なきこえ
けん、と鋭いナき声がする
遠い遠い天の水面に
一滴の雫が零れ落ちて
波紋と共に音が広がる
空気が震える
水面を飛び立つ幾重の白と黒の翼は
同じ色した立ち上る雲の中に消えて
けん、と鋭いナき声が残る
けん、と悲しいナき声がする
赤く染まる湖畔に一羽
頚を伸ばし空を仰ぎ
頭頂に見える赤は
涙を流す夕陽のよう
ひにさらされて真っ赤に染まる白と黒の翼は
同じ色した流れぬみずの中に伏せて
けん、と悲しいナき声がする
けん、と誰かを呼ぶ声がする
遠い遠い天の水面に
届けと響き揺らめく焔
幾重に折り込んだ願いの翼を捧げ
かみにいのる
風に揺れる無数の色の翼は
未来の色した時の流れに消えて
こん、と応える鳴き声がした
祈り
願う
紙に託して
神に託して