第135話 逃走と魔法の威力
主人公は、皆を逃がし、強い魔物に分類されるファイアージャイアントと一人で対峙していますが。
今後の事も考え、逃げる事にした様で。
偽装後のスキルとステータスでは、Bランクのファイアージャイアントに勝つのは難しそう。
まあ、差し違える覚悟で挑んだり、後先考えずにMP回復薬とかエリクサーとかを使ったりすれば、倒せるらしいんだけど。
でもね。
『イサムは強い』なんてアレンに思われると、変に暴走しそうだし。
現に、引き受けては駄目な護衛依頼を受けている訳だし。
倒せなかった、と言う事で逃げ出した事にすれば、アレンももっと危機感を持ってくれるかも。
よし。
今回は逃げよう。
そう考えつつ、巨大な岩の影で、ファイアージャイアントの炎のブレス攻撃を避けているんだけど。
本当に炎の息を吐いている訳では無く、スキルにより炎のブレスを発生させているから、このまま待っていてもその攻撃は途切れそうにない。
ならば、と石弾を最大限強化と意識し発生させる。
巨大になった石弾を奴に撃ち込み、命中する直前に爆発させる。
残念ながら爆発と言う指定が土魔法の石弾にはあわなかった様で、爆発では無く崩壊だったけど。
でも、砂や小石の粉塵が奴に襲い掛かる。
それが手でカバーしている目にも入ったようで、また目が見えなくなり四方八方にブレスを吐き始める。
それがフェイクでない事を探索スキルで感知しながら、隠形スキルで世界に紛れて岩陰から飛び出し皆の方向へ走る。
魔力壁を解除してもアレン達が大丈夫そうなのも確認し、時々俺の居る方向にも撃ち込まれてくる炎のブレスを避けたり、魔力壁で防いだりしながら、ブレスが直撃しない距離に達する事が出来た。
探索スキルでファイアージャイアントの動向を確認しながら、アレン達と合流。
「倒したのか?」とアレンは聞いて来るが。
「目潰し喰らわせて、逃げて来た」
そう事実を告げると「そっか。倒せなかったんだ」とアレンは残念そうだけど、釘を刺しておこう。
「MPがね。最初の魔力壁で大分消費しちゃったから攻撃にMPを廻せなかった。中級MP回復薬や中級エリクサーを数本使う覚悟をして攻撃すれば致命傷まで持って行けるかもしれない、とは思ったんだけど、それには希望的観測が入っていると判断して逃げて来た。
結構なスピードで、破壊したはずの目が再生していたし」
「攻撃力不足か」とアレンは俺の言う事を理解してくれたようだ。
「ああ。ユニークランクで覚える槍系魔法を出来れば複数撃ち込めるようにならないと駄目かな。後は、魔法の威力を高めるスキルか何かが必要か」
「魔法の攻撃力を上げるスキルって何なのかな?」と同じく魔法の威力不足を感じたであろうシャロンが、真剣な感じで聞いて来る。
「魔法の威力に直結する知力ステータスを向上させる知力向上や覚醒スキル。
他にも、イメージや設定によって魔法の威力を上げるのに潤沢にMPを使えるようになる魔力節減とか魔力循環とか魔力回復とかも、間接的だけど魔法の威力に影響させられるかな。
後はスキルの力を強化する明鏡止水スキルなんて力もあったか。
そう言えば、手間が増えるけど杖技は杖を介する事で魔法の威力を上げられるし、ミリアが取得出来るかもしれない聖魔法がユニークになると使える聖の祝福とかでもステータスが上がる事による影響があるけど、他にも何かあったかも」
「そっか。そうだね。色んな方法あるよね。私も杖技を鍛え始めた方が良いかな?」とシャロンはほっとした感じの後、質問してくる。
彼女が撃ち込んだ水弾は、ほぼダメージを与えていない感じだったのを気にしていたのかもしれない。
「ああ。ただ、杖技がユニークランクになって10%、アルティメットランクになって20%の威力向上とかだから、微妙ではあるんだよね。杖を介すると言うイメージをして魔法を発生させる必要があるらしいから、余裕がある時しか使えないって話もあるし」
「そっか」
「まあ、自衛の武器として杖を持っていて、状況によって使い分ける、と言うのが正解なのかな。
ああ。確か装備品なんかでも知力を向上させたり、魔法の威力をあげたりするのがあったと思うし、装備も整えないとね」
そう俺がシャロンに助言すると「……、イサムの言う通り、火魔法だけでは駄目だ」と、アレンが言い始めた。
「俺の言う通りじゃなくて、教科書通りなんだけどね」
そう言って、落ち込んでいるアレンにとどめを刺し、セラフィーナさん達と先を急ぐことにした。
主人公の発言は、アレンに刺さっているのでしょうか。
訂正点:
未だ、石弾は同時発動可能となっていないので、12発を巨大な一発に変更。




