表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

4.原因らしきもの

 そしてとうとう四人目が現れたのだ。


「どうしてこんな安易な方法でカルリトス様と一緒になれると思ったのでしょう?」


「それなんだが、例の本の三冊目。『あなたが愛を手に入れる方法を教えます』あれを手本にしたらしい」


 私は読まなかったのでざっくり内容を教えてもらった。


 一.髪をプラチナピンクにする。

 二.悪役令嬢に虐げられる(健気に振る舞う)

 三.王子様に助けられ見初められる(その時瞳は必ず潤ませる)


『言葉を交わさなくても目が合えば、もう彼はあなたの虜よ』と書かれていたそうな。無理無理無理。


 なんというか……とにかく迷惑な作者である。それよりも鵜呑みにした女子生徒たちって本気で信じていたのかしら。そういえば全員髪色はプラチナピンクだった。

 この国の人たちの髪の色は濃い茶色か黒だ。殿下は美しい漆黒で私はダークブラウンだ。彼女たちはみんなこのために脱色して染めたらしい。だから髪が傷んでギシギシになっていた。


 彼女たちは協力者をお金で雇い私が通るタイミングを見計らったらしい。無駄遣いだと思う。その情熱とお金をもっと別のところに向ければよかったのに。


 どの令嬢もカルリトス様と直接会話らしい会話をしていなかったそうだ。ただ、自分とカルリトス様は身分差ゆえに言葉を交わせない。でも目が合った瞬間(思い込みで目は合っていないそうだ)彼は自分を思っていると確信していたらしい。そして秘めた恋に陶酔して自作自演でことを起こした。

 例の三冊目の本は気持ちを誘導するような内容だった。心にあった願望と相まって妄想を現実だと思い込んだと思われる。この本、危険では…………。(ほとんど呪いの本だわ)

 

 四人もの退学者が出たことを重く見て、学園長はこの出来事を公にして注意喚起をした。また、王太子殿下の婚約者でありクアドラ公爵家の娘への誹謗中傷をすれば責任を問うと布告した。


 そのおかげで悪役令嬢の噂はあっという間に消えた。なにより学園内でもカルリトス様が私を構い倒すので、その光景を見て目が覚めたようだ。学園内にまだ数人いたプラチナピンクの髪色に染めていた女子生徒が全員黒くなっていた。みなさんの髪はだいぶ傷んでいるようなのでお手入れを頑張ってもらいたいものだ。私は人知れずそっと胸を撫で下ろした。


 この流行もやっと下火になりそうだ。やれやれである。イザベルにとって今回のことは、悪役令嬢と呼ばれ多少は嫌な気持ちになったが、それまで義務的な関係(だと思い込んでいた)だった婚約者との関係を深めることが出来た。


『怪我の功名』


 卒業して結婚式を挙げるまで、あともう少し。心配事もなくなり清々しくその日を迎えられそうだ。私は悪役令嬢にはならなかった。ゆえに私の未来は明るいのである。









 ただ、悩みというほどのことではないが、悩んでいることがある。それはカルリトス様が日々私を甘やかすのでちょっとだけ、本当にちょっとだけ困っている。


 さりげなくスキンシップが増えていることには気付いたが、優しい瞳で私をうっとりと見つめながら頬に触れたりされるとドキドキして心臓が持たない。


 そう伝えているが、笑顔で躱わされてしまう。私はこれ以上過激になる前に反撃しようと決心した。そうだ! 彼に同じことをすれば、きっとこの恥ずかしい気持ちを理解するはず!


 その結果は――――。





 更なる糖分を呼び起こしただけで…………惨敗となった……………。

 そして周囲の私たちを見る目が増々生温くなっていく――――。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ