第132話 薬学スキルの状況
主人公は、アレンが勝手に受けた市町村間移動の護衛を行っています。
受けた以上、ちゃんと目的地まで送り届けたいと思っているのですが。
微妙に切る処が無かったので、本文が長くなっています
朝、目覚めるとお決まりのMPの残量チェック。
まあ、偽装前及び偽装後の両方とも半分以上はあるから良いのかな。
と思いつつも中級魔回薬を飲んで、可能な限りMPを回復させておくことにする。
子供を連れての街道移動は、やっぱり油断できないし。
と言うか、やっぱり公表する事になっている『魔素の混乱期』程では無くても、魔素の乱れはあって、街道沿いにも魔物が大量に湧いていると言うのもあるんだろうな。
アレン達が誘いに来たのでセラフィーナさん達と共に朝食を食べ、早めに出立だ。
本当なら、瞬時にMPを回復させてくれるMP回復薬も補充したかったんだけど、ここでは魔法薬を売っている店がなかった。
早いとこ、魔法薬学スキルもノーマルのLV6以上にして、下級MP回復薬を造れる様になりたいところだけど。
今は、薬学スキルをユニークのLV6にして、時間と共にそれなりのMPが回復する魔生薬の中級魔回薬を大量に造れる様になるのを優先かな。
勿論、護衛任務を無事に終える事が最優先だけど。
今持っている中級魔回薬を使ってMPに余剰をつくり、魔生薬の下級魔回薬や中級傷治療薬とか造っていれば、直ぐに中級毒治療薬とかが造れる様になる。
後は、必要だと思う物を同じく中級魔回薬に頼りながら造れば、薬学スキルがユニークランクLV6になり中級の魔回薬が造れる様になる。
そうなれば……。
まあ、魔石とかCランクが必要になるし、製造に必要なMPも増えるけど、そうなれば今度は別のスキルのレベルアップにMPが使えるようになるな。
例えば、魔法薬学なんかも、空歩とか瞬動とかも。
だけど、今日も護衛だ。
国外脱出の件が無ければ、数日この村に留まってスキル上げをしたいくらいなんだけど。
そう思っていると、意気揚々と村から出る門へと向かっているアレンとポチ。
その明るい様子を見ると「はあ」と溜息が出る。
今はシャロンが荷車を引いているので荷車の横に居たミリアが「大丈夫なの?」と聞いて来る。
「ん。何とも言えない。余裕があれば、数日この村に留まりたいくらいなんだけど」
そう俺の心情を言うと「ん。なんで?」とミリアが確認してくる。
「薬学スキルがもう直ぐユニークランクだ。ユニークになってからスキル上げをしてみないと断言はできないけど、そう遠くない内に中級の魔回薬が造れる様になる。
そうなれば、色々なスキルのレベル上げが出来る。それを一通りしてから移動したいって感じ」
「そうなんだ。遂に」とミリアは良かったね、と言う感じ。
本当は、薬学スキルは既にユニークランクなのに、そうまた嘘をついてしまう。
神が与えてくれたと思われる才能により、全スキルについて3~4倍もの経験値が得られている事を隠す為には、薬学について1.2倍とか2倍程度の才能と言う事にしておくべき。
だから、本当の薬学スキルのランク・レベルより低くアレン達に開示しなければならないので、まあ、しょうがないだろう。
他に、才能により経験値を3~4倍取得出来るスキルがある事にしたくなるだろうから。
と言うか、既に隠形とか俊敏向上とか魔力魔法とか探索とか感覚強化とかが、明らかに成長が早いスキルになっているからな。
なので、早すぎる成長は、出来るだけ隠した方が良いだろう。
そんな事を考えていると「そっか。この調子だと、アルティメットランクまで行けそうだね。そうすればスキルの承継をしてもらえる。
冒険者引退した後まで考えると、アレンもシャロンも薬学を得ていた方が良いからね」とミリアが少し考え込んだ後言って来た。
「でも、二人とも職業の弊害があるからな。転職しないと鍛えられないのがね」
そう俺が問題点を指摘しても「でも、生産スキルを得ておけば、冒険者も引退しやすいし」とミリアは嬉しそうだ。
「薬学スキルはミリアが持っているから、そんなに喜ぶ事でも無いと思うけど」
そう言うとミリアはしっかり者の様で「薬草の保存処理だけで、どれだけ手間と時間がかかったか。それを考えると、3人で薬屋をやるのが間違いがないよ」と未来予想図らしき事まで言ってくる。
だけど、手間と時間がかかると言う点が気になって「ベースランクだからじゃないの?」とベースランクの消費MPが原因じゃないのか聞いてみる。
「それもあるけどね。イサムはどうなの?」との事。
格納箱スキルとか亜空間魔法スキルとかで、保存の心配がないから、俺は手間が少ないのかもな。
そう思いつつも「確かに、下級魔回薬でも一日数百錠は作れないかな。魔回薬でも使わない限り」と言って置く。
「そうでしょ。魔力草をイサムが取って来てくれる今は良いけど、私達3人で商売として魔生薬を売るなら、そんな事出来ないし」と、ミリアはしっかり薬屋をやる事について考えている様だ。
そんなミリアに「俺の場合だと、警戒に使っているMPを生産にまわせば、なんとかなるかな、とは思うけど」と不用意に言ってしまう。
言ってから、勇者職のMPがあるから大量に薬が造れるって感覚を持ってしまっている、と気が付いてしまった。
10倍職の勇者LV24では最大MPは6800、偽装後の3倍職の忍びLV21では最大MPは2000なのに。
下級の魔生薬でも、魔回薬と万能薬の製造にはMPが50も必要と言う事とあわせて考えたら違和感持たれちゃう。
ああ。
偽装スキルさんも、一度に3錠造れる魔生薬について、この程度の発言程度なら大丈夫だろうけど、注意はすべきだって。
ぎりセーフか、なんて思っているとミリアは「ん。街中でも警戒しているの?」と俺の失敗に気が付かずに聞いて来る。
具体的数値を言うと失敗しそうだな。
そう思いつつ、聞かれた事に答え、更に失敗を誤魔化す事にする。
「向けられる良くない気配を感知する為に察知スキルはずっとONのままだよ。
探索も場所によっては範囲を狭め消費MPを減らして行っているし。
そう言えば頭の回転や物覚えが良くなる知力向上スキルも遠からずベースランクからノーマルランクになるくらいMPを使っているし、格納箱スキルもベースランクだから地味にMPを使うし。
そんなスキルの消費MPを減らしても一日数十錠から数百錠つくるのが限界なんだろうな」
「下級の魔生薬でも一日数百錠造れれば良いんだろうけど、それは3倍職のMPがあってこそでしょ。私達だとね」と、ミリアは俺が誤魔化す為に言うつもりであった事を指摘して来た。
「まあね。でも、ミリアの2倍職でもレベルを上げれば、何とかなる気もするけど」と、俺のMP量に違和感を持たれなかった事をホッとしていると。
「そう言えば、昨日のジャイアントとかの経験値でレベルが3上がって15になっていたよ」とミリアは少し嫌そうに言ってくる。
ジャイアントが怖かったのかもしれない。
そう思いつつも「16には届かなかったか」と言っておく。
するとミリアは「と言うか、イサムは幾つなのよ」と強めの口調で聞いて来る。
何か不満があるのかもな。
そう思いつつ「ん。LV21」と偽装スキルが計算してくれている偽装後の忍び職のレベルを教える。
「……。なんなの、その数値。もう一人前の数値じゃん」とミリアは驚いているのか呆れているのか。
なので「ちなみに、カレンさん達はLV18だから」と情報を入れてみる。
前は、アレン達よりレベルが高いとだけ言って具体的数値を言わなかった事もあり「……。それ程大変だったんだ」とミリアは驚いている。
なので「そういう事」と、子供達を連れた市町村間の移動は大変だと改めて言い含めておく。
「もっと、ちゃんと教えてよ」
そうミリアが怒ってくるので、小声で「死にかけたとか言うと、俺が一人で行動する事にアレンが愚図るかもしれないだろう」と俺の事情を教えておく。
すると、ありそうな事だと思ったのかミリアが複雑そうに黙り込んでしまった処で、村から外に出られる門が見えて来た。
主人公は、アレンのかじ取りをするであろうミリアに、色々と教えていた様です。
補足
投稿予定でないのを投稿してしまい、投稿後に何度も推敲を行っています。
変更点
スキルの承継をユニークランクからではなくアルティメットランクからに変更した分、修正。
参考資料。
<魔生薬と魔法薬>
薬学スキルで造れるのが魔生薬。基本1時間かけて治療等を行う薬。薬学スキルでは、傷治療薬、毒治療薬、麻痺治療薬、魔回薬、万能薬が造れる。勿論、他にも解熱剤、風邪薬、滋養強壮薬といった薬も、傷薬草、毒草、解毒草等を調合する事により作成できる。基本的な魔生薬には、下級、中級、上級、特級のグレードがある。
魔法薬学スキルで造れるのが魔法薬。基本、一瞬で回復させる薬。HP回復薬、毒回復薬、MP回復薬、エリクサーが造れる。なお、毒回復薬と同程度の魔法薬として麻痺回復薬や混乱回復薬等もある。魔法薬には、下級、中級、上級、特級のグレードがある。




