第9話 幸運スキルを選ぶ理由と過去の怒り
主人公は、神らしき存在から強いスキルを授けると言われて、偽装スキル、空間魔法スキル、幸運スキルを選びました。
すると、何故か神らしき存在は幸運スキルを選んだのが気に入らない様子。
なので、改めて幸運スキルを選ぶ理由を思い出すようです。
神らしき存在から3つアルティメットランクのスキルを授かれる。
そう言われて選んだスキルは、偽装スキル、空間魔法スキル、幸運スキル。
神らしき存在は、何故か幸運スキルが気にいらないようだ。
なので、幸運スキルを求める理由を改めて思い出してみる。
その理由は、俺の両親は多分運が悪くて、俺の元に帰ってこなかったからか。
俺の住むアイリン村は、王都から数百キロ離れている。
幸い、前世の車ほどありふれた物では無いが、人や荷物が乗る馬車を牽引する魔力で動くゴーレム(巨大人形)が存在するし、人や荷物を直接乗せて移動できるゴーレム馬車なんて物まであるから、それなりのスピードで人も荷物も移動できる。
街道も、時々整備は必要だけど、土魔法によりアスファルトより滑らかで滑り難い道を造ってあるし。
だから、年に一回くらい、王都に買い物に行く乗合馬車みたいなのを村が運営していたんだ。
親父やおふくろは、それの護衛として同行していた。
まあ、村の自警団にも所属していたし、冒険者としてもよくある仕事だしね。
親父は、斥候としてそれなりのレベルだったのだろう。
運も良かったのかもしれない。
12年間、魔物を回避し犠牲どころかケガ人すら出さずに王都との往復の護衛任務をやり遂げていたんだから。
でも、それが良くなかったのかもしれない。
夫婦のどちらかが買い物に行くのではなく、二人とも王都まで買い物に行くと言う事が当たり前になっていたそうだ。
更に言えば、子供がある程度大きくなっていた家庭なんかは、より夫婦で出かける傾向が強かったとの事。
しかし、2年半前の王都への買い物旅行の時に、街道沿いにBランクのハイオーガとCランクのオーガの群れが湧いたそうだ。
しかも、親父達が避けられないタイミングで親父達の馬車の近くにでも湧いたのだろう。
親父達が最初の犠牲者となり、その後も百数十人の旅人・旅の商人・冒険者達が犠牲となったそうだ。
そして、親父とおふくろを含め、村から旅行に行った者は護衛も乗客も併せて44人、誰一人として戻ってこなかった。
結果、孤児となった者が、一気に28人も出る事に。
孤児とはならなかったが、家族を失った者は、百人以上居たのかな。
そして、その家族を失った怒りは、護衛であり、安全を確認する立場であり、力を持つ斥候職である親父に向けられた。
でも、親父もおふくろも死んでいた為、怒りは俺にも向けられたんだよな。
今なら、十分な護衛を用意していなかった村に責任がある。
街道をキッチリ警備及び監視していなかった王国に責任がある。
自己責任で、王都に行ったんだろうが。
そう反論も出来るが。
まだ、13歳で前世の記憶も無く、両親を失い混乱していた俺は、俺を糾弾する連中に何も言い返せず、ただ耐えていただけだった。
あの時の、絶望と苦しみと悲しみは、今でも忘れられない。
悲しみの底に居た俺を糾弾してきた連中は、絶対に……。
そんな風に思っている連中と、仲良く同じ村で生活なんてしたくないし、出来ない。
だから、成人になったら村から出る。
そう決めていた。
ちなみに、アレンもミリアもシャロンも、あの事件で孤児となった。
でも、あの場で俺を責めてこなかった数少ない事件の犠牲者の家族。
更に言えば、アレンはあの糾弾の場所から俺を連れ出してくれた唯一人の友人だ。
しかも、その後村で唯一の雑貨屋に買い物に行ったら2倍の値段を払えと言われて、頭に来た俺が隣町まで買い物に行こうとしていた処を見つけ、事情を問い質して、俺にかわって塩と言った生活必需品を買ってくれている恩人だ。
そのアレンに『本当の事は言えない』と言うのは、申し訳ないが……。
そんな事を思い出している俺を興味深そうに観察している感じの神らしき存在。
内心を呼んでいるのだろう。
それでも、一応言葉でも説明しておく。
「俺には、両親の死の理由が運が悪かったかどうかは分かりませんけど、生き残る為には必要かなと。
それに、空間魔法は、非常に取得しずらいスキル。幸運スキルなんて『職業の影響が無い』タイプのスキルで取得できるかどうか不明って言われているんですよ。
その上、どちらも使用すればスキルを取得出来るスキル追加の宝玉も殆ど出ないタイプのスキルって教わっていますから、ここで選択しておかないと一生お目に掛かれないかも、と言うのもあります」
「なるほどね」
「本当なら、アルティメットにまでランクが上がっている攻撃系のスキルは欲しいですよ。他にも、生活魔法とか、鑑定スキルとか、強奪スキルとか、多重存在スキルとか、学習スキルとか、取得経験値増加スキルとか、飛翔スキルとか、瞬動スキルとか、魔法薬学スキルとか、魔機工学スキルとか、竜使いスキルとか、聖魔法スキルとか」
そう欲しいスキルをあげていると面倒だと思ったのか俺の発言を遮る様にしながら「ああ。うん。分かったよ。でも、支配スキルとか魅了スキルとか精神魔法スキルを選ぶかと思ったんだけど」
何故か不思議そうに言ってきた。
主人公は、何故精神魔法とか魅了スキル等を選ばなかったのでしょう。




