。従魔たちが泣きそうだが」
「いえ。貴方が責任をもって幸せにしてくれれば」とフクに関する責任を投げだしたい俺は、そう言ったんだけど。
「従魔にしたのは、君だろう」と副ギルド長は取り合ってくれない。
「とりあえず、安全地帯に連れてきてあげた事で、責任は果たしたって感じなんですけどね」
「そんな危ない処に居たのか」
「ええ。ファングウルフとかに襲われて、仲間達は壊滅したみたいなので」と本当はホーンライオンだけど、それだと俺がCランクの魔物を殲滅した事になるのでEランクの魔物と嘘を言っておく。
「それで、従魔になりたいって言って来たと言う事か。だが、テイマー達の従魔の取り扱いは酷いらしいぞ」と副ギルド長が教えてくれる。
「そうなんですか。FランクやEランクの従魔では、3倍職のテイマーについて行けていないってだけでは?」
「まあ、それもあるんだろうけど、普通は弱い従魔は使い捨てらしいからな」
「こいつは、特異種ですから大丈夫ですよ」
「そうか。確かに。って俺を叩くな」と何時の間にかカウンターの上に来たポチとフクが羽と手で受付オッサンの手を、もっと俺達を応援しろって感じでパチパチ叩いている。
ポチは関係ない話なんだけどな。
ああ。
フクに感情移入しているんだ。
そう魔物使い学の情報提供に納得しつつ「こんな反抗的な従魔ですしね」と言って置く。
「キューン」
「くぅゎゎぁぁ」
「いや。お前が厳しい事を言っているからって気もするが。と言う事で、従魔の登録だな」
そう言って奥へ行き、ポチも付けている結構大きめのメダルの様なモノが付いた首輪を持ってくる受付オッサン。
いや。副ギルド長だったか。
それをフクに付けてやって一段落か。
困惑気味に黙って話を聞いていたアレン達と一緒に冒険者ギルドを出て、宿を取りにこの都市のメイン通りに向かった。
主人公は、フクを冒険者ギルドに買い取ってもらいたかったようですが。




